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昨年、1部リーグに在籍していたレガネスの本拠地ブタルケで、筆者は、レガネスと久保建英を擁したマジョルカとの一戦を取材している。スタジアムは最大収容人数約1万1500人と小さいサイズだが、そこで発生していた熱気は猛烈だった。
マドリード郊外にあるレガネスは、決して裕福なクラブではない。しかし、関わる人々の熱量は高かった。そのおかげで、栄えある1部の舞台で戦うことができていたのだろう。
何より、その熱量に選手が触発されていた。
チームとしては戦力的に苦しみ、2部に降格することになった。しかし、シーズン途中にユセフ・エン・ネシリ(セビージャ)、マルティン・ブライスワイト(バルセロナ)が"個人昇格"。そして2シーズン、レアル・マドリードからのレンタルで主力として戦った若手オスカル・ロドリゲスは評価を高め、セビージャへの移籍が決定。スペイン代表にまで選ばれている。
ブタルケは、選手が夢を見られる場所と言えるだろう。
日本代表MF柴崎岳(28歳)が、デポルティーボ・ラ・コルーニャからレガネスに移籍することが発表されている。移籍金はゼロで3年契約。まずは1部昇格を目指すことになるだろう。
では、柴崎は新天地レガネスでどのような役割を担うことになるのか?
柴崎は、スペインでの5シーズン目になる。そのプレーセンスは高く買われる一方、守備面の強度やパーソナリティに関しては厳しい見方もある。監督、チーム状況、カテゴリーのレベルによって、その評価は大きく変動する選手だ。
たとえば、昨シーズン昇格を狙ったデポルで、柴崎はアンケラ、ルイス・セサル・サンペドロという2人の監督には「使いどころが難しい」と、重用されなかった。しかし、フェルナンド・バスケスには「どのポジションでも、高いレベルのプレーができる」と、信頼されていた。
そしてリーグ戦42試合中、26試合に出場したわけだが、チームは結局、降格の憂き目を見ている(最終節、対戦相手のフエンラブラダに大量のコロナ感染者が出て試合が延期になった問題で、スペインサッカー連盟は変則的にデポルの残留を認めた24チームのリーグ戦を提案しているが、ラ・リーガはこれを拒否。
現状では、柴崎は起用法次第の選手と言えるだろう。外国人枠(2部は2人のみ)の問題もある。
ただし、レガネスでは大きなアドバンテージがある。
2020-21シーズン、レガネスを率いるルイス・マルティ監督は、柴崎の1年目、2部テネリフェで昇格を争った時の指揮官である。マルティ監督は、柴崎の長所、短所を熟知しているはずで、敵の戦い方とも合わせ、最善の起用ができるのではないか。
「左サイドの補強」(『アス』)、「トップ下、ボランチでプレー」(『マルカ』)と、各スポーツ紙の柴崎のプレー紹介は異なっているが、実際、起用法は多様なものになるかもしれない。
そもそも、レガネスはスクランブルでの発進となる。ハビエル・アギーレ監督は退任し、新たにマルティが指揮。昨季の主力で残るのは、GKイバン・クエジャル、右サイドバックのロベルト・ロサレス、センターバックのウナイ・ブスティンサなどごくわずか。
先日、0-0に終わったアルバセテ戦で、すでにプレシーズンマッチは終了。攻撃面では、柴崎とデポルで同僚だったFWサビン・メリノ、バルサで得点を記録したこともあるFWホセ・アルナイスが主力になるだろうか。
「チームはどんなカテゴリーでも戦える力を持っている」
キャプテンであるブスティンサは語っている。
9月11日、レガネスは本拠地ブタルケで、ラス・パルマスと2部開幕戦を戦うことになっている。新入団の柴崎にとっては"ぶっつけ本番"になるが、はたして――。