京急の1000形電車の一部には、幅が10cmぐらいと妙に細長い窓があります。この「激セマ窓」は今後の新造車で廃止される予定です。
京急電鉄は2025年5月、今年度の設備投資計画を発表。車両面では、1000形電車を16両(8両編成2本)新造することを明らかにしました。今年度に新造される1000形電車から、これまでの車両にあった妙に細長い「激セマ窓」が無くなります。この窓、そもそもなぜ設置されたのでしょうか。
幅が10cmぐらいしかない「激狭窓」(乗りものニュース編集部撮影)
この「激セマ窓」は、2021年に登場した1000形1890番台「Le Ciel(ル・シエル)」から設置されており、運転室の後部に位置。その後に登場した新造車でも継承されてきました。高さこそ他の窓と同じ位置にあるものの、横幅は約10cmほどで、非常に細長いことが特徴です。
電車の窓が増えれば、車両メンテナンスの工数も増えることになります。古い車両では、側扉横の戸袋窓や妻面(車両の連結部)に窓が設置されているケースがありますが、最近の車両ではそうした部分の窓は廃止されるケースが多く、窓は減る傾向にあります。
わざわざ1000形電車に「激セマ窓」を設けた理由について、京急電鉄は「外光を取り入れるために設置した」(新しい価値共創室)と話します。
「激セマ窓」がある運転台後部には、進行方向を向いた座席が設置され、前面展望が楽しめる展望席となっています。
この場所に窓が無いと、展望席の横は単なる「壁」となってしまい、乗客が圧迫感を感じることから、非常に小さいながらも窓が設置されたというわけです。

運転室後部の小窓を廃止した今年度の1000形新造車のイメージ。京急電鉄によると、座席の形態については前回の新造車両と同様で、先頭部の展望席と車端部のクロスシートは設置するという(画像:京急電鉄)
ただ、それも今年度に新造される1000形からは見納めとなります。京急電鉄は、「激セマ窓」を廃止する背景について「車両を無塗装にすることと、デザインを考慮した」と話します。「座席の形態については前回の新造車両と同様で、先頭部の展望席および車端部のクロスシートは設置する」としており、名物の展望席自体は残るようです。
今年度に新造される1000形は、側面が塗装ではなく、環境に与える負荷を配慮してカラーフィルムになるそうで、これに合わせて仕様が変更された形です。
なお京急電鉄によると、今年度新造の1000形は「8両編成2編成ともに総合車両製作所(J-TREC)製で、1500形8両編成を代替する」としています。