元週刊プロレス編集長のターザン山本(80)がこの春、アパートの更新料を「X」でカンパを募り昭和プロレスファンをざわつかせた。
現在、都内の家賃6万5000円のワンルームアパートで1人暮らしする山本。
最大の理由は、2か月に一度の年金(25万円)などの収入を競馬につぎ込み預金ゼロとなったことにある。
ギャンブルにはまり続け自らの責任で陥った危機。更新料を捻出すべく山本は、自身の「note」などで広く一般から一口5000円で「カンパ」を募ったのだ。結果、3日間で6万5000円が集まり更新料の支払いに至った。
アパートの更新料を「カンパ」で支払う方法は、大胆、ある意味、破廉恥。一方で6万5000円がわずか3日で集まったことは奇跡的とも言える。果たしてターザンが実行した更新料を「カンパ」で募る行為は是か非か。4月に80歳を迎えた山本に「カンパ」を決断した理由、80代を生きる原動力などを聞いた。
3月20日。山本は「note」にカンパを募った。
「今日は皆さんにお願いごとをします。
この「お願い」を決めた思いを山本は、明かした。
「僕は今、家賃6万5000円でワンルームアパートで1人暮らしなんだけど。アパートの更新料は2年ごとなんですよ。更新は今年の3月でその月は、家賃と合わせて13万円を振り込まなければいけないんですよ。年金は2か月で25万円入ってくるんだけど、僕はカネがあったら使っちゃう。
ギャンブルにのめり込む自らの責任で預金ゼロ。それでも生活する術はあった。それが「タニマチ」と呼ぶ支援者の存在だった。1980年代後半から95年まで週刊プロレス編集長として公称45万部という怪物的な部数を売りまくった山本。最近では、タレントの有田哲平が自身の「You Tube」で編集長時代の山本に心酔し、絶賛するなど当時の読者で、今も山本の才能に心酔しており人々は数多く存在する。そんな読者の中に山本を金銭面で支援する「タニマチ」が2人いた。ところが、2人はそれぞれ2月に急逝してしまった。
「僕にはお願いできる人が誰もいなくなったんです。ただ、友達の中では直接、頼めば払ってくれる人はいたと思う。だけど、それをしてしまったら人間関係は終わる。
考え抜いた末の決断が「カンパ」だった。
「プロレス共和国に存在しているファンは優しいんです。ここは、プロレスファンに訴えて、カンパを募るしかない。そう決めたんですよぉぉ。だから、これは一種の賭けだと僕は思った。どういう結果を生むか。この賭けがどういう経過を生むのかを楽しもうと考えたんですよ」
家賃と合わせた「13万円」のカンパは、さすがに引けた。更新料だけをカンパで募ることにした。
「6万5000円を払ってくださいってお願いすると金額が大きいから、引いてしまう人がいると思ったんですよ。だから、一口5000円にしたんです。これが最大のキーワードですよぉぉ。5000円だったら出しやすい。
noteにカンパを募ると、波紋は呼んだが、結果、3日間で6万5000円が集まった。山本は自ら表現した「賭け」に勝った。
「1万円払ってくれた人もいた。あとは全部5000円で11人。そして、ここがまたキーポイントなんだけど、ほとんど全員が僕が会ったこともない知らない人ばかりだった。プロレスファンは純粋だなと感動しましたよぉぉ」
送金した人の中には「このお金は競馬に使わないでください」との要求が送られてきた。一方で「青春時代に山本さんの週プロを読んで大変、お世話になりました。このお金は、私の青春時代の気持ちとして受け取ってください」との謝礼の意味を込めたカンパだったことを明かす人もいたという。カンパしてくれた人に山本は「ありがとう!という思いだけ。僕に会いに来てくれたら会うけど、お返しはしませんよ」と明かした。
さらに、予想外の事態も起きた。
「カンパしようと思っていた知人がいたんですよ。
しかも、その人は「このお金は競馬で使ってください」と伝えたという。
「びっくりしたよねぇ。こんなことが現実に起きるのかと思ったよ。競馬で使えって言ってくれたから、競馬で使いましたよ。1日で全部負けましたよ」
山本は「お金は人生最大の価値。人間は、生きてから死ぬまで脳は99%、お金に支配されている。人生はお金です」と主張した。
その「人生最大の価値」をギャンブルにつぎ込み、挙げ句の果てにアパートの更新料を「カンパ」したことへの罪悪感は、ないのか。
「ない。お金を使わないヤツこそ罪悪ですよ。使うヤツは正統。使うということは、支払った相手がお金を持つということで他者を利することになるから。
持論を一気に主張したが、それでもなお、今回の行動に私は疑問を感じざるを得ない。こうした他者からの疑問、批判はどう思うのか。
「これは、僕の人生なんですよぉ。他人がどう思おうが僕には関係ない。なおかつ、僕は他者と比較しない。他者評価は何も気にしない。どうでもいい。僕なりに思考してダイナミックに生きる…ここが重要なんですよ」
そして、今回の「カンパ」をこう表現した。
「こんなことは、他人はできないですよ。募ったところで『バカか』って言われて無視されるだけ。だけど、僕はたった3日で6万5000円が集まったんですよ。これは僕の人徳。あのころの週刊プロレスを読んでくれた人が僕の人生を一種の遊戯感覚で面白がっているんです。週刊プロレス時代の残高が生きているんですよ」
山本は、編集長時代に「プロレスについて考えることは喜びである」とファンに呼び掛けた。当時を「完全にイッちゃってた」と振り返る。当時は団体関係者から金銭を受け取っていたことも自著「金権編集長ザンゲ録」で明かした。しかし、週刊プロレスで山本が「考える喜び」を毎週、時には事件記事として、時には時代小説のように、時には詩的に、時には私小説のように「活字」で訴えたことを読者は考え続け。結果、今も多くの人の心の中で生きている。だからこそ、「カンパ」は集まった。それを「残高」と山本は表現する。同時に年を重ねると「何をやるか」ではなく「何をやってきたか」を問われることも思う。大胆な「カンパ」が成功した背景には、山本が編集長時代にどれほどの読者の心をわしづかみにした存在証明でもあった。
80歳となった山本は、これからの生き方を同世代に提言した。
「もうこの年齢になると人生に限界がある。固まっている。先のことを考えることもできない。だから重要なのは、過去に依存しない。未来にも依存しない。現在だけを生きることですよぉぉ。人生はプロセスでしかない。そのプロセスを楽しむ。それは未来にも過去にもつながっていない。それを僕は余命一日と言っているんです。きょう一日しか考えてない。一日というプロセスしか考えていない」
朝起きた時、「きょう一日」を楽しむことだけを考えている。
「一般的に80歳は晩年だよ。だけど僕は晩年は新しい青春だと思っている。80歳だから4回目のハタチですよぉぉ。社会的にも家族にも仕事にも解放される。ここに自由がある。シン晩年論。俺は80代の人生を全盛期にする。全盛期というのは、世の中に出る。認めさせたい。老齢化社会のスターになる」
他者評価は「関係ない」と言い切りながら「世の中に出る」と掲げた山本。人間は年を重ねても矛盾を抱え、葛藤しながら生きる存在であることも思う。そして、これも「考える喜び」である。
(福留 崇広)



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