先週は量子コンピュータ関連株が急騰する一方、半導体株の急落などAI関連株に陰りが見られました。今週は日経平均の急落でスタート。
今週のトピック:米国の大型IPO、5月CPI
日付 イベント 6月7日(日)まで ・米国・イランの攻撃が続き、和平交渉に暗雲 6月8日(月) ・2026年1-3月期GDP改定値 6月10日(水) ・米国で5月CPI・米国でオラクル(ORCL)が決算発表 6月11日(木) ・欧州中央銀行が政策金利決定
・米国で5月PPI 6月12日(金) ・先物・オプションの清算日メジャーSQ
・米国で6月ミシガン大学消費者信頼感指数・速報値
・米国で宇宙関連企業スペースXが新規上場
・米国の予想を上回る力強い5月雇用統計で逆に金利上昇、株価急落。米国・イランの交戦もあり、週明けの日本株は人工知能(AI)関連株を中心に急落する波乱の展開に。
・米国で5月消費者物価指数(CPI)、卸売物価指数(PPI)発表。急速な物価上昇が確認されれば金利上昇、株安の流れがさらに加速?
・来週15日(月)~16日(火)の日本銀行の金融政策決定会合での追加利上げ観測、16日(火)~17日(水)の米連邦公開市場委員会(FOMC)での金利据え置き予想でリバウンド上昇も限定的?
6月8日(月)の日経平均
前営業日比640円安の6万5,947円で続落スタート。米国株の大幅安、中東情勢激化の影響もうけて、一時3,181円安の6万3,406円まで下げ幅を拡大しました。後場になり6万3,900円台のマイナス圏でもみ合いをしています。(6月8日14時現在)
先週(6月1日~6月5日)の主要株価指数
終値 前週末比 前週末比率 日経平均株価 6万6,588円 +258円 +0.39% TOPIX 3,949.0pt ▲8.0pt ▲0.20% ダウ 5万866ドル ▲165ドル ▲0.32% S&P500 7,383pt ▲196pt ▲2.59% ナスダック 2万5,709pt ▲1,263pt ▲4.68%今週のマーケット:AI半導体株の利益確定売りが続く!週半ばの米国物価指標の発表が転換点に?
今週は先週5日(金)に米国株がAI半導体株を中心に暴落したため、日本株も急落する波乱の展開になりそうです。
週末には米国がホルムズ海峡にあるイランのレーダー施設を攻撃し、イランも中東の石油施設を報復攻撃するなど、ホルムズ海峡の開放が遠のいたことも景気敏感株などの下落に拍車をかけそうです。
5日の米国株の急落は、米国の5月雇用統計の非農業部門雇用者数が前月比17.2万人増と予想の8.5万人増をはるかに上回る力強い結果だったことが直接の引き金になりました。
堅調過ぎる雇用情勢を受けて、好景気によるインフレの加速や2026年内の利上げ懸念が高まったことで、ハイテク株が集まるナスダック総合指数は1日で4.18%安。昨年2025年4月のトランプ関税ショック以来の下落率に沈みました。
米国の主要AI半導体株を指数化したフィラデルフィア半導体株指数(SOX指数)は1日で実に10.26%も下落。これは2020年3月のコロナショック以来最悪の下落率です。
先週3日(水)には米国のAI半導体メーカー・ブロードコム(AVGO)が発表した2026年2-4月期の売上高が高い市場予想を超えられず、株式市場では競争激化によるAI関連株の業績停滞も意識され始めました。
今週の日本時間11日(木)には、米国のソフトウエア大手・オラクル(ORCL)の決算発表もあります。
また12日(金)は日本の先物・オプション市場の清算日「特別清算指数(メジャーSQ)」のため、通常、その前後で相場が乱高下しやすくなります。
同12日夜にはAI関連株でもある米国の宇宙関連企業スペースXのナスダック市場への新規上場も控えています。
今週、10日(水)発表の米国の5月CPIは前年同月比4.2%の伸び、11日(木)発表の5月PPIは同6.4%上昇と、非常に高い伸びになることが予想されています。
長期金利の指標となる米国の10年国債の利回りは4.45%台から5日(金)終値で4.53%台まで上昇しており、株価がいつリバウンド上昇するかの鍵は長期金利の動向や米国物価指標の結果次第といえそうです。
第4次産業革命と呼ばれるAIの進化・発展が今後も続く以上、AI半導体株もどこかで下げ止まる可能性が高く、今回の急落は押し目買いのチャンスかもしれません。
米国トランプ大統領が安全保障分野でのAI技術の活用促進を目指して、民間のAI企業の株式取得について企業幹部と会談するという報道もあり、AI相場の下支え役になりそうです。
また、5日(金)に急落した米国市場でもコカ・コーラ(KO)が前日比3.5%高、日用品世界大手のプロクター・アンド・ギャンブル(PG)が4.1%高となるなど、生活必需品系の高配当優良株は上昇しています。
AI半導体株の一極集中相場が崩れる中でも、原油高などの影響を受けにくくディフェンシブ性の強い高配当割安株などが「資金逃避」の受け皿になって底堅い展開になる可能性もありそうです。
注目イベント:来週に控える日米中央銀行の金利発表
5日(金)に発表された力強い5月の米国雇用統計は、イランとの戦争によるガソリン価格高騰などの物価高でも米国の雇用や景気が好調を維持していることを証明しました。
好景気が続いている以上、先週急落した株価もどこかで下げ止まるはずです。
ただ来週16日(火)には日銀の金融政策決定会合、17日(水)には米国FOMCが終了。
先週3日(水)の講演で日銀の植田和男総裁は「利上げの是非をしっかりと議論する」と発言し、6月利上げ観測が一挙に高まりました。
5日(金)の為替市場では1ドル=160円30銭まで円安が進み、株安につながる為替介入の警戒水準も近づいています。
一方、米国では中央銀行に当たる連邦準備制度理事会(FRB)の新議長に就任したケビン・ウォーシュ氏の下で初のFOMCが行われます。
トランプ大統領は堅調な雇用統計の発表を受けて、それでも「利下げを望む」と発言。しかし、堅調な雇用情勢が続く以上、17日(水)のFOMCでは金利据え置きが濃厚です。
一部の地区連銀総裁からは利下げどころか2026年中の早期利上げ発言も出ているため、17日(水)FOMC終了後のウォーシュ新議長の発言などが今週後半から意識されると、AI関連株のリバウンド上昇にも影響が出るかもしれません。
市場別マーケット動向
日本市場
5日(金)の米国株急落で日経平均先物(6月限月)の終値が前日比2,850円安(4.27%)の6万3,820円まで急落しているため、週初めの日本株市場はAI半導体株を中心に大きく下落しそうです。
週末の米国・イランの戦闘がさらに拡大するようなら、場合によっては日経平均が6万円の大台を一時的に割り込む恐れもありそうです。
先週は米国トランプ政権が強制労働対策の不十分な国に追加関税を課す案を公表。日本の税率は12.5%とされたことで、トヨタ自動車(7203)が前週末比6.3%安となるなど自動車株や景気敏感株の下落も目立ちました。
6月後半は3月決算企業の株主配当の支払いや株主総会が集中し、配当の再投資や株主総会での物言う株主による株主還元要求に注目が集まる時期。
こうした株価の下支え要因が、AI半導体株の調整と米国の追加関税やホルムズ海峡の封鎖継続による景気敏感株の下落という二重苦をどれぐらい緩和してくれるかにも注目です。
米国市場
米国市場もここまで上がり過ぎたAI半導体株の調整がどこで終わるかが今週の焦点です。
市場予想を下回る決算を発表したAI半導体メーカーのブロードコム(AVGO)は先週、前週末比14%安したものの、そのライバルでAI半導体の覇者・エヌビディア(NVDA)は株価の下落基調が続くものの、2.9%安で踏み止まっています。
また半導体メモリ株で4月以降の米国株の上昇をけん引したマイクロン・テクノロジー(MU)は11%安でしたが、4月以降の上昇は3月末比でいまだ2.5倍以上になっています。
半導体メモリ企業はAIデータセンター向け巨額投資という「実需」で業績自体は絶好調なだけに、「押し目買いのチャンスに乗り遅れたくない」という投資家需要がどれぐらい強いかを測る1週間になるでしょう。
12日(金)にはいよいよ宇宙関連企業スペースXが米国ナスダック市場に上場。ティッカーコードは「SPCX」に決まりました。
業種・銘柄の動き
銘柄 先週の騰落率 ポイント キオクシアHD(285A) +18.7% 先週はAI株乱高下の中で力強く上昇。今週の下げ止まりに注目 トヨタ自動車(7203) ▲6.3% 米国の追加関税報道で急落。
今週も中東情勢悪化で続落? オラクル(ORCL) ▲5.4% 先々週はソフトウエア株の見直し買いで17.5%上昇。
今週の決算発表に注目 エヌビディア(NVDA) ▲2.9% AI株の覇者として今週株価が下げ止まるかどうかに注目
先週までの振り返り:AI関連でも強弱きっ抗!銀行株が買われ、景気敏感株が売られる
先週前半の日本市場では、AI関連の周辺株の旺盛な物色が続きました。
村田製作所(6981)など積層セラミックコンデンサー株、富士通(6702)などソフトウエア関連株に加え、量子コンピュータ株、相場を主導する花形株キオクシアホールディングス(285A)に半導体メモリ製造に必要な特殊ガスを供給する関東電化工業(4047)など「新たな主役」も生まれました。
しかし、日本時間4日(木)の米国ブロードコム(AVGO)の市場予想に届かない決算発表をきっかけに利益確定売りが広がり、4日(木)と5日(金)にかけて急落。
個別株ではAIの計算能力確保に今後、必要不可欠とされる量子コンピュータ関連のテラスカイ(3915)が63.6%高、フィックスターズ(3687)が34.4%高と急騰。
主力のキオクシアHD(285A)が18.7%高、キオクシアHD関連の関東電化工業も13.0%高でした。
また株式5分割と自社株買いを発表した東京エレクトロン(8035)が13.4%高となるなど、5月にやや株価が停滞気味だった半導体製造装置株も盛り返しました。
その一方、半導体パッケージ基板のイビデン(4062)が18.4%安、AIサーバー向け銅箔の三井金属(5706)が13.8%安となるなど急落する銘柄も目立ちました。
先週の業種別上昇率1位だったのは日銀の6月利上げ観測浮上で収益向上が見込める銀行業セクターで、主力の三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)が7.3%高で上場来高値を更新。
一方、業種別下落率下位には、ホルムズ海峡の開放期待で先々週上昇した輸送用機器や原油高が収益圧迫要因になる建設業、空運業、繊維業など景気敏感株が並びました。
下落率ワースト1位は投資判断の格下げで7.8%安だった第一三共(4568)など医薬品セクターでした。
セクター・業種(上昇・下落)
銘柄 騰落率 備考・要因 銀行業 +5.71% 日銀の利上げ観測を好感 海運業 +5.55% 新たな資源や輸送ルート開拓期待で見直し買い 証券・商品先物取引 +3.23% 東証プライム市場の売買代金12兆円超えなど活況な株式市場を好感 輸送用機器 ▲5.09% 米国の12.5%追加関税報道で急落 医薬品 ▲5.66% 新薬不足や薬価引き下げなど構造的な問題で売られる(トウシル編集チーム)

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