8代目尾上菊五郎が31日、埼玉・秩父宮記念市民会館で襲名披露興行の大千秋楽を迎えた。

 昨年5月に東京・歌舞伎座から始まり、1年2か月で約150公演を無事に完走した。

東京の後は大阪・松竹座、名古屋・御園座、福岡・博多座をまわり、最後を全国巡業で締めくくった。この日、終演後には共演者などからサプライズでねぎらいの横断幕を贈られ「感謝の気持ちは尽きません」と感動した様子を見せた。

 節目のこの日、菊五郎は「秩父三社」の三峯神社、秩父神社へ。標高1100メートルの山中にある三峯神社は関東有数のパワースポットだ。「今朝、早めに出てお参りして劇場入りしました。何度も訪れており、なじみの場所。自然と文化を大事にする大好きな秩父でこの日を迎えられてうれしい」と振り返った。

 襲名披露が終わっても、菊五郎の中にホッとした気持ちはない。「これからが本当のスタートです。古典、新作、復活狂言で歌舞伎の魅力を日本のみならず、世界の皆さまにも伝えられるように。父(7代目菊五郎)も元気ですので。音羽屋一丸となってやっていかなかればなりません」と気持ちを新たにした。

 これまでの口上で「伝統と革新」という言葉を何回も発していたが、本格的にこれらを行動に移す気配をうかがわせる。この日の口上では、自身が戦後80年の年(2025年)に襲名したことにも言及。世界各国を訪れ、平和を強く願った茶道裏千家の千玄室(げんしつ)さんの話を引き合いに、歌舞伎を通じての「文化と平和」の大切さにも触れた。舞台上で演じるだけでない、その先を見据えている。

 客席後方には同時期に襲名した長男、6代目尾上菊之助(12)の姿も。中1になり、この1年間に5センチも身長が伸びた。息子との厳しい稽古も回想しつつ、「彼の中での責任感、歌舞伎への思いがより強くなったのではないでしょうか。8月は少しゆっくりできるので、一緒にカナダに行こうかと。自然に触れて心も解放されると思うので」。8月1日は菊五郎の誕生日で49歳になる。「50、60歳になってもまだまだと思うかもしれません。時代に合った表現を追い求めていきたい」48歳最後の日は忘れることのできない一日となった。

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