新型コロナで緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が続き、なかなか遠出ができない昨今。海外旅行も「リモート」で楽しめるように、宇宙空間もリモートで訪れることが可能なようです。
地表から高度400kmほどを周回する有人宇宙基地ISS(国際宇宙ステーション)。ここには2021年6月現在、日本人宇宙飛行士の星出彰彦(ほしであきひこ)さんら、4か国7名のクルーが長期滞在中です。
400kmという距離は、東京と大阪の直線距離とほぼ同じです。東海道新幹線「のぞみ」に乗れば東京~新大阪間は2時間半ほど、運賃は1万3870円(自由席)で移動できます。一方、同じ距離でも宇宙になると、スペースX社のクルードラゴンを使った場合で所要時間は約23時間。運賃は、およそ60億5000万円(1ドル110円換算)です。同じ距離を進むにしても、宇宙はまだまだ一般人にはとても手が届かない場所といえるでしょう。
国際宇宙ステーション「ISS」(画像:NASA)。
ところが、一般の人でもISSの中をのぞいてみる方法があります。それは「Google Earth」、もしくは「Googleストリートビュー」を使うというものです。
・Google Earth
https://earth.google.com/web/@20.97062265,-71.0760298,-3157a,16580076.3262796d,35y,356h,0t,0r/data=Ci4SLBIgN2Y3ZTA1ZTg2Y2E1MTFlNzk5YzI1YjJmNTFhNjA3NTIiCG92ZXJ2aWV3?hl=ja
・Google ストリートビュー
https://www.google.com/maps/space/iss/@29.5604024,-95.0855631,2a,75y,203.72h,83.54t/data=!3m6!1e1!3m4!1sUA46_vIbk9kAAAQvxgbyMg!2e0!7i10000!8i5000
パソコンでGoogle Earthのリンクを開くと、宇宙空間に浮かんだ地球が大写しになった形で表示されます。
では、具体例として日本の実験棟「きぼう」を選んでみましょう。操作方法はGoogleストリートビューとほぼ同じです。
ISS日本棟「きぼう」の中はどんな感じ?前述の「国際宇宙ステーションを訪れよう」という一覧のなかから日本の実験棟「きぼう」をクリックすると、まず“到着”するのは正面エアロックが見える場所です。ここは実験装置や宇宙空間に放出する小型衛星を出し入れするところで、人間用はまた別の場所にあります。
マウスを動かし、“後ろを振り向く”と、隣のモジュール「ハーモニー」に通じる通路が現れます。進んでいくと、そこには宇宙飛行士のプライベートルーム兼寝室があります。電話ボックス程度のサイズであるこの場所、以前筆者(金木利憲:東京とびもの学会)はどんな感じなのか、講演会で日本人宇宙飛行士が話しているのを聞いたことがあります。
回答していたのは、若田光一(わかたこういち)さんと野口聡一(のぐちそういち)さんの両宇宙飛行士。「窮屈ではありませんか?」との質問に対し、「ほぼ無重力なので、6面すべてにモノが置ける。それほど窮屈には感じなかった」と答えていました。

ISSの実験棟「きぼう」の内部。
プライベートルーム兼寝室の先にあるのが、アメリカの実験棟「ディスティニー」です。ここには実験装置のほか、食事などが置かれています。さらに先に進むと「ユニティ」。船外活動(宇宙遊泳)に出るためのエアロックや、トイレのある第三結合部、宇宙ステーションで一番眺めが良い「キューポラ」に通じる通路になっています。
そこから先は、ロシアのモジュールになります。荷物がくくりつけられた通路を抜けると、ISSのなかで最初に宇宙空間に配置されたモジュール「ザーリャ」に入ります。製造国の違いもあって、壁の色や雰囲気が変わります。
ここを抜けると突き当たりのモジュール「ズヴェズダ」。ここでも食事や実験が行われています。
宇宙には上下ないため天井も床も区別なしISS内は、微少重力であることを活かして、地上では天井や床になるような場所含め、すべての壁面が何らかの装置の設置場所や物置として活用されています。こういった使い方は地上ではできない究極の空間活用かもしれません。

ISSの実験棟「きぼう」の内部。中央にいるのは若田光一宇宙飛行士、背後の白い円形の扉が実験装置や小型人工衛星を出し入れするエアロック(画像:NASA)。
ISSは2000(平成12)年11月2日に第1次長期滞在の宇宙飛行士を迎え、2021年6月現在は第65次長期滞在が行われています。Google EarthやGoogleストリートビューでISSの内部を見学してみると、様々な装置に混ざって食べ物やトイレなどが見え、使用感があるところから、20年以上にわたって途切れることなく人がいて、仕事と生活をしている場所だというのがわかります。
なお、2021年には中国が独自の宇宙ステーション「天宮」の打ち上げと組み立てを始めました。もし可能ならこの中も覗いてみて、ISSと見比べてみたいものです。
【動画で!】若田宇宙飛行士にISSを案内してもらおう