◆米大リーグ パドレス2―8ドジャース(24日・米カリフォルニア州サンディエゴ=ペトコパーク)

 ドジャース・大谷翔平投手(31)が24日(日本時間25日)、宿敵との今季最終戦となる敵地・パドレス戦に「1番・DH」で先発出場し、9回にリーグトップタイとなる出場4戦ぶりの45号ソロを放った。試合中にヤジを飛ばし続けたパ軍ファンとまさかのタッチを交わし、一瞬でとりこにする会心の一撃となった。

投げては先発・山本由伸投手(27)が6回4安打2失点で今季11勝目(8敗)。チームは同率首位に返り咲き、地区優勝マジック「31」を点灯させた。

 うっぷんを晴らす爽快なダメ押しアーチを放り込むと、大谷がまさかの場所に向かった。5点リードの9回1死の5打席目。今季4打数無安打2三振に抑えられていた松井の94・1マイル(約151・4キロ)の高め直球を捉え、出場4戦ぶりのリーグトップタイ45号ソロを右中間スタンドへ運んだ。ダイヤモンドを一周するとナインの元でも、ロバーツ監督の元でもなく、なぜかベンチの真横に直行。パ軍タティスのユニホームを着た男性に歩み寄るとタッチを交わし、肩をポンとたたいた。恐縮した男性は深々と頭を下げるなど、すっかり魅了された様子だった。

 このパ軍ファンの男性。実は大谷にヤジを飛ばし続けた張本人だった。ベンチで指揮を執っていたロバーツ監督は「非常に迷惑だった。私の右耳の横で一日中、叫んでいた。

ショウヘイがこのシリーズでどれほどダメかを言い続けたんだよ」と顔をしかめ証言。それでも相手を挑発するのではなく、魅了して終わるのがスーパースター・大谷らしさで「面白かった。ショウヘイの人柄が見られたね」と思わぬオチに指揮官も笑うしかなかった。

 首位攻防戦は2試合連続ノーヒットで、この日も4打席目まで快音がなく、セーフティーバントを試みるなどもがいていた大谷。パ軍との今季レギュラーシーズン最後の打席で見せた会心の一撃後、一転してウキウキとなった男性の姿は大きな話題を呼んだ。米大リーグ公式Xでも取り上げられ「大谷がとどめを刺し、彼はつい我慢できずに行動してしまった」と映像付きで紹介した。

 チームは前日に14日以来9日ぶりに2位に転落したが、宿敵との運命の最終決戦を制し、同率首位に返り咲いた。意地のスイープ阻止で、地区優勝マジック「31」が点灯。今季のパドレス戦を9勝4敗で乗り切ったが、指揮官は「直接対決ではやるべきことをやった。今はパドレス戦を終え、残り31試合に集中している。結果はどう出るかは終わってみないと分からない」と地に足を着けた。

 大谷は史上6人目の偉業へもマジック「5」となっている。

2年連続3度目の45本塁打に到達し、フィリーズ・シュワバーに並ぶリーグトップタイに再浮上。チーム131試合目で、依然として昨季を上回るシーズン55発ペースだ。1921年のベーブ・ルースら5人しか達成していない2年連続50本塁打にもまた近づいた。21年に口にした「ヒリヒリするような9月」も目の前。敵ファンすらも魅了する男が個人タイトル、そしてワールドシリーズ連覇へラストスパートをかける。(竹内 夏紀)

 〇…大谷へのヤジは逆効果? 今季初めて自身のボブルヘッドデーだった4月2日(同3日)の本拠地・ブレーブス戦では、同点の9回に3号サヨナラ弾。試合後には「(打席に入る直前に)後ろの方から『ボブルヘッドデーなんだからホームラン打てよ!』みたいなこと言われたので、打てて良かった」と笑顔で明かしていた。この時はドジャースのファンからの声とみられるが、発奮した大谷は誰にも止められない!?

 ◆史上3度目のスピード記録 大谷がシュワバー(フィリーズ)と並ぶ45号を放ったことで、ア・リーグトップで、捕手のシーズン最多本塁打記録の49本を放っているローリー(マリナーズ)とともに45発超えが3人となった。米データサイト「オプタ・スタッツ」によると、9月に入る前に3選手が45発以上を記録したのは史上3度目だという。

 ◆なぜ同率首位でマジック点灯? ドジャースはパドレスと同率首位だが、同カードはド軍の9勝4敗で対戦を終了。残り31試合に両軍が全勝した場合も、ド軍が直接対決の差で上位となるため、マジック「31」が点灯した。この日は両軍にマジック点灯の可能性があった。

パ軍が勝っていた場合は75勝56敗となり、73勝58敗となるド軍が残り31試合に全勝しても104勝にとどまるため、パ軍にマジック「30」が点灯していた。

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