松本洋平文部科学相は19日、記者会見で国際オリンピック委員会(IOC)と、3月に開催された野球の国際大会「ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)」の主催者に配慮を求めていた問題で、両主催者から返答があったことを明らかにした。IOCからは「広範な視聴者に届けることが責務」と明記され、WBC主催者は「日本の考え方を念頭に置く」と回答があった。

 3月のWBCでは、日本国内における全47試合の生中継・配信権は、米国の大手動画配信サービス「ネットフリックス」が独占的に取得。これにより、地上波のテレビ局による無料生中継が一切行われない日本のスポーツ放送史上で極めて異例の事態となった。この決定の背景には、世界的なデジタルプラットフォームを通じたファン層の拡大を狙ったものとされる。放映権料の高騰により地上波が太刀打ちできない価格まで急騰しているという背景もある。

 この独占配信により、有料の会員登録を行っていない視聴者はリアルタイムでの観戦機会を失った。これをきっかけに、スポーツなどの文化が持つ公共性や公益性についての議論が噴出。「オリンピックやWBCのような国民的スポーツイベントは、すべての国民が無料で視聴できる環境が保障されるべきではないか」との声が上がり、限定的な意味のスポーツにおける「ユニバーサルアクセス権」の概念が注目されるようになった。

 英国やフランスなど欧州の一部では、五輪やワールドカップなど国民的イベントについて、有料放送による独占を制限し、無料放送で広く視聴可能とする制度が法制化されている。一方、日本には同様の包括的制度は存在せず、放映権取引は基本的に市場原理に委ねられている。

 経済的な理由やデジタル環境の有無によって視聴者が排除されることは、文化的な分断を招くとの懸念も根強い。また、「国民的エンターテインメント」の価値は「独占」ではなく、幅広く国民の間で享受すべきとの考えもある。

 今後、政府はスポーツ庁、総務省などで有識者らか意見を聞き、検討を重ねていく方針。

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