洋上目標に命中! 陸自のミサイル射撃訓練を支えた無人機

 陸上自衛隊は2026年5月6日、フィリピンで実施された多国間共同訓練「バリカタン26」において、88式地対艦誘導弾の実弾射撃を行い、見事、洋上の標的艦に命中させました。

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 88式地対艦誘導弾は、1988(昭和63)年に部隊配備が開始された装備で、日本沿岸部に侵攻する敵艦艇を安全な内陸部の陣地から攻撃するために開発されました。

射程は200km程度とされ、発射後は慣性航法誘導により目標付近まで飛行し、最終的にはミサイル先端部のセンサーにより自ら目標を捕捉、命中させます。

 当初の運用構想では、沿岸部に展開する目標捜索用レーダーにより目標を発見し、攻撃する予定でした。しかし、近年ではより沖合を航行する艦艇を攻撃する必要が生じたため、航空機との連携による遠方での目標捜索が欠かせません。今回のバリカタン26では、その目標捜索用の装備として、陸上自衛隊の情報収集用無人機であるスキャンイーグル2が用いられました。

「UAV(中域用)」の名称で2019(令和元年)年より本格的な運用が開始されたスキャンイーグル2は、アメリカの大手航空機メーカーであるボーイング子会社のインシツ社が開発した無人航空機で、機体を分解することにより個人で携行可能な小型コンテナに収納できるなど、可搬性が高いのが特徴の一つです。

 機体性能も、任務に応じて換装可能な高性能光学・赤外線センサーを機首部に搭載しており、高い情報収集能力を有しているほか、小型・軽量な機体サイズながらも航続時間は20時間以上をほこります。そのため、地対艦ミサイルを射撃する際の目標捜索には、まさにうってつけの存在といえるわけです。

 スキャンイーグル2は現在、陸上自衛隊各師・旅団の情報隊や、方面情報収集隊への配備が進められています。また、悪天候時など視界不良の中でも情報を収集できるよう、今後はこれに合成開口レーダーを搭載した「UAV(中域用)機能向上型」の導入も進められます。

 スキャンイーグル2に関して、もう一つ特徴的なのがその離陸と機体回収の方法です。スキャンイーグル2では、機体を専用のカタパルトにより射出し、任務を終えると「スカイフック」と呼ばれるクレーン状の装置により展張されたワイヤーに機体をひっかけて回収します。

 しかし、この方式では機体射出用カタパルトと回収用装置をそれぞれ専用のトレーラーに載せ、車両によりけん引して移動させねばならず、また運用には一定の広さの開けた土地が必要であるなど、各種の制約を受けることとなりました。

「空中分離」で弱点克服! フネの上からも発進OK

 近年では、固定翼型無人機のこうした離着陸時の制約を緩和するため、機体に上昇・下降用のローターを取り付けたものも登場してきていますが、これでは巡航中にローターが無駄な重量物となってしまい、機体搭載量や航続時間に影響を及ぼすというデメリットも指摘されています。

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マルチコプター型ドローン「FLARES」と連携する「スキャンイーグルVTOL」の運用イメージ(画像:インシツ)。

 そこで、スキャンイーグル2を開発したインシツ社は最近、この課題に関する斬新な解決策を生み出しました。それは、垂直離着陸可能な無人機とのセット運用です。

「スキャンイーグルVTOL」と名付けられたこの運用形態は、スキャンイーグル2の機体をFLARESと呼ばれるマルチコプター型ドローンに取り付けて上昇させ、地上から約150m上空で切り離して発進させるというもの。回収時には、FLARESが回収用ケーブルを90m上空まで引っ張り上げ、これにスキャンイーグル2の機体をひっかけて回収します。

 これにより、従来必要とされてきたカタパルトと回収用のスカイフックが不要となり、システム構成品すべてを可搬式のコンテナに収めることができるようになりました。そのため、仮に陸上自衛隊がこれを採用すれば、これまでのようにトラックでカタパルト用トレーラーなどをけん引するのではなく、小型車両に機体やFLARESを収納したコンテナを搭載するだけで運用可能となります。

 システム全体がコンパクトになれば、それだけ展開能力や機動性も向上します。たとえば、離島などへの展開もより容易になるでしょうし、これまでは運用が難しかった森林地帯からも発進させることが可能になると思われます。

 また、狭い場所からの機体発進・回収が可能となるため、たとえば陸上自衛隊と海上自衛隊が共同で運用する「自衛隊海上輸送群」に配備される各種の輸送船舶や、今後導入の可能性が指摘されているCB90高速戦闘艇などからでも、運用可能なのではないかと筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は思います。実際、インシツ社ではスキャンイーグルVTOLを波で動揺する船舶から運用することにも成功しており、かつ風速30ノット(秒速約15m)という厳しい環境下でも機体の発進・回収が可能です。

 もしそうなれば、島しょ防衛の場面において、部隊に密着した形で上陸前の綿密な情報収集を実施できるようになるほか、特殊作戦部隊独自の高度な情報収集アセットとしてスキャンイーグル2を運用可能とする、新たな道を切り開くことも不可能ではないでしょう。

 陸上自衛隊での運用開始からすでに7年以上が経過したスキャンイーグル2ですが、「他力本願」ともいえる新たな運用法により、将来その活躍の幅をさらに広げられるかもしれません。

【これぞ“他力本願ドローン”!?】「スキャンイーグル2」とその新運用法を写真で見る(画像)

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