◆パ・リーグ 日本ハム1x―0ソフトバンク=延長10回=(24日・エスコンフィールド)

 2位・日本ハムが首位・ソフトバンクを延長の末に下して3連戦3連勝。今カードでの相手の優勝マジック点灯を阻止し、ゲーム差を0・5に縮めた。

10回に奈良間大己内野手(25)が1死満塁から中前へサヨナラ打を放った。新庄剛志監督(53)は相手のキーマン・近藤を3度、申告敬遠して完封リレーに導くなど、勝利にこだわった采配が実った。監督4年目538試合目で、初めて通算勝率が5割に到達。9年ぶりのリーグ優勝へ、勢いが加速してきた。

 たたきつけた奈良間の打球が前進守備の二遊間を破った。ナインが一斉にベンチを飛び出した。0―0のまま迎えた延長10回1死満塁、守備固めから入っていた伏兵のサヨナラ打。ヒーローは一塁ベンチへ猛ダッシュすると、新庄監督と熱い抱擁を交わした。首位ソフトバンクとの直接対決3連戦に3連勝。0・5差に迫る劇勝を、指揮官は「前回の(敵地での)3連敗の借りを、選手たちがきっちりエスコンで返してくれましたね。感謝しかないです」とかみ締めた。

 執念でスコアボードに「0」を並べた。

3回2死二塁で近藤へのカウントが2ボールとなると申告敬遠。続く山川との勝負を選んだ。8回には伊藤が中指がつるアクシデントの後に2死から川瀬に二塁打を浴びると、近藤を再び申告敬遠。延長10回2死二塁でも、近藤に対し3度目の申告敬遠を選択した。「山川くんに、おいしいところのチャンスを与えただけです。あげるよって(笑)。(近藤は)いいバッターなんで、前回もああいうケースで左中間に打たれてたんで。これは作戦なんでね」と振り返った。

 伏線は2週間前、10日のソフトバンク戦(みずほペイペイ)だった。同じ伊藤―モイネロの投げ合いで、1度目と同じ3回2死二塁から、近藤に左中間適時二塁打を浴びた。結果、その1点が決勝点となり0―1で敗戦。同一カード3連敗を喫していた。

伊藤は「チームの作戦がもちろんある。悔しさはもちろんあるけど、最終的にチームが勝つことの方が今は大きいと思うので」と受け止めた。

 その伊藤も執念で投げ切った。8回に中指がつって以降は「変化球だと100%で投げきれる感じじゃなかった。100球を超えたあたりから感覚はなかった」と終盤は真っすぐ主体で押し切った。降ってきたのは苫小牧駒大(現北洋大)時代の恩師・大滝敏之監督の言葉。「大滝さんの『粘り強さは気迫から』っていうのがポンと頭に出てきました」。偶然、秋季リーグ戦へ向けた記事を目にし、後ろから言われた気がしていた。気迫の129球で、9回までマウンドを守り抜いた。

 4年目の新庄監督にとっては、262勝262敗14分けで通算5割。1、2年目につくった41の借金を完済した。「1、2年目はトライアウトでしょ。

成績に入れないで(笑)。3年目が一番よかったですけど、しくじって。僕の勉強不足で。まぐれじゃなかったことを今、証明してるんで」。一つ負けると相手にマジックが点灯する危機を乗り越えた3連勝。最高のラストシーンをはっきりと思い描いている。(山口 泰史)

 ◆記録メモ 日本ハムは3、8、10回にソフトバンクの近藤を申告敬遠。全てスコア0―0の2死二塁という場面だった。1試合で1人の打者を3度も敬遠したのは、17年6月18日に巨人のマギーを8、10、12回と歩かせたロッテ以来、8年ぶり。前回は前の打者が敬遠された3度目の打席で、亀井善行が逆転サヨナラ3ラン。ロッテの敬遠策は実らなかったが、この日は近藤の後ろを打つ4番の山川を敬遠後3打席いずれも打ち取り、完封勝利につなげた。

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