◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」

 原稿より健康―。入社以来、ずっと言われてきた。

メディア業界で古くから伝わる言葉らしい。私も阪神担当2年目にして、やっとリフレッシュ方法を見つけた。仕事から離れ、体力づくりとストレス発散も両立できる「大阪・関西万博」に出会ったからだ。シンボルの大屋根リングを散歩しながら、無心になる瞬間が何よりも至福。ただ「仕事」と向き合う場所でもある。

 大屋根リング内に「阪神タイガース」と書かれた木柱がある。湯浅京己、高橋遥人…。選手、コーチ、OBの15人以上の名が刻まれている。江草ファーム投手コーチを中心に「万博の柱に名を刻む! プロジェクト」に参加したという。次世代へ熱い思いを発信する取り組みに賛同し寄付した森木は言う。「世界の多様な文化を受け入れることは大切。寄付することで僕も一歩を踏み出せるんじゃないかと…」。

東京ドーム約33個分の一角で、縦14センチ、横20センチのプレートに努力の大切さをつづっている。

 158の国と地域が参加する万博。ロッテやソフトバンクで活躍したデスパイネのホームラン映像を無限リピートするキューバは少数派で、スポーツはサッカーがほとんど。直線距離で約8キロ先の甲子園では阪神が首位を独走しているのに…。サッカー愛を熱弁してくれたチリ館のスタッフは「はんしん? 知らない」とけげんな顔をしていた。

 閉幕は10月13日。レギュラーシーズンは終了し、CS第1Sの3戦目が行われる日だ。野球を知らない世界の人たちにも、阪神の良さが伝わればいいな…。そんなことを考えながら、気温35度の大屋根リングの隅っこで大量の汗を流しながら、このコラムと向き合っている。つい「健康」をおろそかにする未熟な自分がいるけれど、それくらい伝えたい魅力が阪神にはある。(阪神担当・直川 響)

 ◆直川 響(のおがわ・ひびき)2023年入社。阪神担当。

万博には計12回来場し、約7割のパビリオンを制覇。おすすめはセルビア館。

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