◆第107回全国高校野球選手権大会最終日 ▽決勝 沖縄尚学3―1日大三(23日・甲子園)

 14年ぶり3度目の頂点には届かず、準優勝の日大三(西東京)は今大会2発と好調の2年生4番・田中諒内野手が4打数無安打に封じられ、試合後は涙。悔しさをバネにさらなる進化を誓い、聖地を後にした。

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  あと一歩、頂点にたどりつかなかった。無数の指笛が鳴り響き、聖地が祝祭の空間と化す中、日大三・田中諒はあふれる涙を何度もぬぐった。同じ2年生の沖縄尚学・新垣有に4打数無安打に封じられ、16歳は敗戦の責任を背負った。「同じ学年なのか、というくらいの投手。キレも良くて気持ちも強くて、すごいピッチャーでした」

 今大会2発。昨春の新基準バット導入後、唯一の甲子園1大会複数本塁打をマークした強打者だが、本領を発揮できなかった。2点を追う8回1死一塁では高めのスライダーに反応したが、遊飛に終わった。「本塁打が出れば同点という場面。正直狙いに行ったが、弱さが出た」。潔く敗戦を認めた。

 新チーム発足後、初の公式戦となる昨秋の東京大会。準々決勝・二松学舎大付戦では1―8で7回コールド負け。

“弱い代”のレッテルを返上するため、とにかく練習量を増やした。強くなりたかった。ひと冬越え、春の東京大会準決勝では東海大菅生に3―4で競り負けた。田中諒は直後の練習試合でも凡打が続いた。「メンタル的にイライラしちゃって」。そんな後輩に主将の本間律輝は言った。「お前が4番なんだから!」。目が覚めた。「あの言葉で自覚と自信が出た」。根性でバットを振りまくった。今年、最も長い夏を過ごしたチームの4番になれた。

 本間は「諒がいたからここまで来られた」と涙した。

聖地の土は持ち帰らない。「来年もここに優勝旗を取りに来る。今は高校通算20本ですが、50本、100本と打てるように力つけたい」と田中諒。もっとすごい打者になって、必ずここに帰ってくる。(加藤 弘士)

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