女優でエッセイストとしても活躍した岸惠子(きし・けいこ)さんが7日に老衰のため、横浜市内の自宅で死去していたことを19日、所属事務所が公式サイトで発表した。93歳だった。

葬儀は近親者で執り行った。喪主は長女の麻衣子(まいこ)さん。大ヒット映画3部作「君の名は」(53~54年)など約100作品に出演。人気絶頂期にフランス人監督と結婚し、日仏を行き来するなど国際派女優の先駆けとして活躍した。晩年は執筆を中心に活動していた。

 岸さんとは、2022年の取材会で初めて顔を合わせた。膝丈のスカートにヒール姿で放つ、上品な美しさに圧倒されっ放し。ド緊張する20代の記者を前に「奥歯を抜いちゃってしゃべりにくいのよ」とジョークで和ませてくれた。「若い方が私を知ってくれていて嬉しいわ。スポーツ新聞でも女性が活躍しているのはとってもいいこと。若い時の経験は一生ものよ」と言葉をかけてくれた。

 近況を聞くと、「病院は大嫌いなの。

家が一番いい」「最近は脳が丸っきりだめね。右手の指先が麻痺(まひ)して字がうまく書けないから、パソコンで書き物をしているの」。尽きない執筆意欲をのぞかせた。

 トークショー本番は、フランスから来日した「自慢の孫」2人にエスコートされステージに。1000人の観客を前に1時間、台本に目を向けることなく話し続ける姿に驚かされた。「死は全然怖くないし100歳までは生きたくないわ。本を書き上げたらさっさと逝きたい」と軽やかに語っていた。宣言通り24年に著書「91歳5か月」を出版し、自宅で最期を迎えた岸さん。美しく潔い生涯に敬意を込め、ご冥福をお祈りします。(奥津 友希乃)

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