Sareeeインタビュー 後編

 2024年、マリーゴールドとシードリングのシングル2冠王者として、「女子プロレス大賞」を初受賞したSaree。インタビュー後編では、初めて受賞した女子プロレス大賞、そして6月21日に控えるIWGP女子王座戦、7月に行なわれるスターダムの大人気ユニット"H.A.T.E."の上谷沙弥&刀羅ナツコとの対決について聞いた。

Sareeeは「熱い熱い令和の女子プロレスを見せたい」 狙う...の画像はこちら >>

【引退した名レスラー2人から受け継いだ意志】

――昨年9月、マリーゴールドのシングルリーグ戦「DREAM☆STAR GP2024」に参戦。結果は4勝1敗、2引き分けでしたが、いかがでしたか?

それまで、リーグ戦には参加したことがなかったんですよ。時間は15分1本勝負で、ほとんどがシングルマッチでしたが、「リーグ戦って楽しいな」と思いました。ゲーム感覚というか......勝ったら星取表に「〇」を、引き分け「△」を記入しながら、「勝ち点は......」って計算する、みたいな(笑)。

――結果は、優勝決定戦進出がかかったボジラ選手との試合に負け、敗退。そこで戦った高橋奈七永さんは、今年5月24日に引退しましたね。

昨年12月、私が持っていたマリーゴールド・ワールド王座に奈七永さんが挑戦して、なんとか防衛できた。引退を発表したのはその試合後でしたから、あの時、あのタイミングで戦えてよかった。

(今年1月に戦った)里村明衣子さんも4月29日に引退しましたが、ふたりとも最後までプロフェッショナルで、リング上でプロレスの厳しさを教えてもらいました。私は日本の女子プロレスが大好きで、アメリカから戻ってきた。肉体と肉体をぶつけ合う、熱い戦いができる日本のプロレスがしたかったから。

里村さんも奈七永さんも約30年、そんな熱い戦いをしてきました。その間、女子プロレスは「冬の時代」と呼ばれる時期もありまた。

それでも、変わらず戦ってきたんです。その意志を受け継いだ私が、必ず女子プロレスブームを巻き起こします。

【女子プロレス大賞の受賞から、まさかの3連敗】

――10月27日には、マーベラスの新人・暁千華選手のデビュー戦の相手を務めました。

暁は、長与千種さんのDNAを受け継ぐレスラー。赤を基調としたコスチュームを着た期待の新人なので、デビュー戦の相手を任せてもらってすごくうれしかったですね。

――Sareee選手のデビュー戦は里村さんでしたが、その時のエピソードが好きです。

里村さんにローキックを蹴られた時、私が顔を背けたら「目をそらすな!」と気合を入れられた話ですよね。リング上の戦いでしか伝えられないことがある。私はたくさんの先輩たちに厳しく教えてもらいました。

今度は、私が後輩たちにバトンを渡していく立場になったんだと実感しました。デビュー戦は、戦った相手も覚えているもの。私も暁選手のことを本当に応援してますよ。

――戦った時の印象はどうでしたか?

すごく芯が強いな、と感じました。

あと、「鍛えてるな。さすがマーベラスだな」と思いましたね。

――新人とは思えないほど、下半身がしっかりしてますね。

すごくデカいですよね。先日会った時には、またデカくなってました(笑)。絶対に大物になりますよ。

――そして12月、「女子プロレス大賞」を初めて受賞しました。団体に所属していないフリーの選手が獲得するのは珍しいことです。

もう、本当にうれしかったですね。ずっと獲りたいと思っていた賞なので、夢がひとつ叶いました。

――2019年も、W.W.W.D世界シングル王座とセンダイガールズワールド王座の二冠王者として活躍し、受賞の噂がありましたね。

2019年はスターダムの岩谷麻優が獲得、すごく悔しかった記憶があります。

だから今回の受賞はなおさら嬉しかった。

――受賞の知らせはどのようにくるものなんですか?

電話で「おめでとうございます」と。2024年は"駆け抜けた1年"でした。ベルトを2本巻いて、自分の思うままに突っ走ってきた。応援してくれる周りの人たちやファンの人たちの顔が浮かびましたね。「本当に認めてもらえたんだな」って。

――ところが、2025年1月にはシングルマッチでまさかの3連敗を喫します(1月3日・林下詩美、17日・VENY、23日・里村明衣子)。

3週間の間に3連敗ですから、ヤバいくらい悔しかったですね。特に2連敗で迎えた23日は、「引退する里村さんが相手。ここは絶対に負けられない」という決意を持って挑みました。しかも舞台は、私の自主興行「Sareee-ISM」です。「絶対に里村さんを超える」と思っていたのに......。

負けた時、「あれ、私って2024年で終わったの?」と絶望しました。

でも、過去イチと言っていいくらいに、不思議と燃えたんですよ。「これだけ落ちたなら、上がるしかない。落ち込むことは簡単だけど、それじゃダメ。どん底に落ちた私がファンに見せられるのは、ここから這い上がる姿、立ち上がる姿。それを見せられるのがプロレスラーだし、それがプロレスの醍醐味だ」と切り替えました。

負けたら終わりじゃない。諦めたら終わりだけど、諦めなければ、またみんなに希望や勇気を与えられる。それが自分の役目だなっていう想いが溢れてきましたね。

【IWGP女子王座を巡る不可解な流れに「なんなの⁉」】

――3月10日の自主興行では"モノが違う女"朱里選手と対決。30分時間切れ引き分けの死闘となりました。

きつかったですね。決めきれなかったのはすごく悔しいけど、今後は朱里には絶対に負けたくない。

ここから、私と朱里の物語が始まっていくんだなって思いましたね。

――4月27日スターダムの横浜アリーナ大会では、岩谷選手に勝利した新IWGP女子王者の朱里選手に挑戦を表明しました。

本当は岩谷に挑戦を表明するために横浜に行きました。2024年4月、岩谷に負けているので彼女から獲りたかった。でも、気持ちを切り替えました。岩谷と朱里の戦いも激闘でしたからね。

――6月21日の代々木大会で、IWGP女子王座への挑戦が決まりました。ただ、6月6日にはイギリスで朱里選手がアレックス・ウィンザー選手の挑戦を受けるので、その勝者にSareee選手が挑戦することになります。

正直、「なんなの?」って感じですね。4月27日に横浜アリーナで挑戦表明して、朱里には「初防衛戦やってやるよ」って言われました。でも、そこから音沙汰がないし、なんの発表もなかったから、「どうなってんの?」って後楽園に直接聞きに行きました。

私が「6月21日スターダムのビッグマッチ、代々木でやろう」と舞台を指定したら、朱里も「やる」って。

そうしたらタイミングよく映像が流れ、6月6日にイギリスでウィンザーが挑戦表明。なんなんですかね、あれは!? 私の挑戦を受けると言ったのに「海外でもやりたい」とか優柔不断なことを言って......。

――朱里選手はイギリスで防衛して、王者のまま戻ってくるんじゃないですか。

マジでムカつく! IWGP女子王座戦は、とりあえず決定したってことですよね?

――スターダムで正式決定し、発表されましたね。その怒りは6.21横浜のリングでIWGP女子王者にぶつけてください(笑)。

完全に獲りにいきます。やっぱり朱里ってヌルいなって。試合は激しいのに、なんであんなマイクが噛み合わないのか。こっちのテンションと差がありすぎます。

そういう性格なのかもしれないし、全否定はしないけど......でも、私という"外敵"が乗り込んできるだから。ライバルが目の前にきてるんだから、王者としての威厳を見せてくれないと。こっちも呆れちゃうという。

だからこそIWGP女子王座のベルトは、私が巻いていたほうが絶対に熱くできると確信しました。IWGPの名の下、創始者であるアントニオ猪木さんの魂をあらためて吹き込んで見せます。

――IWGP女子王座を獲得したあとの未来は想像していますか?

ハッキリと想像しています。いろんな強い選手と戦いたいし、実は、自分がやりたいって思っている海外の選手もいます。それは、ベルトを獲ったあとに自分で動いていくしかないかな。

――IWGP女子王者として海外の選手と防衛戦ですか。それはアメリカ?

まだ内緒ですけど、指名したいと思ってる選手がいます。あとは、スターダムのなかで誰が挑戦表明してくるのかも楽しみ。いろんなワクワクがありますよね。

【熱い令和の女子プロレスを見せたい】

――スターダムといえば、7月14日に新宿FACEで自主興行「Sareee-ISM チャプター8」が開催されます。Sareee選手はマーベラスの彩羽匠選手と組んで、スターダムの上谷沙弥&刀羅ナツコ組と対戦しますね。

彩羽とはAAAWタッグ王座を獲得したばかり。このふたりで日本の女子プロレス界で暴れまくってやろうかと。それで「戦ったら面白いかな」と思ったのが、上谷沙弥&刀羅ナツコ。上谷はマーベラスの赤いベルト(ワールド王座)を巻いているし、彩羽とも因縁があるみたいですですから。

――彩羽選手がスターダムのリーグ戦へ"X"として出場予定だった時、上谷選手が記者会見で口を滑らせたことがありましたね。

彩羽が「歩く情報漏洩」って言ってましたね。ナツコは、ダンプ松本さんの後押しを受けている。パートナーの彩羽は長与さんの弟子でもありますし、クラッシュギャルズvs極悪同盟を彷彿とさせる戦いにしたいですね。

――6、7月とプロレス界の話題になる戦いが続きますね。

6月21日は、私にとって運命の日になると思います。やっぱり、「朱里に来てもらわないと」って私は思ってます。3月の30分ドローとなった試合の決着をしっかりつけた上で、IWGP女子王座のベルトを必ず腰に巻きます!

そして7月14日新宿FACE、Sareee &彩羽匠vs上谷沙弥&刀羅ナツコのタッグマッチ。昨年Netflix『極悪女王』で女子プロレスに注目が集まるなか、熱い熱い令和の女子プロレスを見せたいと思います。あの頃の戦いと、現在進行形の女子プロレスを比べてください。絶対に負けてないと自負しています。

世間から女子プロレスが注目されている今、しっかり業界を引っ張る戦いをリング上でお見せします。そして、2年連続での女子プロレス大賞を狙います。

【プロフィール】

■Sareee

1996年3月31日、東京都板橋区生まれ。158cm、60kg。中学卒業後の2011年4月17日、ワールド女子プロレス・ディアナ旗揚げ戦でプロレスデビュー。2018年7月22日、井上京子に勝利し第8代W.W.W.D世界シングル王者に。2019年6月8日、橋本千紘とのダブルタイトルマッチを制しW.W.W.D世界シングル選手権&センダイガールズワールドチャンピオンシップ2冠女王となる。2020年2月、世界最高峰の米プロレス団体「WWE入団」を発表。2023年3月9日、WWEを契約満了で退団、同年5月16日、橋本千紘戦で日本復帰。同年8月25日、中島安里紗を破りBEYOND THE SEA SINGLE王者に。2024年7月13日、マリーゴールド両国大会でジュリアを倒しマリーゴールド・ワールド王座初代王者となる。同年12月、プロレス大賞において女子プロレス大賞を初受賞。2025年6月21日、マリーゴールド代々木大会でIWGP女子王座に挑戦する。

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