◆第107回全国高校野球選手権大会第13日 ▽準々決勝 県岐阜商8×―7横浜=延長11回タイブレーク=(19日・甲子園)
戦前に甲子園を春夏4度制した古豪・県岐阜商が4強入りを果たした。岐阜大会6戦全て2ケタ安打、チーム打率3割9分6厘の強力打線がセンバツ王者にひるまず16安打8得点と猛打を振るった。
17年夏、岐阜大会3回戦コールド負けの“どん底”を味わい、名門復活を懸け18年4月からOBの鍛治舎巧監督が就任。高橋純平を擁した15年春以来甲子園から遠ざかっていた母校を、春夏4度聖地に導いて再建した。スイング力強化のため140キロのマシンを18.44メートルではなく15~16メートルに設置しての打撃練習などを導入。今夏、各打者が見せている追い込まれてからの「ノーステップ打法」も鍛治舎氏が就任から根付かせたものだ。
その潜在能力を開花させたのが昨秋からバトンを継承した藤井潤作監督。PL学園、帝京などを撃破して45年ぶりの甲子園4強を果たした前回09年時は同校の副部長。あの夏を知る指揮官がベンチにいることが選手の「落ち着き」につながる。今大会中も教え子と一緒に銭湯へ行くなど「一番元気。野球から離れるといいおじさん」と言われるほど。藤井監督は「甲子園に行ったらお祭りをしようと言っていた。何があってもベンチの中では想定内、想定内!」と心に響く声かけで士気を高め、大舞台で力を発揮させた。
昨秋、今春と県8強止まりだった現チーム。夏の大会前、県内では「優勝候補の3、4番手」との評価もあった。監督の意向で週3回のウェートトレを習慣化。全国250超の野球部が取り組むスポーツ用品メーカーZETT社の身体能力測定では2位になった。主役となるタレントこそ不在だが、毎試合「日替わりヒーロー」が生まれる組織に変革。継続して培ってきた打力、選手を信じる柔軟なタクトが春の王者撃破につながった。