◆第108回全国高校野球東東京大会▽2回戦 日比谷7―6開成(11日・神宮)

 全国屈指の進学校対決は、日比谷が接戦を制して初戦を突破した。1点差に詰め寄られた9回、勝利の瞬間を特別な心境で見つめる女性がいた。

日比谷の女子部員・野上杏助監督(3年)だ。試合前のノッカーを務め、夏の初戦に臨む仲間たちに熱いエールを込めてバットを振り抜いた。

 マネジャーだった1年夏に、2学年上の女性部員の姿に憧れて選手に転身した。運動は好きで、野球を見るのも好きだったが、プレーヤーとしては素人で「チームの中で誰よりも下手」。今年2月には飛球を顔面に受けて骨折し、手術と入院も経験した。さまざまな壁があったが「一番下手くそな人が頑張っていたら、みんなも頑張れるかなと思った。私が頑張ることが、みんなが頑張れる一因になれていたらうれしいな、と」。心が折れそうになる時期もあったが、自分なりの信念を胸に高校野球に全力を注いできた。

 これまでの公式戦ではボールパーソンを務めてきたが、今夏初めて助監督としてベンチ入りした。チャンスでもピンチでも、チームを思って懸命に声を張り上げた。ボールパーソンではチームの結果に一喜一憂できなかったが、助監督としては感情のままに仲間を応援できた。「ボールパーソンでは、(仲間が)ヒットを打った時に一緒に喜んだりもできないし、『寂しいな、なんかつらいな』と感じたことはあった。

初めてベンチに入って、伝えたいことは全部伝えられる。一緒に喜べるし、一緒に全力で戦えて本当にうれしかった」。あふれ出した感情が、涙となって何度も頬を伝った。

 将来の夢は医師で、卒業後は国立大医学部への進学を志望している。ただ、将来の夢を追う前に、やり残していることがある。「みんなと過ごす時間が本当に大切で、一緒に野球ができない日々を考えるとすごく寂しい。まずはノックで全力を尽くして、その後は助監督としてはチームに声をかけて、できるだけ長い夏を過ごしたい」(小島 和之)

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