◆第107回全国高校野球選手権大会第13日 ▽準々決勝 県岐阜商8×―7横浜=延長11回タイブレーク=(19日・甲子園)
涙が止めどなくあふれた。夏の終わりを告げるサイレンが、聖地に鳴り響いた。
「1年間楽しかった。幸せな時間を過ごせたなって。選手たちに連れてきてもらった甲子園。本当に楽しめた。でも悔しいですね…」。そう語る指揮官の瞳も潤んでいた。命がけで魂を燃やした証拠だった。
序盤から空気が違った。「甲子園中が3対7ぐらいの感じを受けまして…」。センバツ王者に唯一の公立校が挑む構図。
執念だった。9回1死二、三塁と10回1死一、三塁のピンチで内野5人シフトを敷いた。昨秋の明治神宮大会以来の秘策。左翼手の阿部駿大を一、二塁間に守らせた。9回は前進守備の一塁手の小野舜友がスリーバントスクイズをグラブトスで阻みシフトがはまった。村田監督は「絶体絶命で使うために練習してきた。甲子園の舞台で普通にできたのは、練習の賜物(たまもの)。
奥村頼は進路に「プロ一本」を表明。「さらなるレベルアップを求めてやってきたい」と涙をふいた。追われる重圧と闘った夏。3年生の悔しさは次世代に継承され、名門に新たなドラマが始まる。(加藤 弘士)