女優の山村紅葉が、小説家デビューすることが11日、分かった。“ミステリーの女王”と称された推理作家の母・山村美紗さんが亡くなった65歳で、挑むデビュー作は「祇園の秘密 血のすり替え」(6月17日発売、双葉社)。

美紗さんが数多くの作品で描いた京都を舞台に、花街と歌舞伎界の愛憎劇を描く。

 2時間ドラマに多数出演し、“サスペンスの女王”として知られる山村が、母から受け継いだ作家の遺伝子を解禁する。過去にエッセー連載の経験はあったものの、ストーリーを紡ぐのは初めて。「エッセーの編集者さんから『お母様の亡くなった65歳になるので、小説を書いてみませんか?』とお誘いを受けたことが執筆のきっかけでした」とデビューの経緯を語る。

 「祇園―」は、歌舞伎界の血脈などを描いた映画「国宝」に着想を得た。物語を構想する中で、自らの原風景をたどり「幼い頃から我が家でお話を聞かせてくださった歌舞伎役者さんたちや、20歳の頃から母に連れて行ってもらっていた祇園のお茶屋さんの世界―。私にとって身近な2つの世界を書いてみたいと思いました」と明かす。

 歌舞伎の名門と祇園の老舗置屋という伝統の聖域で行われた「禁断の血のすり替え」を描く濃密なミステリー。伝統芸能の美しさや閉鎖性、人間の欲望と葛藤が交錯する。「取材や執筆はとっても楽しく『才能あるのかしら』と思いましたが、時代の倫理観に合わせて表現を変えるのには苦労しました。生前、母が『アイデアはすぐに思いつくけど、出版の形に持っていくのが大変』と言っていた意味がよく分かりました」と作家の苦労も味わった。

 母に倣ってパソコンではなく、原稿用紙にペンを走らせた。

「力を振り絞って仕上げた作品。多くの方に読んでいただき“母の血”を感じていただければとても嬉(うれ)しゅうございます」と呼びかけた。

 ◆母・美紗さんはは20年強で200冊以上を刊行 1996年に急死

 山村の母・美紗さんは、1931年8月25日に京都で誕生。結婚して中学校教師を辞めた後に執筆活動をスタートさせた。

 74年、「マラッカの海に消えた」で本格作家デビュー。京都を舞台にした数々の推理小説が大ヒットし、生涯200冊以上を刊行した。代表作の「花の棺」「消えた相続人」など多くの作品が映像化され、片平なぎさ主演のドラマ「赤い霊柩車」シリーズは2023年まで30年間続いた。

 トラベルミステリーの第一人者・西村京太郎さん(22年死去、享年91)とは、家族ぐるみで親交。96年9月5日、東京・帝国ホテルで執筆中に心不全のため65歳で急死した。

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