国際派俳優として知られ、エッセイストとしても活躍した岸惠子さんが7日に老衰で死去した。93歳だった。

19日に所属事務所「舞プロモーション」の公式サイトで発表された。

 岸さんは90代を迎えてもなお、執筆活動やトークショーなど精力的に活躍。常に老いを感じさせないチャーミングなオーラを放っていたが、高齢者の恋愛をテーマに2013年にベストセラーとなった「わりなき恋」の執筆のモチベーションとなったのは「憤り」だったという。

 19年の取材会で、岸さんはかつて、介護施設のドキュメンタリーで映されていた高齢者の映像にショックを受けたことを明かした。「生きているとは思えないような顔が大写しにされて、ひ孫みたいに若い介護の方が赤ちゃん言葉であやしている。この方の身内に、キャメラの前に立ちはだかって『やめて』という人はいないんだろうか。年を取って、輝くまではいられなくても、人生の夕暮れ時にパーッと虹が立つような話があるといいと思って」。自身が経験した飛行機の中での出会いをロマンチックなラブストーリーに昇華。文章を通じて、年を重ねることの豊かさを伝えた。

 若さの秘訣(ひけつ)を聞かれるたびに「『お若く見えますね』と言われると『見えていません。私、若いんです』と答えていました」という。「さすがにもう言えなくなりましたけど…」と笑みを見せながら「私はすごい災難に遭って、苦労をしているから老けている暇がないの」と語っていた。

 「何もすることがないというのは、人間にとって、とってもつまらないこと」と岸さんは言った。1957年にフランスの映画監督イヴ・シャンピ氏と結婚。「相手の家が大変名門であることは知っていたんですが、行ってみたら料理人はいるし、お手伝いの人はいる。『何もしなくていいよ』と言われたことがショックでノイローゼになった」と振り返った。「何もしない」環境から自己主張をするため「フランス語を学ばなければダメだと思って夢中になってやりました」。必死で語学を勉強したことが、岸さんのパリでの生活を支えた。

 岸さんが生涯通した若々しさは、「夢中」の裏返し。人生の夕暮れにかかった虹を軽やかなステップで越え、岸さんは天上の人となった。

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