■QDレーザが開発した視力を問わないアイウェア、医療にも応用へ
㈱QDレーザ(川崎市川崎区)は、先行発売していた網膜走査型レーザアイウェア「RETISSA Display」の法人向け受注分の出荷を開始すると同時に、初の一般個人向け受注を開始した。価格は税別59万8000円。
■視力に左右されずに映像が見られる
RETISSA Displayは、従来のスマートグラスと異なり、網膜に直接映像を照射して視力に左右されない映像が見られる製品。3原色レーザー光源からの微弱な光と、高速振動するMEMSミラーを組み合わせ、網膜上に映像を描き出すレーザー網膜走査技術「VISIRIUM(ビジリウム)テクノロジー」を採用している。眼鏡型のフレームに内蔵された超小型プロジェクターから、片眼の視野中心部(水平視野角約26度、アスペクト比16:9)に、HDMIで接続した機器からのデジタル映像を網膜に直接投影できる。
従来のスマートグラスは、映像部分を注視すると背景のピントがずれ、逆に背景を見ると映像がぼやけてしまうのが問題だったが、RETISSA Displayは映像と背景を同時にクッキリ見ることができ、AR(拡張現実)の実現に最適だ。目のピント調節機能の影響を受けないため、近視や遠視、乱視、老眼など視力に課題がある人でも矯正なしでクリアな映像を楽しむことができる(見え方には個人差がある)。
■量子ドットレーザーの実用化で受賞歴
QDレーザは、富士通㈱と三井物産㈱傘下のベンチャーキャピタルの出資によって2006年4月に富士通からのスピンオフベンチャーとして設立された。㈱富士通研究所と東京大学との10年以上にわたる産学連携による共同開発をもとに、可視光領域から波長1300nm帯までの量子ドットレーザーをはじめとする高性能半導体レーザーの開発・製造・販売を行っている。
ちなみに、量子ドットレーザーの開発では、材料科学技術振興財団(MST)から第16回(平成28年度)山崎貞一賞、一般財団法人光産業技術振興協会から第33回(2017年度)櫻井健二郎氏記念賞を受賞している。
また、網膜走査型レーザアイウェアの技術は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によるクリーンデバイス社会実装推進事業、平成27年度課題解決型福祉用具実用化開発支援事業などの支援を受けながら開発を続けている。QDレーザは、2018年1月に「RETISSA Displayを今夏から発売する」と発表し、4月から法人向けの受注を開始していた。
■視力補正に向けた医療機器も開発中
QDレーザは、RETISSA Displayと同じ技術を応用して、網膜の機能が失われていなければ、著しく視力が低い人でも映像を見ることができる医療機器の開発も進めている。2018年6月には、前眼部疾患(主に不正乱視)による低視力の方を対象とした国内臨床試験を開始した。
前眼部疾患による低視力状態は、網膜が機能しているにも関わらず、そこに正しく結像できないために発生する。ビジリウムテクノロジーを用いたレーザアイウェアは、眼の結像機能を使わずに映像を網膜に届けるため、カメラで撮影した映像を投影すると視力補正効果が期待できる。臨床試験は、医療機器としての安全性と有効性を確認するためのもので、東京と横浜のアイクリニック2施設で9月末までをめどに15人程度の被験者に対して試験を実施する予定だ。
(津村明宏)

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