高木豊が予測する2023年のFA戦線

セ・リーグ選手編

 11月6日にフリーエージェント(FA)宣言が解禁。FAの行使にあたっては14日までに球団に申請する必要がある。

すでに山崎福也(オリックス)や平井克典(西武)がFAを宣言したが、今オフは各球団の主力級の選手たちがFA権を取得しており、その動向に注目が集まっている。
 
 かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に、まずはセ・リーグのFAについて展望してもらった。

セ・リーグ選手のFA戦線を高木豊が予想 出場減の巨人・中田翔...の画像はこちら >>

【田口はヤクルトに残るのがベスト】

――まずセ・リーグのピッチャーからお聞きします。今季リーグ2位の33セーブを挙げた田口麗斗投手(ヤクルト)はいかがですか?

高木豊(以下:高木) ヤクルトに残るのがベストだと思います。今年に抑えのポジションを確立できたということもありますが、ヤクルトは左ピッチャーが少ない。どのチームも抑えのピッチャーはある程度いますし、仮に移籍したとしても中継ぎで使われると思うんです。

 そのほうがいいと田口が思うのであればFAでどこに行ってもいいと思いますが、せっかく「抑えをやりたい」ということで頑張って、タイトルに手が届きそうなところまできた。

抑えを長くやりたいのであれば、ヤクルトでプレーしたほうがいいと思います。

――仮に他球団に移籍すると考えた時に、フィットしそうなのは?

高木 楽天でしょうか。抑えの松井裕樹がメジャー移籍で抜けることになれば、そこを埋める存在になりうると思います。ただ、それもまだわかりませんからね。ヤクルトに残れば、外国人次第ではありますが来年も抑えを任されるはず。他球団の話も聞いてみたいでしょうけど、ヤクルト側も引き留めるために誠意を見せると思いますよ。

【広島・西川が移籍するなら巨人もいいかも?】

――続いて、石田健大投手(DeNA)はいかがでしょうか。今季は5年ぶり3度目の開幕投手を務めるなど23試合に登板しましたが、勝ち星には恵まれませんでした(4勝9敗)。

高木 今永昇太がメジャー移籍で抜けるかもしれませんが、東克樹もいてDeNAの先発の左投手としては3番手。そのポジションを、本人がどう考えているかですよね。チームとしては、いてくれたほうがいいですよ。試合を作れるピッチャーですし、今年に勝ち星がついてこなかったのは打線との絡みなので。10勝する力は持っていると思います。

 ただ、石田は環境を変えたほうがいいかもしれません。現状では10勝しても10敗してしまう感じで、リリーフをやっていた時期もありますが、ここ数年は勝ち星を伸ばせていません。環境を変えたら、また違った新たな石田が見られそうな気もします。

――ソフトバンクが動向を調査中という報道も出ています。

高木 環境を変えるという意味では、パ・リーグの球団に移籍するのはいいと思います。バッターが慣れていない環境でやるのが一番かなと。

――続いて野手についてですが、今季、セ・リーグ2位の打率.305をマークした西川龍馬選手(広島)はいかがでしょうか?

高木 彼の性格は「我が道を行く」という侍のような感じですが、広島は4番として起用したり、ケガ明けでもすぐに主軸で使ったりと、大事に扱っている印象があります。彼がそれをどう感じていたのか、ということになると思いますが、違った環境で己を高めたいと思うのであれば、獲得調査に動いているというオリックスは面白いと思います。

――今年は単年契約でしたが、残留の可能性についてどう見ていますか?

高木 あると思いますよ。残留する場合は複数年契約になるでしょうね。今年に単年契約にしたのは、新しく新井貴浩監督になったので「どう起用されるんだろう?」と様子を見たかったのかもしれません。その点では優遇されていたと思いますが、判断材料としては金銭的な部分も大きいでしょうし、他球団が広島より金額が大きいとなれば、評価が高いほうを選ぶ可能性はあるでしょうね。

――ソフトバンクも獲得調査に動いていると言われています。

高木 対ピッチャーのことを考えると、外野陣の層が薄い巨人もいいかもしれません。巨人に獲得の意思があればの話ですが、球団としても外野のポジション争いを激しくして底上げをしたいでしょうから。

 パ・リーグはパワー系のピッチャーが多いので、それをどう捉えるのかということになる。先ほど話したように、仮にオリックスに移籍したら自分のチームの強力ピッチャー陣と対戦することはなくなりますが、他球団のピッチャーもすごいですから。そう考えると、移籍するなら巨人をはじめセ・リーグのチームがいいのかもしれません。

【巨人で出場機会が減った中田翔は?】

――捕手では、戸柱恭孝選手(DeNA)もFAの可能性がありますね。

高木 どの球団もキャッチャーは揃ってきています。ただ、DeNAのキャッチャー陣は山本祐大が伸びてきて、ファームには松尾汐恩がいて、伊藤光はFA権を行使せずに残りました。なので今後を考えると、序列が厳しくなっていく可能性はあります。ある程度バッティングがいいだけに、それを活かせる球団はいいかもしれません。

――中田翔選手(巨人)の動向も注目されています。今年は昨年よりも少ない92試合の出場にとどまりました。ルーキーの門脇誠選手がショートに入ったことで坂本勇人選手がショートからサード、サードの岡本和真選手がファーストへ移り、来年は出場機会の減少が予想されています。

高木 中田はFA宣言すると思います。移籍先の候補はソフトバンクやロッテ、中日などが挙がっていますが、ロッテ、中日ならファーストで出られると思います。ソフトバンクでも同様ですが、山川穂高(西武)次第ですね。山川を獲るなら中田は獲らないでしょうし、その逆もあります。

 一方でロッテはファーストがいない。山口航輝などいろいろな選手が守っていますが定まっていません。そういう状態だと守備がガタガタになりますが、中田は守備力が高いので内野の守備全体が安定するでしょう。今年は(グレゴリー・)ポランコがDHで出ましたが、ポランコが離脱した場合などは中田をDHでも使えます。

――ロッテが獲得に動いた場合は移籍の可能性がある?

高木 中田は子供の学校など、家族の生活環境を重視していますよね。そうなると関東の球団を選ぶ可能性はあるんじゃないかなと。

 中日も今年は(ダヤン・)ビシエドが結果を残せず、宇佐見真吾などがファーストを守っていた現状を考えると、山川を狙う可能性もありますが中田は欲しいでしょうね。ただ、中田にしろ山川にしろ、広くてホームランが出にくいバンテリンドームが本拠地の中日には行きたがらないんじゃないかと。2人ともホームランでリズムを掴んでいく選手なので、バンテリンドームの広さはちょっとネックになりますよね。中田はもともとパ・リーグの選手ですし、移籍するとしたらロッテの線が強いかなと思います。

(パ・リーグ編:西武の山川穂高は「残留してチームに貢献すべき」>>)

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。