◆JERA セ・リーグ ヤクルト2―15巨人(19日・神宮)

 巨人・丸佳浩外野手(36)がヤクルト戦で自身初のサイクル安打を達成した。球団では08年9月3日の小笠原道大以来の快挙で、プロ野球史上72人目(77度目)。

初回に右越え2ラン、3回に右前安打、5回に中越え二塁打を放ち、7回に右中間三塁打をマークした。中山礼都内野手(23)の自身初の2打席連発など打線が爆発し、今季最多の20安打15得点。大勝で勝率を5割に戻した。大量援護をもらった先発・戸郷は8回2失点で4勝目を挙げた。

 二塁ベースを蹴った丸が、歯を食いしばって激走した。「頼むから足よ、もってくれって」。7回1死三塁。痛烈なライナーで右中間を破った。偉業への期待感が込められた大歓声に押された背番号8は加速すると三塁へ気迫のヘッドスライディング。プロ18年目で自身初のサイクル安打の達成だ。「この年で達成できるとは思ってなかった。自分自身びっくりしている」。

球団では08年9月3日広島戦(京セラD)の小笠原以来、17年ぶり6人目、神宮では92年ハウエル(ヤクルト)以来33年ぶり6度目の快挙をかみしめた。

 完璧なアーチから、20安打15得点の猛攻へといざなった。阿部監督が「状態がいいし、ランナーがたまったところでかえしてほしい」と期待を込めて、今季初めて3番で起用。まずは初回1死二塁の場面だった。「めっちゃでかいスズメバチがきて」と、一度打席を外したが、アクシデントに負けることなく直後に右翼席へ今季初の2戦連発となる先制の5号2ラン。3回先頭で右前に運ぶと、5回先頭では中越え二塁打を放った。最後は右中間への適時三塁打で達成。「一度は取ってみたい記録だった。一生懸命やってきて良かったです」。今季チーム最多タイの1試合4発と爆発した打線をけん引したベテランの笑顔が輝いた。

 細部へのこだわりが快挙を生む。酷暑の中で行われる試合前練習。

一人異彩を放っている。他の選手が黒のTシャツとアンダーシャツを着る中、丸はただ一人白のアンダーシャツと灰色のTシャツを着用している。黒に比べて、白色のほうが表面温度の上昇を抑えられるからだ。「暑いからね。直射日光から守るために考えながら着てますよ」。コンディションを整えるために色にまで気を配る。

 今季からは“飲み方”も変えている。昨年まではスポーツドリンクだけを飲んでいたが、試合後に検査すると常に脱水状態だった。そこで今季からはスポーツドリンクと水を交互に飲むスタイルに変更。「体の塩分濃度が濃くなりすぎても脱水になる。スポーツドリンクだけだと濃くなるから、水と交互に摂取したほうがいいということで実践している」。柔軟に思考をアップデートし、夏場でも快音を響かせ続ける。

 球場には誰よりも早く入り、試合後はケアやトレーニングを念入りに行うため球場を後にするのは一番遅い。休日返上練習もいとわない。そんな背番号8は勝利を何より喜んだ。「記録もうれしかったですし、何よりもそれが勝ちにつながったことが一番良かったです」。頼れるベテランの不断の努力が結実した快挙だった。(宮内 孝太)

◆清水隆行Point 丸は初回に内角の真っすぐを本塁打したようにストレートへの対応が今は、すごくいい。6回の四球を含めて5打席で見逃しのストライクは2球あったが、空振りもファウルも1球もなく、4スイングで4本のヒットを打っている。つまり打ち損じはゼロ。打てる球を振りにいき、しっかりと捉えていることの証明だ。

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