◆第93回日本ダービー・G1(5月31日、東京競馬場・芝2400メートル)追い切り=5月27日、栗東トレセン

 ダービーはサラブレッドにとって、たった一度の夢舞台。だからこそ、携わる人の熱い思いに触れると強く残る。

「本当にいい馬でね。特に雰囲気。オーナーにお願いしました」と野中調教師が懐かしそうに振り返るのがマテンロウゲイル(牡3歳、栗東・野中賢二厩舎、父エピファネイア)。当歳時のセレクトセールで買ってもらった一頭だ。

 牧場で目の前に立たせようとすると、写真撮影のような格好でピタッと止まる。その利発な姿、皮膚の薄い馬体は常に目を奪われた。大きな舞台に立たせたい―。野中師にそう思わせるに十分だった。

 皐月賞は10着と初の大敗。ゲート裏でメンコ(覆面)を外したことでイレ込み、ちぐはぐな競馬になった。敗因は明確。だからこそ、トレーナーに悲壮感はない。

「先週の段階でむちゃむちゃ状態がいい。上げるというより維持するイメージ」だった最終追いは栗東・坂路を単走。軽く促した程度で、力強く54秒4―12秒4をマークした。

 この日の取材で何度も聞いたのが「皐月賞よりいい」という言葉。相当に上積みはありそうだ。小さな頃から見守り続けた若駒が理想的な成長曲線を描き、たどり着いた競馬の祭典。最後に熱い思いが背中を押す場面が見たい。(山本 武志)

編集部おすすめ