今シーズンも大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)は本塁打王争いのリーグトップに立って7月を迎えた。ここ5シーズンのうち、そうでなかったのは1シーズンしかない。

 各シーズンの6月末時点でのホームラン数は以下のとおり。2021年が28本(ア・リーグ1位/2位と2本差)、2022年が17本(ア・リーグ8位タイ/1位と12本差)、2023年が30本(ア・リーグ1位/2位と6本差)、2024年が26本(ナ・リーグ1位/2位と5本差)、そして今シーズンが29本(ナ・リーグ1位/2位と3本差)だ。

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 ホームラン以外の打撃スタッツも、これまでとほとんど遜色ない。ここ5シーズンの6月末時点の打率は.277→.265→.310→.316→.287、出塁率は.360→.350→.396→.399→.388、OPS(出塁率+長打率)は1.045→.855→1.070→1.034→1.021と推移。いずれも安定した数字を残している。

 ただ、例年と違うのは、アーチの量産が5月だったことだ。今シーズンの月間本塁打は、3・4月が7本(3月と4月は合わせて1カ月換算)、5月が15本、6月は7本。それまで5月のホームラン数は、2023年の8本が最も多かった。

 一方、6月に12本以上のホームランを記録したのは3度。2021年の13本、2023年の15本、2024年の12本。それらと比べると、先月の7本はやや少ない。

 もっとも、大谷に限らずどんなスラッガーにも好不調の波は存在する。

好調あるいは不調の時期や長さは、もちろん一定ではない。

 6月も最初から最後まで低調だったわけではない。21日までの20試合は3本にとどまったが、22日以降の7試合は4本打った。月の後半からは投手として3試合に登板したが、それによって打撃に影響があるようには見えない。

【2023年は逃げきって本塁打王】

 大谷を筆頭に、ナ・リーグには6月末時点で20本塁打以上の選手が8人いる。その数はア・リーグの2倍だった。

 26本のエウヘニオ・スアレス(アリゾナ・ダイヤモンドバックス)と25本のカイル・シュワーバー(フィラデルフィア・フィリーズ)が2位と3位に位置し、その下には22本の鈴木誠也(シカゴ・カブス)とジェームズ・ウッド(ワシントン・ナショナルズ)、21本のピート・クロウ=アームストロング(カブス)、20本のコービン・キャロル(ダイヤモンドバックス)とフアン・ソト(ニューヨーク・メッツ)が並ぶ。スアレスとソトは6月に11本を記録し、鈴木の月間本塁打は大谷より1本多かった。

 4年前の2021年、大谷は46本のホームランを打ちながら、ブラディミール・ゲレーロJr.(トロント・ブルージェイズ)とサルバドール・ペレス(カンザスシティ・ロイヤルズ)に2本差をつけられ、本塁打王を逃した。

 6月末時点の本数は、大谷が28本(1位)、ゲレーロJr.が26本(2位)、ペレスは19本(6位タイ)だった。オールスターブレイク(7月中旬)の時点では、それぞれ33本(1位)と28本(2位)と21本(9位タイ)。ゲレーロJr.に5本差をつけ、ペレスとの差は12本もあった。

 今シーズンも、ペレスのように後半戦でホームランを打ちまくる選手が出てこないとは限らない。

その一方で、ここから大谷のホームラン数が思ったより伸びなくても、トップのまま逃げきれることもあり得る。こちらは、2023年が当てはまる。

 2023年の大谷は大きくペースダウンしたわけではないが、9月初旬にシーズンを終えたため、7月以降のホームランは14本にとどまった。この本数は、2021年より4本少ない。けれども、ア・リーグでシーズン40本塁打に到達したのは、大谷しかいなかった。2021年と比べるとマイナス2本の44本塁打ながら、大谷は本塁打王を獲得した。

 これらの例からもわかるとおり、タイトルは相対的なもの。60本台のホームランを記録しても、同じリーグに70本塁打の選手がいれば、もちろん本塁打王は獲得できない。

【150得点以上なら25年ぶり】

 とはいえ、現時点でナ・リーグの本塁打王を予測するなら、大谷以外を筆頭候補に挙げるのは難しい。その理由はこうだ。

 大谷は過去2シーズンとも本塁打王を獲得し、今シーズンもトップに位置している。しかも、過去2シーズンの計98本塁打は誰よりも多い。大谷に次ぐのは、計95本塁打のアーロン・ジャッジ(ニューヨーク・ヤンキース)と計85本塁打のシュワーバーだ。

大谷はナ・リーグ、ジャッジはア・リーグのチームにいる。

 また、過去4シーズンの7月以降のホームランは、18本→17本→14本→28本と推移している。9月初旬までしかプレーしなかった2023年を除くと、最少は17本だ。今シーズンも7月以降が17本だったとしても、6月までの29本塁打と合わせるとシーズン46本塁打となる。この本数でも本塁打王はあり得る。2021年~2024年の本塁打王のうち(1位タイはひとりとして数える)、8分の3は46本以下だった。

 その一方で、今シーズンも昨シーズンの7月以降と同じ28本を打てば、シーズン全体では57本塁打となる。2021年以降のシーズンで55本塁打以上を記録したのは、ジャッジだけだ。

 ホームラン以外では、今シーズンの大谷は得点の多さが目につく。6月末時点の82得点は両リーグ最多。ナ・リーグ2位は66得点のエリー・デラクルーズ(シンシナティ・レッズ)で、ア・リーグ1位は73得点のジャッジだ。

 このままのペースだと、大谷の得点数はシーズン全体で156~157に達する。

1900年以降のシーズン最多は1921年にベーブ・ルース(ヤンキース)が記録した177得点だが、1950年以降で150得点以上を記録したのは2000年のジェフ・バグウェル(152得点/ヒューストン・アストロズ)しかいない。

 ただ、本塁打王を獲得し、ほかの個人スタッツもすばらしく、3シーズン連続5度目のMVPに選ばれても、大谷は満足しないだろう。今世紀のメジャーリーグかつドジャース史上初の「ワールドシリーズ連覇」を成し遂げてこそ、ゴール到達となるはずだ。

【過去の5人はいずれも殿堂入り】

 昨年のポストシーズンで、大谷は3本のホームランを打った。だが、ワールドシリーズの5試合は打率.105(19打数2安打)と出塁率.227。ホームランも打点もなかった。

 時期尚早を承知で最高のシナリオを思い描くなら、レギュラーシーズンのリーグMVPとワールドシリーズMVPのダブル受賞だろうか。そうなれば、1963年のサンディ・コーファックス(ドジャース)、1966年のフランク・ロビンソン(ボルチモア・オリオールズ)、1973年のレジー・ジャクソン(オークランド・アスレチックス)、1979年のウィリー・スタージェル(ピッツバーグ・パイレーツ)、1980年のマイク・シュミット(フィラデルフィア・フィリーズ)に続く6人目だ。

 これまでの5人は、いずれも殿堂入りしている。コーファックスはドジャースのエースだった。あとの4人中3人はダブル受賞の年に本塁打王と打点王を獲得し(ロビンソンは三冠王)、スタージェルも別のシーズンに本塁打王となっている。

 ドジャースのポストシーズン進出は、今年もまず間違いない。

昨秋とは違い、大谷は今秋のポストシーズンに打者と投手として臨む。二刀流として活躍すれば、ワールドシリーズへの道は自ずと開かれる。

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