◆JERA セ・リーグ 巨人4―1DeNA(23日・東京ドーム)

 3か月ぶりに笑えた。お立ち台後のベンチ裏。

巨人・井上温大投手(24)は「和真さん、ありがとうございます!」と白星をアシストしてくれた4番とグータッチした。5回1/3を3安打0封で5月21日の阪神戦(甲子園)以来となる4勝目。「長かったです。勝つのはすごい難しいなって」と実感を込めた。

 悪夢を糧にした。長嶋茂雄さんの追悼試合だった16日の阪神戦で3回KO。不振が原因で、投げながら常にネガティブな想定ばかりするようになっていた。降板後、阿部監督に言われた。「村上を見とけ」。相手エースのハイテンポな投球に復調のヒントが隠されていた。抑えたいがためにマウンドで考える時間が増えていた。テンポを速めることで雑念を消した。

「マネしようと。それがすごいよかった」。これで4勝7敗。指揮官からは「まだ借金があるのでいい投手とは言えない。とにかくまず自分の借金を返さないといけないと思って頑張ってほしい」と尻をたたかれた。

 高校野球シーズンに初心に返った。夏の大会前、母校・前橋商の後輩へ「熱中症にならないように」と深部体温を効率良く下げるドリンクを差し入れ。ふと思った。「僕と関わっていない代。差し入れが来ても、一線で活躍してないと『お~』とならないかなって。ローテに入るだけじゃなくてエースみたいにならないと覚えてもらえない」。頑張ろうと気合がみなぎった。

 ある球児にも元気をもらった。生まれつき左手の指がないハンデを乗り越えて甲子園4強入りに貢献した県岐阜商の横山温大(はると)外野手。同名であることを母・友理子さんから聞き、気になるようになった。「カッコいいな。本当に野球が好きだから、ハンデを気にしないでやれてるんだろうな」。9試合連続で勝てなかったが「最後は向かっていく気持ちなんだ」と気づけた。

 昨年7月からDeNA戦は自身4連勝。「今までよりもポジティブに次の登板を迎えられる」と表情も晴れた。残り30試合。ラストスパートの準備を整えた。(堀内 啓太)

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