昨年、新井貴浩新監督のもと5年ぶりとなるAクラス入りを果たし、クライマックス・シリーズに出場した広島。3月6、7日に開催される侍ジャパンと欧州代表とのテストマッチに、12球団最多となる5人の選手を送り込むのは、若い力が伸びてきている証拠だ。

なかでも、新井監督が期待を寄せるひとりが小園海斗だ。

 藤原恭大(ロッテ)、根尾昂(中日)の大阪桐蔭勢や、金足農のエース・吉田輝星(日本ハム→オリックス)といった甲子園を沸かせた球児たちが席巻した2018年秋のドラフトで、報徳学園から広島に1位指名を受けた金の卵は、期待どおり1年目から58試合に出場するなど大器の片鱗を見せた。

「日本一の遊撃手へ」広島・小園海斗の調整は順調 不動のレギュ...の画像はこちら >>

【昨年秋に初の侍ジャパン入り】

 あれはルーキーイヤー、2019年のオープン戦のことだった。首脳陣は英才教育を施すため、一軍キャンプに抜擢し、3月からのオープン戦にも帯同させた。キャンプ打ち上げ後の最初の遠征となった佐賀、長崎の試合で、首脳陣は実戦で結果を残せていなかった小園の"二軍降格"のタイミングを見計らっていたという。

 初戦、途中からショートの守備に就いた小園は、最初の打席で凡退するが、セカンドライナーとなった打球は強烈な当たりだった。そして最終打席で右中間フェンス直撃の二塁打を放つ。

 翌日の試合も途中出場だったが、ここでホームランを含むマルチヒットを放ち、一軍残留を決めたのだ。高卒ルーキーがオープン戦でホームランを打ったのは、2013年の大谷翔平(当時日本ハム)以来のことで、清原和博松井秀喜ですら成し得なかったことだ。

 しかしその後は、順風満帆とはいかなかった。

 58試合でホームラン4本を含む40安打を放った1年目の成績は、高卒ルーキーとしては及第点だったが、2年目はファームで3割を記録したものの、一軍出場はわずか3試合にとどまった。それでも2021年はレギュラーポジションを奪取。規定打席到達を果たし、3割まであと少しの打率.298をマークした。

 高卒3年目でのポジション獲得は、2018年ドラフト組のなかでは出世頭と言ってよかった。翌年も打率こそ落としたが、127試合に出場。広島のショートストップは、しばらく安泰かに思えた。

 だが昨年は開幕から絶不調で、一時期、田中広輔にポジションを奪い返されることとなった。それでもシーズン後半になると打撃も復調し、打率も.286まで上げてシーズンをフィニッシュ。プロ入り後、初めてジャパンのユニフォームに袖を通して臨んだアジアチャンピオンシップでは、優勝を味わった。

【日本一の遊撃手への挑戦】

 プロ6年目のシーズンに挑む小園だが、ここまで順調な仕上がりを見せている。

 2月21日に行なわれたDeNAとの練習試合では、3番ショートでスタメン出場。初回二死ランナーなしの場面でソフトバンクから移籍しローテーション入りを目指す森唯斗からライト前にヒット。つづく3回に巡ってきた打席でも、同じく森からライト前に弾き返し、その後、ベンチに退いた。その扱いは、完全に主力選手のそれだった。

 ルーキー時代のように、キャンプ中の練習試合でアピールする必要もないのだろうが、いとも簡単にヒットを放つあたり、調整が順調にいっている証拠だろう。

 試合後、小園は2安打を放ったことに「まあまあ順調にきています。あとはこれを開幕まで維持したいですね」と納得の表情を見せた。

 侍ジャパンに招集されているため、キャンプ打ち上げ後に一旦チームを離れることになるが、「試合が続くのは一緒なんで」と気にする様子はなかった。

 例年スロースターターで、昨年はそれが裏目に出た形となったが、侍ジャパン合流のため特別調整を早めたわけでもないというその言葉からは、普通にやっていれば結果はついてくるという確固たる自信すら感じさせる。

 もうショートのポジションは誰にも渡さないという気持ちなのかという問いに、きっぱり「そうですね」と返すその視線の先には、「日本一のショート」という目標があるのだろう。

 現在、日本球界を代表するショートと言えば、西武の源田壮亮の名前が挙がるが、もう打力の点では小園が凌駕しているかもしれない。

今季、小園にはショートを守りながら打率3割超えが当然のように期待される。それをクリアすれば、広島だけでなく、侍ジャパンでも向こう10年、ショートの心配はなくなるだろう。