アニメ「ルパン三世」、映画「犬神家の一族」の音楽などで知られる作曲家でジャズピアニスト・大野雄二(おおの・ゆうじ、本名同じ)さんが4日、老衰のため都内の自宅で死去した。84歳だった。

葬儀・告別式は近親者で執り行った。後日、お別れの会を予定している。

 2006年に大野さんの自宅でインタビューをした。30年ぶりにリメークされた映画「犬神家の一族」(横溝正史原作、市川崑監督)の封切り前だった。“犬神家”の世界観を象徴する「愛のバラード」のメロディーが、76年版に続いて作品のテーマ曲として使われることになり、話を聞きに行った。あの有名な曲をつくった人を取材できる、と思うと会う前からドキドキした。

 物悲しく、切なく、美しい旋律。「犬神家―」の冒頭はリメーク版も、このメロディーから始まっていた。映画史に残る傑作的な曲を生んだ人だ。大上段に構えるような感じでエピソードをいっぱい聞けたらいいな、と想像していたが、会ってみると違った。

 「世の中がこの曲を有名にしてくれたんですよ。とても感謝しています。

でも実はこの曲に懐かしさはないんです」。開口一番、そんなことを言われ、ショックだった。同時に気さくで正直な人なのかな、とも思った。

 「懐かしさがない」と言う理由があった。ジャズ畑の大野さん。70年代はCM曲を年間200本も手掛け、睡眠時間もあまり取れないほど忙しかった。菓子の「きのこの山」、アイスクリームの「レディーボーデン」など皆が知るCM曲もつくっていた。

 “犬神家”の切ないメロディーはそんな、目の回る多忙な中でつくられた。しかし、曲の旋律を回想する中で創作過程がよみがえってきた様子だった。

 琴を連想させる澄んだ音色は「ハンガリーの『ダルシマ』という楽器を使った」と説明した。「狙ったのはおどろおどろしさでなく、逆に美しさ。きれいで透明感があるからこそ見る者に怖さを感じさせられる。

シンセサイザーを口笛っぽく交ぜたのも勝因だったかな」

 美しさ、透明感こそが恐怖感を生む。恐るべき作曲哲学。忙しい中でつくられたといいながら、異次元の感性が総動員されて生まれていた。約20年もたつけれど、幸せな取材だった。(内野 小百美)

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