イギリスで今月23日、トラックの冷凍コンテナから39人の遺体が見つかった事件は世界中を震撼させた。密入国者と思われる39人は凍死したものと見られ、24日に死亡した全員が中国国籍であることが発表された。
しかしベトナムのある家族が、死亡した39人の中に自分の娘がいる可能性があることを話している。『The Guardian』『BBC News』『Metro』などが伝えた。

英エセックス州で現地時間23日の午前1時5分頃、ベルギーから輸送船で英テムズ川沿いのパーフリート港へ運ばれてきた冷凍コンテナをトラック運転手のモー・ロビンソン(Mo Robinson、25)が運転してきた車に接続し、パーフリート港を出発した。

『New York Post』によると、ロビンソンは出発して30分ほど走行した後、コンテナのドア内側にある書類を確認しようとロンドン郊外にあるグレイズのウォーターグレイド工業団地でトラックを停車させたという。

そしてコンテナのドアを開けたロビンソンは、恐ろしい光景を目にすることとなる。そこにいくつもの遺体があったことで彼はすぐ救急隊に連絡、救急隊員らが警察に連絡した。
その後ロビンソンは、事件に関わった可能性があるとして警察に逮捕されている。

冷凍コンテナの中で見つかった遺体は男性31人、女性7人、10代とみられる少女が1人の計39人で、コンテナにはマイナス25度まで下がる機能があり、凍死した可能性が高いという。警察の発表では、全員が中国国籍と伝えられた。

しかしこの39人のうち、何人かがベトナム国籍である可能性が出てきた。ベトナムのある家族が国外にいる娘のファム・ティ・トラ・マイさん(Pham Thi Tra My、26)からショートメッセージを受け取ったといい、そこには次のように記されていた。

「ママ、ごめんなさい。
私の海外の旅はうまくいかなかったわ。ママ、本当に愛してるわ。私もう死んじゃうみたい。息ができないの。ママ、本当にごめんね。」

そして自分の痕跡を残すためか、メッセージの一部には「私はベトナム、ハティン省のンゲンというタウンシップから来ました」ともあった。ファムさんがメッセージを送ったのはベトナム現地時間の23日早朝4時28分だが、英時間では22日午後10時28分で39人の遺体が発見される4時間前のことだった。


また『The Guardian』によると、ファムさんの家族は娘のイギリス密入国の費用として3万ポンド(約418万円)を斡旋業者に支払わねばならなかったという。そのため家族は家を抵当に入れなければならなかったようだ。

39人の遺体のうちファムさんがいたかは、ロンドンのベトナム大使館を通じて調べることになるもようだ。なおベトナムの若者の欧州への密入国について詳しいミミ・ヴー氏(Mimi Vu)は、中国経由で密入国する場合、業者から偽の中国籍パスポートを渡されることがあると述べている。

今回の事件について、いくつかのメディアでは中国を拠点とする犯罪組織「蛇頭(英語圏ではスネークヘッド:Snakeheadと呼ばれている)」の関与を示唆する声もあることを伝えているが、引き続き現地で捜査が行われているもようだ。

画像は『The Guardian 2019年10月25日付「Vietnamese family fears daughter may be among Essex lorry victims」(Photograph: Handout)』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 MasumiMaher)