2015年10月、新たに横須賀へ配備され、自衛隊の観艦式にも登場したアメリカ海軍の空母「ロナルド・レーガン」。はたしてどのような経歴、そして能力を持つ空母なのでしょうか。
「一番近い空母はどこを航行中か?」
世界のどこかで大事件が発生した際、アメリカ大統領は必ず最寄りの空母の所在を尋ねるという逸話があります。我々、日本人が忘れ得ぬ日となった2011年3月11日の東日本大震災当日にも、オバマ大統領はそう発言したに違いありません。事実、震災発生から2日後の3月13日には、太平洋を航行中だった空母「ロナルド・レーガン」が日本近海に到着し、救難活動を開始しました。
「オペレーション・トモダチ」と命名された米軍の救難活動において、「ロナルド・レーガン」および、その他の米艦を発進したヘリコプターは3月13日だけで3万食の非常食を空輸、自衛隊へ引き渡すなど大きな貢献を残しました。そして「ロナルド・レーガン」は4月5日に撤退するまで、捜索・救出・空輸活動の貴重な洋上拠点として活躍します。
そして今年2015年、「ロナルド・レーガン」は神奈川県の横須賀米海軍施設へ配備されることとなり、9月3日にサンディエゴを出航。10月1日、新たな母港となる横須賀へ入港しました。そして到着早々、10月12日には初めての一般公開を行ったほか、10月18日には海上自衛隊の「観艦式」において祝賀航行を行うなど、すでに活動を開始しています。
米軍で2番目に新しい空母「ロナルド・レーガン」、その能力「ロナルド・レーガン」は世界最大の軍艦「ニミッツ級」原子力航空母艦の9番艦であり、全長は奇しくも東京タワーと同じ333m、満載排水量は自衛隊の空母「いずも」の約4倍となる10万1000トンを誇ります。
戦力の中核となる艦載機「CVW-5(第5空母航空団)」は神奈川県厚木基地に駐留し、F/A-18E/F「スーパーホーネット」戦闘攻撃機およびEA-18G「グラウラー」電子戦機が5個飛行隊約50機、ほかE-2C「ホークアイ2000」早期警戒管制機、C-2A「グレイハウンド」輸送機、MH-60R「シーホーク」哨戒ヘリコプター、MH-60S「ナイトホーク」多用途ヘリコプターからなります。
また作戦中は、数隻のイージス艦および原子力潜水艦と「空母打撃群」と呼ばれる艦隊を組み、ひとつの空母打撃群の戦力は地球上の大抵の国の空軍を凌駕します。
アメリカ海軍は10隻の空母を保有しており、「ロナルド・レーガン」以外の艦はアメリカ西海岸のサンディエゴ、東海岸のノーフォークいずれかを母港としています。
横須賀は唯一海外に存在する母港であり、米海軍にとって非常に重要な基地です。1973(昭和48)年に空母「ミッドウェイ」が初めて横須賀に配備されて以降、1991(平成3)年に「ミッドウェイ」退役に伴い「インディペンデンス」へ交代。1998(平成10)年に「インディペンデンス」退役に伴い「キティホーク」と交代。そして2008(平成20)年にやはり「キティホーク」退役によって、横須賀に初めて原子力空母「ジョージ・ワシントン」が配備されました。
ただ今回の「ロナルド・レーガン」への交代は、「ジョージ・ワシントン」の退役が理由ではありません。「ジョージ・ワシントン」は50年の運用寿命において25年目に必要となる燃料棒交換に伴うドッグ入りのため本国へ帰還。その後継艦として今回、「ロナルド・レーガン」が配備されたのです。
「ロナルド・レーガン」が観艦式に登場した意味強大な破壊力を持った空母は軍事的な意味合いだけではなく、ときに国家の象徴として平和裏に親交を温める役割を担います。例えば先に紹介した観艦式への参加です。観閲官の安倍内閣総理大臣は、そこでの訓示で以下のように述べました。
「本日はアメリカの空母『ロナルド・レーガン』も日米共同訓練の途中、姿を見せてくれました。東日本大震災のとき被災地にかけつけてくれた『トモダチ』であります。今月から横須賀を母港に再び日本の守りに就いてくれる。ありがとう。ようこそ日本へ。心から歓迎します」
「ロナルド・レーガン」の燃料棒交換は2026年頃の見込みであるため、順当ならばあと10年以上、「ミッドウェイ」に継ぐ歴代2位となる長い期間、横須賀を母港とし、安全保障上においてだけではなく、日本人にとって大切で馴染み深い“トモダチ”として活動し続けることになるでしょう。