10月23日にプロ野球ドラフト会議が行われる。社会人のホンダ鈴鹿では、最速155キロの川原嗣貴(しき、21)と、MAX157キロの田中大聖(やまと、23)の両右腕らが指名候補に挙がっている。

川原は、2022年センバツで優勝投手に輝くなど、エリート街道を歩んできた。一方の田中は、近畿学生2部リーグの太成学院大時代から“雑草魂”で二刀流として活躍。今季から投手に専念した。前回は指名漏れした大阪出身の2人が、プロへの思いを語った。(藤田 芽生)

 スクワットは240キロ。鍛え抜かれた筋肉が、田中の剛球をつくっている。6月の都市対抗大会第2次予選・トヨタ自動車戦で、自己最速の157キロを計測した。投手に専念して初めて迎えるドラフトに「指名漏れの嫌な感じは覚えている。緊張はある」と、気を引き締めた。常時150キロ以上を出す右腕に、眞鍋監督は「誰よりもストイックにやってきた。必然です」と、うなずいた。

 鶴岡東(山形)の3年夏に甲子園で16強入りしたが、出場機会はなかった。

野球を続けず、理学療法士の道に進むことも考えた田中に「楽しく野球をやろう」と、近畿学生2部・太成学院大に進学した高校の先輩が声をかけてくれた。打撃センスと、コロナ禍に没頭した筋力トレーニングの成果で徐々に頭角を現した。

 2022年6月の大学関西オールスター・5リーグ対抗戦で自己最速の153キロを計測し、注目を浴びた。4年の秋季リーグ戦での打率は4割を超え、二刀流としてプロ注目だった。しかし、支配下登録選手に絞ってプロ志望届を提出し、指名漏れした。「(自身の)レベルが低いところからだった。スカウトに見てもらって、志望届を出せただけでいい経験」と、後ろは向かなかった。

 入社2年目。「プロに絶対、行きたい。投手だけを1年間やったことがなかったので、まだ伸びると思った」と可能性に懸けた。今季はリリーフとしてベーブルース杯の優勝に貢献し、日本選手権(10月28日開幕・京セラD)の出場権を獲得。都市対抗大会でも登板した。

「まだ実力は足りていない。指名されるかは時の運」。華やかな経歴はなくても、努力で運命を変えてきた男が人生最大の夢をかなえる。

田中 大聖(たなか・やまと)

★生まれとサイズ

2002年1月29日、大阪・藤井寺市生まれ。23歳。178センチ、98キロ。右投左打

★変化球

スライダー、カットボール、フォーク

★球歴

藤井寺小2年から軟式の小山ジャンボで野球を始める。藤井寺市立第三中では河南シニアでプレー。鶴岡東では2年秋からベンチ入り。太成学院大では1年秋からリーグ戦に出場。2部で2年秋と4年秋に首位打者。ベストナイン4度

★憧れの野球選手

阪神などでプレーした糸井嘉男

「超人と言われているのがうらやましい」

★好きな芸能人

TWICEのMOMO

★名前の由来 「聖」は聖書、聖徳太子などに使用。立派に大きく育ってほしいという願いが込められた

★仕事内容 完成車第1工場合成樹脂モジュール勤務。カーナビやダストボックスを組み立てる

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