吉井理人×山本昌 新春スペシャル対談(中編)

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同級生の吉井理人監督(写真左)に対して、「頑張ってほしい」とエールを送る山本昌氏

【ロッテは総合力で勝つチーム】

── 2023年から、ついに「吉井ロッテ」が誕生します。山本昌さんは昨年の千葉ロッテマリーンズの戦いについて、どのように見ていましたか?

山本 たとえばすごい大砲がいるわけでもないなかで、「チーム力で勝つチーム」だという印象ですね。特定の誰かに頼るのではなくて、チーム全体として、総合力で戦っていくチームですね。

チーム打率は.231と高くはなかったけれど、しっかりとバントや進塁打で点をとっていく野球をしていましたね。

吉井 バッティングについてはさらなるレベルアップが必要だと痛感していますね。

山本 だけど、何といってもやっぱりピッチャーが楽しみでしょ。これまでピッチングコーチとして携わってきましたからね。佐々木朗希くんという超大型ルーキーがロッテに入った時に、「吉井コーチがいるところでよかったね」って言ったんです。実際に2022年は完全試合を達成して大きく羽ばたくわけだけども、ピッチャーに関してはどうですか。

しっかり数はいるように思えるけど。

吉井 たしかにそうですね。欲を言えば「もっと、もっと」と思うけれども、若い子たちもたぶんこれからもっと出てくると思うので、「なんとかなるかな」と思っている部分もありますね。実際に、面白いピッチャーが何人かいるんで、「その子たちがパーンと突き抜けてくれないかな」と思っていますね。

山本 当然、ピッチングコーチはいるけれども、監督ではあっても、コーチと一緒に話し合って投手のケアをするのか、それとも完全にコーチに任せるのか? この点についてはどうする考えなの?

吉井 本当はもう監督なので、コーチたちに任せたいけれども、たぶん我慢できなくて言っちゃうよね(笑)。

山本 投手指導は専門職だし、もともとはそこで実績をあげてきた人だからね。

指導歴は、今回のロッテで何球団目になるんだっけ?

吉井 ピッチングコーチとしては、ファイターズとホークスとマリーンズなんで、これで3チームかな。もちろん、監督としては今回が初めてだけど(笑)。

【突然の監督要請に驚き】

山本 ところで、監督の要請があった時はどんな気持ちだったんですか? 最初、「びっくりした」って言ってたよね。

吉井 本当びっくりした。「冗談言ってんちゃうかな」って思って。だから最初はまったく真に受けなくて、「ホンマですか?」って感じだったんですけどね。

山本 でも、一応ちょっと考えて、じゃあ、決めようと?

吉井 いや、まったく考えなかった。

だって、監督のオファーというのは野球人としたら、断る理由がないでしょ。僕の健康状態に重大な問題がない限り。実際に説明を聞いて、「本当なんだ」っていうところで、もう決めました。

山本 さっき、ピッチャーについては聞いたけど、問題はバッターですよね。まだ、キャンプも始まっていないけど、監督としてはやっぱり大砲が欲しいじゃないですか。どうしてもホームラン数が少ないから、日本人大砲を育てるのか、外国人選手を獲るのか、どうしますか?

吉井 球団フロントとしては、「若い選手を育てて、その子たちをホームランバッターにしてほしい」っていう思いがあるみたいなんですよね。

だから、自分としてはそっちに力を注ごうかなとは思っています。

山本 本拠地のZOZOマリンスタジアムは、ホームランが出にくい球場でもあるので、これは(中日の本拠地)バンテリンドームも同じなんだけど、やっぱり打って育てるっていうのはなかなか難しいと思いますね。ただピッチャーについては、すごく育ちやすい球場だと思うよね。まずは、吉井監督がビシッと投手陣を整備してくれると思うし、そこから打線についてじっくり腰を据えて育てていくのかな。そういう風に僕は見ていますね。

【2023年ロッテの見どころ】

── マリーンズは2025年までに常勝球団をつくり上げるための長期的プロセスを継続中ですが、この大命題を前任の井口資仁監督から引き継ぐことになりました。

この長期的な展望についてはどうお考えですか?

吉井 目標が曖昧ではなく、きちんとゴール設定してあるのは、すごくいいことだと思いますね。ただ、そこに行くまでのやり方というのはいっぱいあると思うので、今までの考え方にとらわれずに、固定観念を壊すためにも、自分だけのアイディアじゃ無理なので、いろんな人の意見を聞いて、うまくつくり上げていきたいなと思っています。

山本 パ・リーグってすごくレベルが高いじゃないですか。そのなかでマリーンズは、力はあるのに、なかなか勝ちきれないところにいますよね。だから「勝ちきる」っていうのが大事になるんじゃないかなと思うんです。これまでのマリーンズは、リーグ制覇して、でんと待ち構えたままクライマックス・シリーズを戦うのではなく、「下剋上」で勝ち上がっていくイメージですよね。

だから、ぜひリーグ制覇して、堂々と待ち受けてほしい。そんな思いは強くありますね。

吉井 そうなんですよ。マリーンズのパ・リーグ優勝は05年以来になるんだけど、それもプレーオフでの優勝。その前の74年は前期、後期制のプレーオフ制での優勝だったので。もう長いことパ・リーグでリーグ1位での優勝(1970年から)をしてないので、まずは「リーグ制覇」を実現しなければという思いは強いですよ。

山本 そう、日本一にはなっているんだけれども、CSを勝ち上がっての日本一なんでね。やっぱり、リーグ制覇してZOZOマリンスタジアムで待ち受けて、堂々とCSファイナルステージを勝ち上がって、日本シリーズっていうのをぜひ実現してほしいなと思いますね。

── あらためて、吉井監督に2023年ロッテの見どころ、そして抱負をうかがいたいと思います。

吉井 見どころは若い選手ですね。伸び盛りの若い選手の活躍を見てほしいなと思います。それもちょっとずつ活躍するんじゃなくて、バーンと突き抜けるような選手が何人か出てきてほしいなと思っています。もちろん、(佐々木)朗希もまだ突き抜けてないし、トミー・ジョン明けの種市(篤暉)。で、3年目の中森(俊介)というピッチャーがいるんですけども、彼らはすごくいいです。野手だと安田(尚憲)、山口(航輝)、藤原(恭大)。このあたりが突き抜けてはいないので、彼らの大活躍を期待してくれたらいいかなと思っています。彼らが活躍しないと勝てないと思うので。

山本 いま監督から名前が挙がった選手を聞いていると、ロッテのドラフトはすごく成功していますよね。いい選手をきちんと獲得しているので、化ける可能性はすごく高い。そこに、僕も期待したいですね。

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吉井理人(よしい・まさと)/1965年、和歌山県生まれ。箕島高時代は甲子園に2度出場し、83年ドラフト2位で近鉄に入団。4年目の87年にプロ初勝利を飾り、5年目はリリーフとして50試合に登板して10勝2敗24セーブの活躍を見せる。95年の開幕直前にトレードでヤクルトに移籍。先発に転向して3年連続2ケタ勝利を挙げる。97年オフにFAでメッツに移籍。その後、ロッキーズ、エクスポズでもプレーし、メジャー通算32勝をマーク。帰国後はオリックス、ロッテでプレーし、07年に現役を引退。引退後は日本ハム、ソフトバンク、ロッテでコーチを務め、23年からロッテの監督を務める。

山本昌(やまもと・まさ)/1965年、神奈川県生まれ。日大藤沢高から83年ドラフト5位で中日に入団。5年目のシーズン終盤に5勝を挙げブレイク。90年には自身初の2ケタ勝利となる10勝をマーク。その後も中日のエースとして活躍し、最多勝3回(93年、94年、97年)、沢村賞1回(94年)など数々のタイトルを獲得。06年には41歳1カ月でのノーヒット・ノーランを達成し、14年には49歳0カ月の勝利など、次々と最年長記録を打ち立てた。50歳の15年に現役を引退。現在は野球解説者として活躍中。