2024年のプロ野球が幕を開け、開幕3連戦は中日が12球団で唯一勝ちなしのスタートになったが、長いシーズンでどう状況は変わっていくのか。1993年に沢村賞を受賞するなど、かつて中日のエースとして活躍。

春季キャンプでは一軍投手コーチを務めた2013年以来、11年ぶりに古巣のピッチャー陣を指導した今中慎二氏に、セ・リーグの順位予想と展望を聞いた。

【今中慎二のセ・リーグ順位予想】打倒・阪神の筆頭は中日 中田...の画像はこちら >>

【1位予想:阪神】

――セ・リーグの1位は、昨年と同じ阪神という予想ですね。

今中慎二(以下:今中) 今回、順位を決めるにあたって重視したのは各チームの投手力。基本的には投手力が高いチームが上位にくると考えていて、それが阪神を1位とした主な理由です。

 ただ、オープン戦では投手陣の内容が先発もリリーフもイマイチでした。先発なら期待が大きい門別啓人、リリーフなら新外国人の(ハビー・)ゲラやキャンプやオープン戦でいい投球を見せた岡留英貴らが台頭してきたらいいのですが、昨季に好成績を残した村上頌樹がそこまでよくなかった。

大竹耕太郎はそれほど計算できる状態になっていないかなと。そう考えると、少し不安要素はあるんです。

――それでも1位とした理由は? 

今中 不安要素はあるといっても、もともとのレベルが高いですし、投手陣は層が厚い。それと打線も、1番の近本光司、2番の中野拓夢を筆頭にいろいろな形で点が取れます。ほかのチームと比べた場合に投打のバランス、総合力が抜けていると思うので、最終的には優勝するんじゃないかと見ています。

【2位予想:中日】

――古巣の中日を2位と予想。

投手陣が充実している上、中田翔選手らを補強して野手陣にも厚みが出てきました。

今中 まずは阪神に引けを取らない投手力がある。それと、昨季から比べるとプラス要素が多いです。

 特に大きいのは中田翔の加入。中田がしっかり4番に座ることで、前後のバッターにもいい影響があると思いますし、投手陣も「今年は点を取ってくれそうだ」と気持ちの面で変化があるはず。昨季はチーム得点が400点にも届きませんでしたが(リーグワーストの390点)、今季はそこまでの打撃不振はないはずです。

 やはり新加入の中島宏之は、基本的に代打での起用になると思いますが、ファーストであればスタメンもいけます。また、岡林勇希が右肩の炎症で二軍スタートとなりましたが、三好大倫がオープン戦である程度の成績を残してレギュラー候補に名乗り出てきたこともプラス要素です。

――先発ローテーションの一角として期待されていた髙橋宏斗投手が二軍スタートになったのはマイナス要素ですか?

今中 先発陣は層が厚いので大丈夫です。髙橋がシーズン途中で戻ってきたらより盤石になるでしょうし、誰かが離脱してしまっても、それなりにやってくれるメンバーだと思っています。手術明けの大野雄大や梅津晃大に関しても、昨季はほとんど投げていなかったことを考えると、今季いてくれることはプラス。中日の課題は、とにかく点を取れるかどうかです。

【3位予想:DeNA】

――DeNAを3位と予想した理由を教えてください。

今中 今永昇太、トレバー・バウアーと先発ローテーションで投げていたピッチャーがふたり抜けたのは大きいですし、リリーフ陣でも(エドウィン・)エスコバーが抜けました。新外国人投手の(ローワン・)ウィックらはいますが、そこまでの迫力をまだ感じません。

 それでも3位と予想したのは、打てるチームだからです。(タイラー・)オースティンもある程度試合に出続けることができれば、得点力は阪神とそれほど変わらないと思います。

――オープン戦首位打者、1番・度会隆輝選手の存在も打線を活性化しそう?

今中 シーズンの真剣勝負は全然違いますが、早くも結果を残していますし、このまま同じように打てたらもちろん大きいですよ。

――打線が強力とはいえ、先発ピッチャー陣の奮起は欠かせませんね。

今中 そうですね。昨季は間隔を開けながらの登板で4勝した平良拳太郎や、アンダーハンドの中川颯、新外国人投手の(アンドレ・)ジャクソンらがどこまでやれるか。東 克樹や大貫晋一らがしっかりと先発陣を引っ張ることが前提ですが、そのあたりのピッチャーにも順調に勝ちがついていけば面白いと思います。

【4位予想:巨人】

――中日と同様、オフに大きな補強に動いた巨人。阿部慎之助監督で再出発を図るチームをどう見ていますか?

今中 先発ピッチャーが足りません。

計算できるのは戸郷翔征ぐらいです。山﨑伊織は昨年ふた桁(10勝5敗)勝ちましたが、実質2年目ですよね。このふたりがしっかりと軸となってローテーションを回ればいいですが、山﨑は戸郷ほどの信頼がないと思うので。菅野智之が復活すれば大きいですが、それでも計算できるピッチャーは不足している。補強したとはいえ、リリーフも不安です。

 野手は、ルーキーの佐々木俊輔や2年目の門脇誠らがいて、クリーンナップは岡本和真坂本勇人がいるので点はある程度取れるかもしれませんが......DeNA同様、新たな先発ピッチャーが台頭することが、上位を狙う上では不可欠です。

【5位予想:広島】

――昨季2位の広島は5位と予想されました。

今中 打線では、西川龍馬が抜けたのが痛いです。田村俊介ら期待の若手野手の名前がよく挙がりますが、今季どこまで打てるのかは未知数です。先発陣はある程度実績があるピッチャーもいますが、大瀬良大地はパッとしませんし、右肘の張りで出遅れている森下暢仁の状態もどうなのかと。床田寛樹は昨季初めてふた桁(11勝7敗)勝てたので、今季は真価が問われます。

 リリーフ陣は島内颯太郎や矢崎拓也など、球の強いピッチャーがある程度いるのはいいのですが、活躍しても1年で終わって2年続かないことが多い。それはどのチームにも言えることですが、2年続けて成績を残せるリリーフのピッチャーが少なくなっていますね。栗林良吏が復活できるのかどうか、という問題もあります。

――プラス要素がなかなか見当たらない?

今中 そうなんです。(ジェイク・)シャイナーと(マット・)レイノルズが打てば別ですが、それはやってみなければわかりません(2選手とも3月31日に故障で出場登録を抹消)。プラス要素が見出せないので5位としました。

【6位予想:ヤクルト】

――ヤクルトを最下位と予想されましたが、その要因は?

今中 ピッチャー陣が弱すぎます。いくら打線が強力でも、小川泰弘は出遅れていますし、高橋奎二や吉村貢司郎あたりがもっと頑張らないと先発ローテーションが厳しい。リリーフも同様です。ヤクルトの場合は、打線がピッチャー陣をカバーすれば上に行くでしょうが、普通に打つ程度ではピッチャー陣が苦しくなります。

 それでも2連覇(2021年、2022年)したけど......とは思うのですが、どう考えてもピッチャーが厳しいです。冒頭で投手力が高いチームが優勢と言いましたが、特に近年は、リリーフ陣の充実度がそのまま順位に反映される傾向がある。阪神や中日を上位に予想しているのは、リリーフ陣がしっかりしているからです。

 リリーフ陣が踏ん張って僅差の試合をものにしていかなければいけないのですが、ヤクルトにそのイメージがないんですよね。打ち合って勝つチームでしょうし。シーズンは長丁場ですから、やはりピッチャー陣がいいチームが上に行くと思います。