西九州新幹線の佐賀県内未着工区間について、佐賀県と国交省が「幅広い協議」を実施。様々な懸念があり歩みが遅い状況でしたが、今回、新しい「進展」がありました。

そして国側に「三つの宿題」ができています。

佐賀県内を「フル規格」で3ルート試算

 建設に対する同意が佐賀県から得られず、先行き不透明になっている西九州新幹線の未着工区間(新鳥栖~武雄温泉)について2021年5月31日(月)、佐賀県の地域交流部長と国土交通省の鉄道局幹線鉄道課長が「幅広い協議」を実施。そこでひとつの進展がありました。

 国側は、未着工区間についても2023年秋の先行開業区間(武雄温泉~長崎)と同じ、乗換なしで時短効果の高い「フル規格新幹線」(東海道新幹線などの、いわゆる普通の新幹線)を新たに建設し、「全国新幹線ネットワーク」の効果を発揮させるのが適切としていますが、その場合、佐賀県側に多額の建設費用負担、在来線の利便性低下といった懸念があることから、同県はフル規格前提の話には応じられないとしています。

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西九州新幹線に導入されるN700S(画像:JR九州)。

 そうしたなか今回の協議では、佐賀県側から「フル規格について、県内ではルートに関し様々な意見があり、フル規格を提案するのであれば、(佐賀駅を通る現在の想定ルートの)北や南を行くルートについても試算を出してほしい」という話がありました。

 これに対し国交省の足立基成課長は、フル規格での試算になるため、「フル規格で建設した場合はどうかという議論をしようという佐賀県の意向があったかと思います」と、進展したという認識を示しました。

 現在、西九州新幹線をフル規格で建設する場合、佐賀駅を通るルートが想定されていますが、それに加えて南側の佐賀空港を経由するルート、佐賀駅の北側を経由するルートを検証するもので、赤羽一嘉国土交通大臣は6月1日(火)、「佐賀県からフル規格に関する具体的な提案があったのは初めてで、精力的に検討したい」と話しています。

 なお佐賀県側はこれについて、フル規格に舵を切ったものではないとしています。

国側にできた「三つの宿題」

 今回の協議では国側に、いわば「宿題」が三つできました。

 ひとつ目は、先述のフル規格による3ルート試算。二つ目は、在来線についてです。

 在来線の将来について議論することはフル規格での建設が前提になってくることから、佐賀県側は議論できないという立場を示していますが、今回の協議では、JR九州と国が議論した内容を聞かないわけではない、としました。

 これに対し国交省の足立課長は、地域に密着している自治体の意見を聞かないといけないとしつつも、「進展」と考え、今後、調整をしていきたいとのこと。

西九州新幹線 佐賀未着工区間が進展 フル規格での建設試算など「三つの宿題」とは

開発が断念されたフリーゲージトレイン(恵 知仁撮影)。

 三つ目は、線路の幅が違う在来線と新幹線、その両方を走れるフリーゲージトレインについてです。国が開発を進めていた最高速度260km/hのフリーゲージトレインは開発が断念されましたが、今回、佐賀県側から「最高速度200km/hではどうか。それなら所要時間もあまり変わらないのではないか」という提案がありました。

 国交省の足立課長は「技術担当に確認する」としましたが、もし技術的に200km/hなら可能となっても、別の懸念が発生します。最高速度260km/hでも、最高速度300km/hの山陽新幹線へ乗り入れるのは難しいと2016年にJR西日本の来島社長(当時)が話しており、「全国新幹線ネットワーク」の効果を発揮できないことです。

 国交省の足立課長は、「コロナ禍で変わることがあっても、人が移動して色々な出会いをしたい、体験をしたいというのは変わらないと思いますので、少しでも早く実現するために議論を加速させたい」と話しています。

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