毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。

今日扱う記事は、文科省が全国の博物館運営の基準を改正しました。

その改正で、博物館や美術館の収蔵資料の管理について明記された文言について、これでいいの?と、疑問を投げかけていた「こちら特報部」。

博物館・美術館収蔵品の文化財 廃棄も含めて検討⁉

どんなことが明記されたのか。東京新聞特別報道部、森本智之記者に聞きました。

東京新聞特別報道部 森本智之記者

「基本的に博物館の収蔵庫が満杯に近づいてるという現状があって、その収蔵資料を管理することについて『廃棄も含めて検討する』という文言が初めて入ったと。「廃棄」という言葉が初めて入ったというのが大きなポイントです。

だけど、これ議論の中で、有識者の委員とか博物館の学芸員らから、やっぱり廃棄するというのは問題じゃないかという声が多く挙がって、その結果『他の手段を検討して、やむを得ないと認められるときに慎重に廃棄というものを行う』という但し書きが入りました。

やっぱりドキッとしますよね、廃棄という言葉は。それと、ずっと文化財とか取材してきてると、収蔵庫が大変だという話は、別に今始まった話ではなくて、もうずっと前からずーっと言われていて、困った困ったという声はよく聞いていたので、ついにここまで来たかなというような感じですかね。」

収蔵品の文化財について、廃棄もアリ、と国が言ってるの?と、本当にビックリしました。さすがに議論の中で問題視され、かろうじて但し書きが加えられましたが・・・。

しかし、実際、収蔵庫不足は非常に深刻で、森本記者は、ある北関東の美術館の学芸課長から、実は地元の著名な画家が亡くなって、遺族から作品を地元の美術館に寄贈したいと申し出を受けたけど、収蔵庫がいっぱいで受け入れる余裕がなくて、すべて断ってしまった、という話を聞いたそうです。

地方の美術館にとって地元の芸術家の作品を保存して、みんなに見てもらうことは大事な役割なのに、その責任を果たせなかったと、とても嘆いていたそうです。

食べていくのに困るような話ではない・・・けれど!

結局それらの作品は廃棄されてしまったらしい、とのことですが、こういう話は珍しくなく、人知れず消えていく絵画や美術作品は結構あると思うとおっしゃる森本記者に、こうした現状について伺いました。

東京新聞特別報道部 森本智之記者

「収蔵庫が不足してるというのは、結局予算が無い中で四苦八苦してる状況の一つが、特徴的に出てきたっていうだけで、やっぱり全体とすると文化予算がかなり枯渇していて、もう青色吐息になってる、ということだと思うんですよね。

なんかよく、財務省とか予算を管理してる省庁の人を取材すると、食べていくのに困るような話じゃないじゃないかと、文化予算減らしたところで、例えば、人の命が絶たれるということはないんじゃないか、というようなことを聞くこともあるんですけども、人はパンだけで、パンを食べてれば生きていける、わけではなくて、やっぱり生きていくには薔薇も必要だろうと。

そういう考えを持って文化行政やってる人はやってると思うんですけども、なかなかそれが理解されなくて、やっぱり予算削減しようってなると、結構、文化予算ってすぐ切られちゃって、それが今続いてるという感じだと思います。」

結局、文化予算の先細りが問題、なんですよね・・・。

公立の館では、予算がなくて、新しい作品を買うこともできないし、意欲的な企画展も出来ない。結果、私立の館に人材が流れてしまっていて、公立の館は衰退の一途だと嘆く学芸員の方もいたり、総じて企画展の値段が高くなって、美術大学の先生からは、学生に勉強のために見てこい、と言えなくなったという話を耳にしたり、文化的なモノが手の届かないところに離れて行ってるように感じる。

原稿を書きながら、先行きが見通せなくて暗い話になっちゃったな、と思っていた森本記者でしたが、そんな中、新しい取り組みをしている美術館を見つけたのです!

稼ぎながら保存する 新しい収蔵庫!

その美術館、オランダのボイマンス美術館を取材した、ウェブ版「美術手帖」編集長の橋爪勇介さんに、どんな取組みなのか、教えていただきました。

ウェブ版「美術手帖」編集長 橋爪勇介さん

「何が新しいかというと、収蔵庫をまるごと見せてしまうっていう、これまでには無い試みなんですね。

いわゆる収蔵庫というのは、一般には絶対に公開されていないもので、我々メディアもそこに入ることはほぼ出来ないです。そういったところをお客さんに全て見せてしまおうというのは、発想の転換ですよね。

それを、例えば、ガラス越しに見せたり、見学ツアーを実施したりしていることで、作品が保管されている状態そのものを展示するという。ボイマンスで言うと、例えば、ずらーっと並んだ棚に有名作品が掛かってると、ガラスケース越しに見れる状態になってるので、普通のいわゆる展覧会のような形で、作品はそのまま見えちゃうっていうのが大きなポイントだと思います。そうです、保管と展示を両立するということですね。」

見せる収蔵庫というのは面白いですよね!

2021年に新しく「見せる収蔵庫」を建てました。有料の見学ツアーをして稼ぎながら保存する、というユニークな方法を打ち立てたのです。

美術館の展示のように、壁にかかってない絵画などは、裏側も見ることが出来て非常に面白いそうですよ。

宮城でも見せる収蔵庫 愛知では共同収蔵庫

ただ、収蔵庫をそれ用に作り直さないとできず、お金もかかりますから、簡単にウチも!とはならないかもしれませんが、今後の日本の収蔵庫不足問題の参考にはなりますよね、と橋爪さんに聞いたところ、こんな答えが返ってきました。

ウェブ版「美術手帖」編集長 橋爪勇介さん

「なりますね。実際のところ、今年、宮城の県立美術館も見える収蔵庫を作るんですね。この見える収蔵庫というのは、なかなか日本の美術館の、特に公立美術館ではほぼ前例が無いので、非常に注目すべきトピックかな、という風に思っています。」

日本でも始まっていました!宮城県美術館は来月6月20日にリニューアルオープン予定ですが、これは楽しみです。

他にも、見せる収蔵ではないですが、愛知県では、3つの美術館の共同収蔵庫を、県の予算で新設することが決まっています。単館でそれぞれ作るより、節約になりますからね。

こんな中でも、どこも色々と工夫してがんばっています。

我々ができることは、見に出かけて応援でしょうか。しかし、国にももう少し考えてほしいですね。


(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』より抜粋)

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