◆JERAセ・リーグ DeNA1―2阪神(27日・横浜)

 阪神の育成ドラフト3位・早川太貴投手(25)が、プロ初先発のDeNA戦(横浜)で5回2安打無失点と好投し、くふうハヤテ出身投手初のNPB勝利を飾った。セ・リーグ首位独走のチームは引き分けを挟んだ連勝を「4」に伸ばし、3年連続のシーズン勝ち越し決定。

優勝マジックは2つ減らして12となった。現時点で最短Vは9月3日。栄光のゴールテープへ、新戦力の力でまた前進した。

 夢を諦めなかった元公務員の苦労人が最高の舞台で輝き、心の底から笑った。7月に支配下登録された育成3位ルーキーの早川が、5回2安打無失点でプロ初先発初勝利を挙げた。「本当に諦めないで頑張ってきて良かった」。昨年からウエスタン・リーグに参入したくふうハヤテ出身投手初のNPB勝利。育成出身の新人投手勝利は球団初の快挙で、歴史に名を刻んだ。

 「汗はかきやすい」と初回からユニホームの色が変わるほどびっしょり。その影響からか、2点を先制した直後の4回無死一塁で右太もも裏がつりかけ、ベンチ裏で治療した。続投した後も「汗は止まらなかったけど何とか粘れた」と最速146キロの直球に変化球を効果的に交ぜて力投。藤川監督は「すごい一歩を切ってくれた。

強い気持ちで最後まで攻めた」と評した。

 目の前の壁を努力で乗り越えてきたからこそ、今がある。国立の小樽商大に進学するため、高校野球引退後に1日10時間も勉強。得意の英語を武器にセンター試験などを受けて「ギリギリで受かった」と合格を勝ち取った。公務員試験の際も、SPI(適性検査)で「そこまで難しいものではなかった」とクリア。自分の力で生きる道を切り開き、この日までたどり着いた。

 プロ初登板の7月16日・中日戦(甲子園)では9回2死一、三塁からマウンドに上がり、ボークで得点を与える屈辱を味わった。それでも、苦い経験を糧にはい上がった右腕。記念球は親に贈る。試合後は「今やってる選手のモチベーションになってくれたら」と苦楽を共にしたくふうハヤテの同僚たちを思い浮かべた。

 チームは引き分けを挟む4連勝で今季最多更新の貯金29とし、3年連続のシーズン勝ち越しを決めた。DeNA戦は7連勝で、3年連続の勝ち越しが決定。

サクセスストーリーを歩み始めた早川が、Vロードを行く阪神に新風を吹かせた。(中野 雄太)

 ◆早川太貴(はやかわ・だいき)アラカルト

 ☆生まれとサイズ

 1999年12月18日、北海道・江別市生まれ。25歳。185センチ、95キロ。右投右打

 ☆球歴 大麻泉小3年時に東大麻グランドキングスで野球を始め、大麻東中では軟式野球部に所属。大麻高、小樽商大を経てクラブチームのウイン北広島で2年間プレー。24年からウエスタン・リーグに新規参入したくふうハヤテのトライアウトに合格。24年の育成ドラフト3位で阪神に入団。7月13日に支配下選手契約を締結

 ☆元地方公務員 22年から約2年間、北海道・北広島市役所で生活保護業務に従事。窓口で生活保護受給者の相談業務などを行った

 ☆無類の努力家 ウイン北広島時代は全体練習が行われる水曜日と週末は午前3時に起床し、4時半から2時間練習。市役所業務終了後はジムに通った

 ☆日本ハムファン エスコンのある北広島市で働いていたこともあり、阪神入り前まではファイターズに憧れ。交流戦でのがい旋登板が目標

 ☆ミスタータイガースを継承

 掛布雅之OB会長=スポーツ報知評論家=の象徴でもある背番号31をつける

 

 ☆好きなタイプの女性

 女優・吉岡里帆

 ☆座右の銘

 「Boys be ambitious」

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