◆第107回全国高校野球選手権大会最終日 ▽決勝 沖縄尚学3―1日大三(23日・甲子園)

 決勝でもその姿は変わらなかった。「兵庫県から沖縄まで来て最後優勝できて良かった」。

芦屋市出身の田中彪斗は三塁コーチャーボックスから大きな声を出し、大きく3度腕を回した。「送球も見ながら、迷うことは1回もなかった。自分なりの役割を果たせた」と3人の走者を生還させ、同校初の夏制覇に貢献した。

 父で阪神・内野守備走塁コーチの秀太氏は熊本工で94年にセンバツ出場も1回戦敗退。2006年に59歳で亡くなった祖父・久幸さんも熊本工で監督を務め、96年夏の松山商との決勝戦では相手右翼手の「奇跡のバックホーム」により優勝を阻まれ、準優勝。「祖父の時は優勝できなかった。優勝できて本当にうれしい」と彪斗。親子3代、一家の夢である全国制覇を成し遂げた。

 父・秀太氏は「(野球は)人と人。1人じゃできないスポーツ。周りのみんなと助けたり、守ったり。そういうのを野球で学んでくれたら」。

文武両道を掲げる比嘉公也監督のもとで2年半。背番号15は「スポーツだけやるのはプロの世界の人だと思う。学生スポーツである以上、しっかり勉強、学校があってこその部活動だと思う」ときっぱり。「勉強もしっかりして、日常生活、学校生活も。そういうところがよかったかなと思います」と満足そうに金メダルを眺めた。

 これで終わったわけではない。夏優勝の看板を背負い、国体(9月29日~10月2日・マイネットスタジアム皇子山)に出場する。「裏方の大切さは今は気づかないですよ。自分でやっていると思うのではなく、人に言われて良かったなと思うんです」と秀太氏。彪斗は「このメンバーでできる最後の試合。楽しみながら、悔いのないように」。沖縄尚学の名コーチャーは、最後まで戦い抜く。

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