◆JERAセ・リーグ DeNA2―3阪神(26日・横浜)

 絶体絶命の危機からミラクルが起きた。阪神・大山悠輔内野手(30)は、スタンドインを見届けると珍しく右手を突き上げて感情を解き放った。

「スコアラーさんを含め、いろんな方の助けがあってあの一打が出た。チーム全員の一打だと思う」。9回2死一塁から飛び出した起死回生の逆転8号2ラン。ベンチの仲間たちも、声をからして応援した虎党も、みんな歓喜した。

 佐藤輝の中犠飛で1点差に迫り、なおも一塁。「しっかり準備していた」と入江の初球154キロ直球を右翼席に運んだ。今季初めて右方向に描いたアーチだったが「方向はどこでもいい。チームが勝てば、それが一番」と汗を拭った藤川阪神の大黒柱。指揮官は「最後にびっくりするようなゲーム。粘り強さ、タイガースらしい野球が出ていると思う」と目を細めた。

 大山にとって、横浜スタジアムは“原点の地”だ。白鷗大時代、阪神からドラフト1位指名を受けた直後の16年11月1日。

関東地区大学野球選手権大会・中央学院大戦で惜敗し、青春をささげてきた学生野球が終わった。当時21歳の青年は両目を充血させながら「プロの世界では勝てるようにやっていきたい」と決意。今も悔しさは胸に残る。プロ入りから相性の良い同球場では、今季も28打数10安打の打率3割5分7厘と躍動している。

 6年ぶりのDeNA戦6連勝で8月の月間勝ち越しを決め、2年ぶり5度目の両リーグ70勝一番乗り。優勝マジックは2つ減らして14となった。現時点で最短Vは1週間後の9月3日。同8日に優勝を決めた90年の巨人を抜き、2リーグ制後(パ・リーグの前後期制を除く)の史上最速優勝も見えてきた。ヒーローインタビューで「試合が終わった時にするべきだった」と劇弾を放った後のガッツポーズを反省した大山。こんな男がいる猛虎は、やっぱり強い。(中野 雄太)

 阪神・石井が自身が持つプロ野球記録を43試合連続無失点に伸ばした。1点リードの9回に登板し、1死満塁の窮地に陥ったが、野手の好守にも助けられて7セーブ目を挙げた。

連続無失点イニングは42とし、江夏豊を抜いて球団単独3位に浮上。「野手のみなさんのおかげ。安どです。安どしました」と、ほほ笑んだ。セットアッパー右腕の抑え起用について、藤川監督は「きょうは元々そのプランだった」と説明した。

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