歌舞伎俳優の尾上松緑が、東京・歌舞伎座で「錦秋十月大歌舞伎」(20日千秋楽)の第3部「義経千本桜 渡海屋・大物浦」に出演している。

 歌舞伎三大名作のひとつ、「義経千本桜」の人気場面。

都を落ち延びるため、大物浦の船問屋・渡海屋で船出を待つ源義経一行。実は渡海屋の主人銀平は、壇ノ浦の合戦で死んだはずの平家の武将・平知盛。渡海屋での颯爽(さっそう)とした姿から一転、知盛が満身創痍(そうい)で繰り広げる大立ち回り、碇(いかり)を担いで入水する壮絶な最期が見どころとなる。

 2012年以来、14年ぶりに勤める松緑は「立役なら誰もが憧れる役。大きくて立派な人物だと意識してドラマチックに届けたい」。演じ分けが重要で「船宿の主としての世話っぽさ、これから戦に向かう大将としての貫禄、最後は血まみれで戦う。3つを演じ分けながら、ちゃんと同じ人物として見えないといけない」と意識している。

 祖父の2代目松緑、父の初代辰之助も得意とした紀尾井町(松緑一門)にとって大事な演目。「祖父はかっちりとした時代物のザ・知盛。父はリアルさに寄った知盛だった。時代物の大きさを祖父から、知盛の生々しさを父から感じていた。2人とも、すてきな知盛だった。

自分自身、3回目。両方の良いところを取り入れながら、自分の知盛を作っていけたら」と意気込んでいる。

 碇を担いで飛び込む場面が注目される。「慣れてしまうとケガをする。細心の注意を払いつつ、お客様には気にしているところは見せない。注目される場面ですが、そこにつなげていく過程も大事。うまくできないと、お客様の気持ちが盛り上がらない。最後の展開まで、うまくつなげていきたい」と気を引き締めた。

 典侍の局役の中村時蔵とは気心の知れた間柄。「彼は察してくれるので、心配は一切ありません。自分は不器用ですが、時蔵さんは器用なので、フォローしてくれる。信頼しております。

9月の『京人形』でも、何も言わなくても伝わる。そういう相手役はそうそういるものではない。緊張と緩和のバランスが大事。時蔵さんは俯瞰(ふかん)で芝居を見られる役者。手綱を握ってくれる。そこは時蔵さんに任せたい」と信頼を明かした。

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