11月になると多くの小学校では学習発表会が行われます。保護者世代の頃は劇が中心の学芸会の実施が主流でしたが、現在は合唱や合奏、劇や朗読会など様々な形で会が実施されています。
そこで今回は、オーディション主体の最近の学習発表会の実情をお伝えしていきます。
■どんな役を希望していてもオーディションを受ける
劇の役決めというと、かつては一部の児童が主役や準主役を希望し、希望者が複数いるとクジ引きやじゃんけんで決定するのが昭和流でした。毎年端役をしていた筆者は他人事のように、主役決めの成り行きを見守っていのを覚えています。ある年は、主役を嫌がるクラスの優等生を、先生が無理やり主役に決めていたこともありました。
しかし、現在は主役から脇役、そして目立たない端役でもオーディションが実施されています。筆者の子供達が通う小学校を例にすると、なるべく児童全員がいわゆる「楽な役」を第一希望にしないよう先生から指示されています。
そして、役に応じてオーディションを行う日が設定され、放課後、音楽室などで学年の担任の先生全員を前にして指定されたセリフを披露します。合否は数日後に学年全員を集めて口頭で発表されますが、どの子も当日までドキドキしながら過ごしているようです。
■希望していない役を任されることも
人気の高い役のオーディションは落ちる可能性が高く、受ける子供もそれを理解しています。惜しくも望んだ役に不合格となった場合、第二希望や第三希望に回されるのが理想的ですが、現実はそう上手くいきません。先に行ったオーディションで既に配役が決定していることがほとんどなのです。
筆者の子供達も、人気のある役を第一希望にしたものの不合格となり、予想もしていなかった役になったことがありました。本人は、本当にやりたい気持ちを持ってオーディションに臨みます。残念ながら落ちてしまい、その上一番嫌がっていた役に当たった年は、学習発表会へのモチベーションが下がっているのが手に取るようにわかります。
そばで見ていると何とも言えない気持ちになりますが、そういう時は、「自分の思うようにはいかないこともある」「与えられた役を頑張って来年またチャレンジしよう」と励ましています。
■オーディションの合否の基準は明らかではない
今の学習発表会の役決めで主流となっているオーディションですが、合否の基準はハッキリとしていません。オーディション後に先生達が話し合い、決定しています。
しかし、これまでの子供達の学習発表会を見ていると、目立つ役にクラス間で偏りがでないように配慮しているのを感じています。また、問題を起こしやすい子がメインの役を希望していると、オーディションを通っているようです。おそらく、仲間意識や責任感を感じてもらうため、あえて大きな役を任せていると思われます。
先生による合否の判断が明確ではないので、一部の保護者からは不満の声が上がることもありますが、大半の保護者は「みんなで頑張ることが大切」というスタンスです。興味深いのが、1年生のときから6年間を通じてずっとメインの役を任される子がいないという点です。
3年生では主役や準主役をしたけれど、高学年では準主役未満にする、というのが先生たちの間で暗黙の了解となっているような配慮を感じます。筆者の子供達が通う小学校では、目に余る依怙贔屓もこれまで見聞きしていないので、先生方も慎重に話し合って役を決めていると思います。
■高学年になると目立たない役をやりたがる子が増えてくる
低学年の頃は、多くの子供達がやりたい役に手を上げていましたが、成長するにつれて「恥ずかしいから目立つのは避けたい」と考える子が増えてきます。先生から「なるべく名前のある役のオーディションを受けるように」と言われても、高学年になると積極的に手を上げるのは決まったメンバーになっているようです。
低学年のときよりも重要な役が目立つ劇の内容になっており、「こんなに目立つのは避けたい」「本番で間違えると恥ずかしい」と考え、結果として決まったメンバーしか手を上げない状態になっています。
今年の5年生や6年生の発表を見ていても、中心的な役は活発な子や問題行動を引き起こす子が担当していました。端役の中でも、はきはきとセリフを言う子はメインの役を希望していたものの、残念ながら落ちてしまった子だったり、声の音量にも相当な差がありました。高学年になると低学年ではあまり気にならない、引っ込み思案の子とそうではない子が明確化してきます。
■役を気にせず年に1度の学習発表会を楽しもう
学習発表会は、子供達の成長を感じられることもあり、朝早くから会場となる体育館前には保護者の長蛇の列ができるのも珍しくありません。運動会の場所取り以上の熱の入れようです。特に低学年の発表は、孫を見ようと祖父母も来場することも多く、席の奪い合いになることもしばしばです。
それもまた発表会の風物詩の感もありますが、大人の争いを忘れて子供達が練習した成果を楽しみましょう。