高木豊が予測する2023年のFA戦線

パ・リーグ選手編

セ・リーグ編:出場減の巨人・中田翔、ヤクルトの田口麗斗など最適な球団は?>>)

 高木豊氏に聞くFA戦線の展望。セ・リーグの選手編に続き、パ・リーグで動向が注目される選手について聞いた。

高木豊が考えるパ・リーグ選手のFA戦線 西武の山川穂高は「残...の画像はこちら >>

【すでにFA宣言した2投手の行方は?】

――パ・リーグのピッチャーについて、今季11勝(5敗)を挙げ、オリックスのリーグ優勝に貢献した山崎福也投手はいかがでしょうか。すでにFA権を行使し、ヤクルトやDeNAが獲得調査に動いていると報じられています。

高木豊(以下:高木) ヤクルトかDeNAになるんじゃないかと思います。山崎は埼玉県出身で東京の日大三高に行き、その後も東京の明治大ですから、関東に帰りたい気持ちもあると思うんです。それぞれの地域に魅力があるわけですが、関東と関西は雰囲気が真逆な感じですし。

 特にヤクルトは左ピッチャーが不足していますし、今年にふた桁勝利を挙げたのが小川泰弘だけで先発ピッチャーの層が薄い。山崎がいきなり先発陣の2番手くらいになることも十分に考えられます。

一方のDeNAは左ピッチャーがけっこういるので、「ローテーションの何番手になるんだ?」と考えることもあるでしょうね。そうなると、ヤクルトが有力だと思います。

――ヤクルトだと活躍の場が広がる?

高木 コントロールで苦しまないピッチャーなので、長くプレーできると思います。左ピッチャーで器用さもあるので、いざとなれば中継ぎなど、活躍の場が広がるでしょうね。オリックスは中継ぎにもパワー系のピッチャーがどんどん出てきていますし、いずれ先発から中継ぎに回るにしても、その時にポジションがないという可能性もあります。

――同じくFA宣言した平井克典投手(西武)は、今季は54試合に登板して4勝(3敗)28ホールド、防御率2.55。

貴重な中継ぎとしてチームに貢献しました。

高木 残留する可能性が高いと思います。本人も「西武のチームメイトと一緒にまだまだプレーしたい」という旨の発言をしていますしね。西武は先発ピッチャーが充実してきましたし、チーム最多のホールドをマークした平井が中継ぎにいることで、よりピッチャー陣の安定感が増します。複数年契約を提示してくれているということですし、チームにとっても本人にとっても残留したほうがいいと思います。

【山川はFA宣言をせず、1年間は西武に貢献すべき】

――もうひとり去就が注目されていた、2年連続で防御率2点台をマークした加藤貴之投手(日本ハム)は残留することなりそうです(11月10に報道)。

最後に山川穂高選手(西武)についてお聞きしますが、西武は単年契約を提示したと見られています。不祥事の件も含めてどう思われますか?

高木 球団に迷惑をかけたのは周知の事実で、仮に僕が山川の立場であれば、今年はFA宣言はしません。単年契約を提示しているということは、球団は親心で「残ってもいい」と言っているわけですよね。チームメイトに頭を下げ、ファンに対してもしっかりお詫びをして......FAを行使するにしても来年にするべきかと。

 チームメイトとの間に溝ができているのかもしれませんが、迷惑をかけてしまった分を取り戻すという意味でも、残留して来季にしっかりした成績を残し、チームの順位を少しでも上に上げる。出ていくならそれからですよ。

――成績を残すことで球団に誠意を見せるべき?

高木 球団に対してもそうですし、松井稼頭央監督が就任1年目で4番として期待していたのを裏切ったこともありますから。先輩の中村剛也と栗山巧が試合に出て、尻拭いするような形になったわけじゃないですか。そういうことを考えたら、来年は1年間しっかりやって、「ホームラン王を獲る」くらいの気持ちでチームに貢献するべきじゃないかと。西武では「やりにくい」と思っているのかもしれませんが、ほかのチームに行っても一緒だと思いますよ。

――ソフトバンクが獲得調査に動いているとも報じられています。

高木 単純に戦力として考えれば、右の大砲は欲しいでしょうね。

あとは、長くホームラン欠乏症に悩んでいる中日も欲しい選手だと思います。ただ、先ほど(セ・リーグ選手編)もお話しましたが、広くてホームランが出にくいバンテリンドームがネックになる可能性はある。40本打てるところが30本になってしまうと、ホームランバッターは気持ちが乗っていかないんじゃないかと。

 中日に限らず、山川はセ・リーグの球団に行きそうな感じがしません。パ・リーグの畑で育ってきた選手ですし、そもそもFAでパ・リーグからセ・リーグに移るケースも減っている。昔はFAでセ・リーグの球団に行く選手が多かったですが、今はパ・リーグの中で動きますよね。

リーグを変えて新しいピッチャーと対戦するのが嫌なのか、それ以外の理由があるのかはわかりませんが。だから山川も、FA宣言をするのであればパ・リーグの中で動きそうな気がします。

【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)

1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。