2023年のプロ野球ペナントレースが開幕した。巨大戦力を誇り、毎年優勝を義務づけられている巨人の新戦力の目玉と言えば、オコエ瑠偉だ。


 
 昨年末、各球団が提出した選手が指名対象となる「現役ドラフト」で、巨人は楽天からオコエを獲得した。毎年、ケガによる離脱もあり、巨人移籍後もキャンプをこなせるのか心配する声もあったが、いざフタを開けてみれば紅白戦、オープン戦で13試合連続安打を記録するなど存分にアピール。ついに開幕スタメンの座を勝ちとった。

 史上3人目となるセ・パで日本一の監督(ヤクルト1回、西武2回)となった球界のご意見番・広岡達朗は、オコエのこれまでの活躍に不安を拭いきれないでいる。

広岡達朗は巨人・オコエ瑠偉に「身体能力の高さは一軍クラス」と...の画像はこちら >>

昨年末の現役ドラフトで楽天から巨人に移籍したオコエ瑠偉

【巨人のプレッシャー】

「たしかに、ここまでのオコエはよくやっている。でもこれだけいい選手なのに、なんで楽天から出されるんだという疑問がある。当然、なにか欠点があったから出したのだろう。

人間だから、チームの状況、内部事情によって合う、合わないというのは出てくる。たとえば、自分に合ったコーチに出会ったことで大きく化けることだってある。ただ、巨人の歴史のなかで、今まで他球団からきて大化けした選手がいるのか」

 広岡の言うとおり、トレードで巨人にきて一時的に活躍した選手はいたが大化けしたのは皆無であり、FAで移籍してきたケースを見ても大きく飛躍した選手となるとわずかしかいない。たとえば、落合博満工藤公康小笠原道大丸佳浩にしても、その成績は前年度と同等、もしくは微増といった程度である。

 巨人にくると、想像以上のプレッシャーによって押しつぶされて、本来の力を発揮できずにいる選手は少なくない。勝てば官軍、負ければ賊軍と手のひらを返したように叩かれるのは、もはや巨人に在籍する選手にとって宿命でもある。

大田泰示(現・DeNA)のように真面目で能力があっても、プレッシャーから本来の力を出せなかったりする。楽天時代のオコエについて聞くと、能力はあるけど、自分の思いどおりにいかないとすぐにやる気をなくしてしまう性格だという。そういった選手は、厳しい環境のもとで真面目に野球を取り組むことによって、本来の力を発揮できるという考えも一理ある。だが、あくまでも考えであって、それが答えではない」

【脚力と守備力は一軍クラス】

 関東一高時代から抜群の身体能力を誇るオコエは、2015年のドラフトで楽天から1位指名を受け入団。ルーキーイヤーから開幕一軍を果たすなど将来を嘱望されていたが、本業の野球よりもグラウンド外のほうで注目を集めてしまった。

 ルーキーイヤーにV字のモヒカン頭でキャンプインしたり、年俸を超える高級車を購入したり、とにかくプライベートで話題を振りまき、マスコミの格好のネタにされた。

そうしたオコエの行動に対して、「野球に集中していない」「一人前の選手になってからやるべき」といったマイナスなイメージがつきまとった。

 楽天時代から野球以外の話題があまりに目立ったため、素行が悪いという評判が立つのは否めない。広岡が言及する。

「人間そうそう変われないよ。短期間ならなんとか取り繕っていられても、長くは続かない。オープン戦の成績がよかったかもしれないけど、シーズンを通して公式戦で使える保証はない。

実際、毎年オープン戦はいいけど、シーズンに入るとまったく打てなくなる選手をたくさん見てきた」

 オープン戦の成績は目安にはなるが、あてにならないというのは定説だが、先述したように環境の変化によって飛躍的な活躍をする選手がいるのも事実。とくにオコエの場合は、環境を変えたい一心で、楽天から出ることを望んでいたという。

「素質に関して言うと、関係者から解説者まで口を揃えて絶賛する。あの脚力と守備力はたしかに一軍クラス。ただ調子がいい時はいいけど、悪くなった時に悪態とかつかなきゃいいけど......。そもそも、調子のいい悪いで気持ちがぐらつくこと自体、プロとして失格なんだ。

とにかく1年を通して、気持ちを切らすことなく働いて、成績を残せれば本物だ。これまでまともに一軍でプレーしていない選手が巨人に来て、どれくらいの活躍をするのか見ものだ」

 4月4日のDeNA戦でもオコエは「1番・レフト」で出場し、2安打、1得点の活躍でチームの3連勝に貢献した。はたして、想像を超える活躍で巨人の歴史に爪痕を残すことができるのか。オコエから目が離せない。