牡馬クラシック第1弾のGI皐月賞(中山・芝2000m)が4月14日に行なわれる。

 ここ数年と同じく、今年も混戦模様で「三冠」初戦を迎える3歳牡馬戦線。

とはいえ、一昨年も、昨年も、馬券圏内(3着以内)に入ったのは5番人気以下の馬。「混戦」「激戦」と騒がれたわりには、比較的平穏な決着に終わった。

 ただ、上位人気馬での決着でも3連単は、一昨年が3万円超え、昨年が2万円超えと、オイシイ部類の配当となった。そういう意味では、過去2年以上に人気が割れそうな今回は、たとえ人気馬が上位を独占したとしても、さらなる好配当が期待できそうだ。

 それほどの"大混戦"となった要因は、第一に2歳GIのホープフルS(12月28日/中山・芝2000m)を牝馬のレガレイラ(牝3歳)が勝ったこと。加えて、期待馬、素質馬がその後の主要レースでことごとく敗れてしまったことにある。

 実際、今年に入って3歳牡馬が出走できる芝1600m以上の重賞レースはここまで8つあったが、1番人気が勝利したのは、ビザンチンドリーム(牡3歳)が勝ったGIIIきさらぎ賞(2月4日/京都・芝1800m)と、シックスペンス(牡3歳)が制したGIIスプリングS(3月17日/中山・芝1800m)と、わずか2戦。しかも、シックスペンスは皐月賞をパス。GI日本ダービー(5月26日/東京・芝2400m)へ直接向かう予定だ。

 こうして迎える皐月賞。まず注目されるのは、レガレイラの参戦だ。牝馬が皐月賞に挑戦するのは、2017年のファンディーナ以来。

同馬は1番人気に支持されながら7着に敗れたが、レガレイラはどうか。

 そもそもファンディーナには、牡馬相手の重賞実績がなかった。3戦無敗で圧巻の走りを見せていたとはいえ、過剰人気だったことは否めない。片や、レガレイラには牡馬相手の重賞実績がある。それも、今回と同じ舞台で行なわれたGIでの勝利である。

 となると、ファンディーナよりもチャンスはありそうだが、本番を前にしてここまで手綱を取ってきた主戦のクリストフ・ルメール騎手が負傷して戦線離脱。

皐月賞では急きょ、北村宏司騎手が鞍上を務めることになった。研究ニュースの藤田浩貴記者は、それが気がかりだと言う。

「レガレイラは上位人気が予想されますが、気性的な難しさを内包しており、テン乗りは間違いなく割引です」

 さらに藤田記者は、他の有力馬にも疑問の目を向けてこんな見解を示す。

「GIII共同通信杯(2月11日/東京・芝1800m)を勝ったジャスティンミラノ(牡3歳)は、スローの競馬しか経験していません。そのうえ、今回は初めての右回り。懸念材料が多いです。

また、2歳王者のジャンタルマンタル(牡3歳)も、折り合い面から距離延長には不安が残ります。

 これだけの大混戦のなか、有力馬に不安があれば、伏兵馬の躍進があってもおかしくありません。当然、超高配当が生まれる可能性は十分にあります」

 そうして、藤田記者は皐月賞で激走が期待できる2頭の穴馬候補の名前を挙げた。

「1頭目は、コスモキュランダ(牡3歳)です。主要な重賞に参戦してきたシンエンペラー(牡3歳)を物差しにしても、上位の評価が与えられます。

皐月賞は「大荒れ」の可能性!? 人気馬が不安を抱えるなか、伏...の画像はこちら >>
 とにかく、そのシンエンペラーを2着に退けたGII弥生賞(3月3日/中山・芝2000m)の勝ちっぷりが優秀でした。
平均的な流れのなか、早めに進出してそのまま押しきり勝ち。その危なげないレースぶりは着差以上の強さで、決してフロックではできない芸当です。

 しんがり負けから始まった異色のキャリアの持ち主ですが、一戦ごとの地力強化には目覚ましいものがあります。一瞬の脚や器用さには欠けるものの、心肺機能に優れたタイプ。荒れていて、時計のかかる今の中山の馬場もぴったりです。

 状態に関しても、さらに上向いている印象です。

1週前にコースで併せ馬を行なって、6ハロン80秒2-1ハロン11秒7という好タイムをマークして追走先着。最終追い切りは微調整ながら、ジョアン・モレイラ騎手の騎乗で軽快な動きを披露しました。

 現にモレイラ騎手も、『跳びが大きくてスタミナがあるタイプ。スムーズに運べればいい競馬になりそう』と好感触を得た様子。道中のポジションアップを得意とするジョッキーだけに、いかにも手が合いそうで、桜花賞の騎乗を見ても(2番人気ステレンボッシュに騎乗して勝利)、馬の能力以上のプラスアルファが期待できます」

 藤田記者が推奨するもう1頭は、ダノンデサイル(牡3歳)だ。

「同馬はデビュー当初、気性の若さが目立っていましたが、横山典弘騎手と安田翔伍調教師が地道に教え込んできたことが着実に実になってきました。ハミ受けや口向きの難しさが徐々に改善され、スムーズさを欠いて4着に敗れたGIII京都2歳S(11月25日/京都・芝2000m)と比べて、GIII京成杯(1着。1月14日/中山・芝2000m)では格段にレース運びが向上していました。

 京成杯の勝利で賞金が加算できたため、早々に皐月賞への直行を表明。前走後からのゆとりを持ったローテーションには好感が持てますし、放牧を挟んで心身のベースアップに成功したのも心強い限りです。

 この中間は京成杯前と比較しても、一段階踏み込んだ調教を課していて、1週前追い切りでは全体時計(6ハロン)81秒0ながら、終(しま)いの1ハロンでは11秒2のキレ味を見せました。

 直前は、主戦の横山典騎手に感触を確かめてもらいましたが、適度な前進気勢で走る気満々。馬体の張りや艶からも出来のよさがうかがい知れました。まだまだ奥があって伸びしろを残しているだけに、侮れない存在ですよ」

 振り返れば、ファンディーナが出走した2017年は、9番人気のアルアインが勝利。2、3着にも伏兵馬が突っ込んできて、3連単の配当は100万円を超えた。牝馬が参戦する今年、再び"大荒れ"となるのか。もしそうなった場合には、ここに挙げた2頭がその一端を担ってもおかしくない。