先週の日経平均は、一時6万8,000円台まで急騰するも、週末にかけて失速。さらに、米国市場では、金利上昇や史上最大規模となるIPOを控えた換金売り観測から半導体・グロース株を中心に急落、日経平均先物も大幅安で取引を終えました。
先週の日経平均は一段高から失速する展開
6月相場入りとなった先週の日経平均株価ですが、週末5日(金)の終値は6万6,588円となりました。
前週末終値(6万6,329円)からは259円高と、単純な週末の終値比較では小幅高でしたが、週間の値動きを見ると、かなり振れ幅の大きい展開となりました。
<図1>日経平均の5分足チャート(2026年6月1日~6月5日)
図1は、先週1週間の日経平均の5分足チャートです。
週初の1日(月)に6万7,000円台へ株価水準を切り上げた日経平均ですが、翌2日(火)には6万5,000円台まで売りに押され、3日(水)には一気に6万8,000円台まで上昇しました。
そして、週末にかけては、4日(木)に6万7,000円台、週末5日(金)には6万6,000円台へと株価水準が切り下がるなど、慌ただしかった様子がうかがえます。週間の値幅(高値と安値の差)も3,235円と大きくなっています。
中東情勢の雲行きが再び怪しくなる中でも、旺盛なAI投資需要を背景とした買いが米国を中心に続き、日本株もその流れに乗る格好となりました。6万8,000円台までスルスルと上昇したのは、日経225オプション取引(6月限)のコール建玉が積み上がっていたことによる「ガンマ・スクイーズ(コールの売り方による加速度的なヘッジ買い)」の影響もあったと思われます。
ちなみに、6日(土)朝に取引を終えた日経225オプション取引のコールの買い建玉の状況を見ると、権利行使価格6万8,000円が4,500枚、7万円が3,565枚となっています。前週の建玉がそれぞれ4,470枚と3,238枚だったことを踏まえると、わずかながら増加しており、オプション取引のポジションだけで判断すれば、まだ先高観は維持されています。
そのため、先週までの流れが続くのであれば、今週末の特別清算指数(メジャーSQ)を控えて7万円台を目指すシナリオも残されてはいます。
とはいえ、先週末5日(金)の米国株市場の動きを見ると、ここ3週間にわたって続いた上昇基調は日米ともに分岐点を迎えることになるかもしれません。
急落した先週末の米国株市場から読み取るべき状況
実際に、5日(金)の米国株市場では、ダウ工業株30種平均(NYダウ)が前日比1.35%安、S&P500種指数が同2.64%安、ナスダック総合指数が同4.18%安と下落して取引を終えました。
3指数とも、週の後半に差し掛かるまでは揃って最高値を更新する動きだったこともあり、この週末の下落を「上昇一服」と受け止めることもできそうですが、視点を広げてみると、少し慎重に捉えた方が良いかもしれません。
<図2>米主要株価指数のパフォーマンス比較(2025年末を100)(2026年6月5日時点)
図2を見ても分かるように、先週末5日(金)の取引では、半導体関連銘柄で構成されるSOX指数の下落が目立っていることが分かります。この日は前日比で10.25%安と急落しています。
米国株下落のきっかけとなったのは、この日に公表された5月分の雇用統計の内容が強かったことです。
米連邦準備制度理事会(FRB)が担う役割として、「雇用の安定」と「物価の安定」があります。しかし、今回の雇用統計の結果を受けて、米労働市場が悪化していないことが確認できたため、当面の米国の金融政策は、「くすぶるインフレ懸念に対応すべく、利上げに向くのでは?」という見方が優勢となり、米10年債利回りなどの金利が上昇していきました。
一般的に金利の上昇はネガティブに働きます。とりわけ、AI・半導体関連銘柄などのグロース株にとっては、金利上昇によって許容できる株価収益率(PER)の水準が引き下げられる影響が大きくなる傾向があります。
さらに、今週末に米国で大型株式(スペースX)の新規公開(IPO)が予定されていることも売りに拍車を掛ける格好になったと思われます。巨大企業の上場は、上場時点ですでに株式市場全体に与える影響度も大きくなります。
機関投資家をはじめとする多くの投資家は、IPOに申し込む、もしくは上場後に購入する資金を確保するため、保有している資産を売却する動き(換金売り)が出てくることになり、こうした「IPO銘柄が市場から資金を吸い上げる」効果が株式市場の下落につながったとの見方も強まっています。
では、実際のところ、大型IPOによる資金吸い上げは、どこまで株価を押し下げるのでしょうか?
開示された書類(Form S-1)によると、今回のIPOでスペースXは約750億ドルの資金を調達する見込みとなっています。
<図3>米NASDAQ(日足)の動き(2026年6月5日時点)
図3はナスダックの日足チャートですが、先週末5日(金)の株価水準は、節目の2万6,000pを下回ったところに位置し、25日移動平均線も下抜けていることが分かります。
「このまま行けば、50日移動平均まで調整していく」というシナリオも考えられますが、図3のチャート上には、スペースXの書類(Form S-1)が開示された日である5月20日のところに矢印を記しています。
この日はちょうど2万6,000pの株価水準の位置でもあり、「いったんはIPOの詳細が開示された日の株価水準あたりまで下落し、様子をうかがっている」と読み取ることもできます。そのため、今週は「早い段階で2万6,000pを回復できるのか?」「もう一段階の下値を探りにいくのか」を見極めていくことになりそうです。
前者であれば、目先に訪れるかもしれない下落局面は「良い買い場」となります。
ただ、先週に決算を発表した米半導体大手のブロードコム(AVGO)の決算で業績見通し(ガイダンス)が市場予想に届かず、株価が急落したことや、生成AIを手掛けるアンソロピック社が、「AIが暴走するリスクに備えるため、開発の減速や一時停止できる安全面の仕組みが必要」と提言したことが話題となるなど、少なくともAIをめぐる状況や環境が変わりつつあることは意識しておく必要がありそうです。
このほか、ナスダックは6月1日に取引時間中の最高値を更新していますが、この日のMACDは上値が切り下がっていて、いわゆる「逆行現象」となっているため、足元の株価下落が続いてしまうサインが出ている点には要警戒です。
今週の日本株は水曜日の動きが焦点
また、こうした先週末の米国株市場の下落を受けて、日経225先物取引も下落で反応しています。
6日(土)朝に取引を終えた夜間取引(ナイトセッション)の終値は6万3,820円まで急落しているため、今週の日本株市場は一段安でのスタートが見込まれます。
仮に、今週の日経平均がこの日経225先物取引の終値まで下落するのであれば、5日(金)の日経平均終値から2,700円以上も下落することになるため、先物取引や信用取引などで多くの追証が発生することも考えられます。
その場合、追証を解消するため、建玉の整理や返済のための売りが出てくることも想定され、こうした動きが一巡する10日(水)以降に、株価が反発できるかが今週の争点になります。
<図4>日経225先物(大取)(日足)の多重移動平均線とMACD(2026年6月6日夜間取引終了時)
図4は、日経225先物取引の日足チャート上に多重移動平均線を描き、下段にMACDも掲載しています。
多重移動平均線とは、複数の移動平均線を描くことでトレンドの方向感や強さを探るために用いられます。強いトレンドが出ていれば、多くの移動平均線が同じ方向を向き、移動平均線の束も広がっていきます。
反対に、トレンドレスの場合は、移動平均線どうしの交差が激しく、乱雑な見た目となり、下落トレンド入りすると、株価が下限の線を下抜け、多くの移動平均線も下向きに転じていきます。
図4では、2日移動平均線から28日移動平均まで、2日間ずつ14本の移動平均線を描いています。6日(土)の夜間取引終了時点の株価は、多重移動平均線の下限近くの26日移動平均線のところで踏みとどまっている様子が確認できます。通常の移動平均線であれば、25日移動平均線あたりとも言えます。
そのため、25日移動平均線および多重移動平均線の下限の線をサポートにできるかが、注目されそうですが、下段のMACDがシグナルを下抜けるクロスが出現しているため、いったん下値を探る動きも想定されます。
金融政策イベントで複雑化も、TOPIXが支えとなるか?
これまで見てきたように、メジャーSQを前にした思惑と、相場下落時の追証解消の動きといった、需給への警戒感がくすぶる中、今週はこれに加えて、来週の日米の金融政策イベントをにらんだ動きや、ここに来て不安定になってきた中東情勢なども絡んでくることになり、相場環境は少し複雑化します。
今週公表の経済指標としては、国内では、1-3月期の国内総生産(GDP)改定値や、5月景気ウォッチャー調査、4-6月期の法人企業景気予測調査が予定されているほか、海外では、米国の5月消費者物価指数(CPI)と生産者物価指数(PPI)をはじめ、6月ミシガン大学消費者態度指数が公表されます。
先週末の米雇用統計は米国の利上げ観測を高める結果となりましたが、今週公表の経済指標で日米の金融政策に対する風向きが変わるかがカギになってきます。
したがって、しばらくは荒い値動きが続くことになりそうですが、日本銀行の利上げを織り込んで国内メガバンク株が高値圏まで上昇するなど、株価指数を押し上げることは出来なくても、AI・半導体銘柄が売られた際の受け皿となる銘柄が出始めてきていることはポジティブな材料になります。
実際に、先週末5日(金)の取引では日経平均が800円以上も下落しましたが、東証プライム市場で値上がりしたのが1,196銘柄だったのに対して、値下がりしたのが340銘柄と、値上がり銘柄の方が多く、引き続き出遅れ銘柄やバリュー株へ資金が流れていけるかも焦点になりそうです。
さらに、バリュー株については、6月後半にかけて株主総会が増えてくることも追い風になると考えられます。
直近までは、日経平均の強さが目立ち、NT倍率(日経平均÷東証株価指数(TOPIX))の値が跳ね上がっていましたが、TOPIXが踏ん張ることで、倍率が修正される動きも見据えて相場に臨む必要がありそうです。
(土信田 雅之)

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