山本昌×岩瀬仁紀 開幕直前スペシャル対談(前編)

 50歳まで現役を続け、通算219勝をマークした山本昌と、通算1002登板、407セーブの金字塔を持つ岩瀬仁紀。中日OBの伝説的サウスポーがヒザを突き合わせ、2023年の野球界について語り合う「レジェンド対談」を今季も実施。

まずはコマがそろって楽しみな中日投手陣について、激論を交わした。

山本昌×岩瀬仁紀が語り尽くす2023中日投手陣「2ケタ期待は...の画像はこちら >>

2023年の中日の開幕投手に指名された小笠原慎之介

【不安は大野と柳の「内弁慶」ぶり】

── まずは2023年の中日ドラゴンズの戦力について、おふたりにお聞きします。投手陣に関しては、かなり充実しているのではないでしょうか?

山本昌 2ケタ勝利が期待できる先発投手が4~5人いて、リリーフ陣も揃っています。投手陣で貯金を稼げれば、十分に戦えるでしょう。今のところ投手陣で大きな故障者はいなかったかな?

岩瀬 うーん、藤嶋(健人)が太もも肉離れで離脱してしまいましたが、目立つのはそれくらいですね。

山本昌 それは痛いけど、12球団を見渡しても開幕ローテーション候補の名前が6人もスッと挙がるのなんて中日くらいだからね。4本柱(大野雄大、柳裕也、小笠原慎之介、髙橋宏斗)に今年は涌井(秀章)もトレードで獲得して。

試合をつくってくれる松葉(貴大)もいるし、若手にも楽しみな投手が多い。抑えのライデル(・マルティネス)とセットアッパーのジャリエル(・ロドリゲス)が、WBCキューバ代表から復帰するのに時間がかかっているのが不安材料かな。
※ジャリエル・ロドリゲスはWBCのあといまだ来日せず、亡命も噂されている

岩瀬 ライデルは大丈夫でしょう。ただ、ジャリエルはキューバ代表で先発をやっていたので、調整に時間をかけるかもしれませんね。

山本昌 今年は小笠原、髙橋といった伸び盛りの投手がやってくれるでしょう。他球団のコーチもこのふたりを相当警戒していた。

小笠原は開幕投手に指名されて、自信をつけている。髙橋もWBCの侍ジャパンに入って、超一流の投手と交流するなかでいい刺激を受けたはず。今シーズンは投手として、一段上のステージに行けるんじゃないかな。

岩瀬 逆に宏斗はWBCでリリーフをしていましたから、まずはファームで長いイニングを投げてから一軍に上げるんじゃないですか。

── 小笠原投手に関しては、岩瀬さんは以前から期待ゆえの辛口コメントを寄せていました。

岩瀬 彼がプロに入ってきた時の、あのすごいボールを見ているので。

だからもっと勝てるピッチャーになれると思っていました。今年のキャンプでの「自分が引っ張っていくんだ」という行動や姿勢を見ても、やっとカラを破り始めているなと感じます。この世界は自信をつけることがすべてなので。

山本昌 あえて不安要素を挙げるとすれば、大野と柳がバンテリンドーム以外でなかなか勝てない「内弁慶」というところかな。大野は広島のマツダスタジアムで8年以上も勝っていないそうだから。

岩瀬 柳は悪くなると止まらないところがあるので、心配はそこですね。

── 新加入の涌井投手はどうですか?

山本昌 順調ですよ。オープン戦では「はじめチョロチョロ」という感じですが、そこはベテランですから。僕もオープン戦ではボコボコにされるのがデフォルトでした(笑)。感心したのは、キャンプ初日にキャッチャーミットを持ってキャッチボールをしていたところ。ピッチャーのボールを普通のグラブで捕ると、痛いですからね。あぁ、落ち着いているし、早くもチームに打ち解けているなと感じました。

【リリーフ陣のカギを握る清水達也】

── 岩瀬さんの目から見て、今年のリリーフ陣はどうでしょうか?

岩瀬 他球団より揃っていますよね。カギは清水(達也)になるんじゃないかと。去年の反動がくるのか、完全に自信をつけるのか。ここまであまりにも順調にいきすぎてきましたから。

山本昌 7~9回を清水、ジャリエル、ライデルで計算できるのは大きい。ビハインドの展開でも祖父江(大輔)がいるし、DeNAから砂田(毅樹)も入ってくれた。

でもまあ、去年も充実した投手陣で最下位に沈んでしまったんだけど......。

岩瀬 やっぱり、点をとらないと勝てないですよ。

山本昌 まあ、最下位といっても借金は9だったから。

岩瀬 ちょっとしたことでAクラスになれます。

山本昌 たとえば勝ちを3個拾えていたら、借金は6も減る。借金3だったら、去年ならAクラス争いができていたわけだから。

── 昨年から投手転向した根尾昂投手に関してはどうでしょうか?

山本昌 鳥取まで取材に行ったんですけど、その時はめちゃくちゃよかった。

岩瀬 ただ、まだ自分の持っているものを制御しきれていない感じはします。

山本昌 そうそう。彼のポテンシャルからすれば、まだまだこれから。昨年は転向1年目で順調にいきすぎていたので、まだ若いんだからピッチャーにどっぷり浸かって思いきり勉強するのもいいと思います。

── では、おふたりの期待の若手ピッチャーは誰でしょうか?

山本昌 去年に一軍でも投げた上田(洸太朗)はゲームメーク能力があるし、福島(章太)もいいボールを投げています。高卒3年目のふたりのサウスポーは楽しみです。あとはドラフト1位ルーキーの仲地(礼亜)ですね。どう見ても先発タイプ。

岩瀬 仲地が一番期待度は高いのかなと感じます。立浪(和義)監督としても、自分で獲ってきたドラフト1位ですからね。

山本昌 ドラフト後に「2位で獲れたんじゃないか?」という声もあったけど、他球団の関係者に聞いたら「仲地を外れ1位候補に入れていた球団が複数あった」という話なんだよね。オーソドックスなフォームで平均球速もまずまず速くて、あとは絶対的な決め球を習得できるか。顔も爽やかだし、「一本釣りしてよかった」と言われる存在になってほしいですね。

中編:「中日の貧打線は解消されるのか?」はこちら>>