夏の甲子園2025注目選手(投手編)
8月5日から第107回全国高等学校野球選手権大会が開幕する。今大会も石垣元気(健大高崎)など、プロスカウト垂涎の有望選手が出場する。
要注目の逸材を投手編・野手編に分けて10選手ずつ紹介していこう。
石垣元気(健大高崎3年/180センチ・78キロ/右投両打)最速158キロを誇る2025年高校野球界のスピードキング。常時150キロ前後を計測する高校生投手は、歴史的にもそういない。シュート質のストレートと、鋭利な変化のスライダーを駆使して、ホームベースを幅広く使える。今夏は群馬大会決勝まで、わずか1イニングの登板で体力を温存。前橋育英との決勝戦ではタイブレークの2イニングを含め、4回をパーフェクト、6奪三振の快投を披露した。今春のセンバツでは横浜と準決勝で対戦し、左脇腹痛による復調途上にあって3失点と悔いの残る内容だった。高校最後の夏に、集大成を見せられればドラフト1位指名は堅そうだ。健大高崎の投手陣はトミー・ジョン手術から復帰した佐藤龍月、甲子園での経験豊富な実戦派左腕の下重賢慎も擁する。佐藤は完成度の高い投球が持ち味で、2年春のセンバツ優勝に大きく貢献している。超高校級の三本柱は、高校野球史に残るレベルと言っても過言ではない。
未来富山を初の甲子園へと導いた江藤蓮 photo by Sankei Visual
江藤蓮(未来富山3年/180センチ・83キロ/左投左打)今夏に大きく株が上がる可能性を秘めた本格派左腕。
いかにもたくましそうな骨格からも、大器のムードが充満する。最速145キロと驚くような数字ではないが、体感速度は白眉。糸を引くような軌道で捕手のミットを強く叩く。富山大会決勝・高岡商戦は疲労の蓄積もあり、7失点と苦しんだ。それでも富山大会通算で30回を投げ、37奪三振をマークしている。長野県出身だが、野球に打ち込むため、通信制の未来富山に進学。創部8年目の新興校を甲子園に導いた。
2年生ながら完成度の高い投球が魅力の横浜・織田翔希 photo by Koike Yoshihiro
織田翔希(横浜2年/185センチ・76キロ/右投右打)2026年ドラフト戦線のトップランナー。1球見ただけで「モノが違う」とわかる逸材で、今夏は5回戦の藤嶺藤沢戦で12三振を奪い、1安打完封勝利を挙げた。現時点で最速152キロを計測するが、あくまでも通過点でしかない。縦に変化するカーブ、チェンジアップは今春のセンバツ時よりも質が向上した。長身痩躯の肉体はまだ発育段階にあり、本格的な筋力トレーニングはこれから。
将来は偉大な大先輩の松坂大輔(元・レッドソックスほか)を超える投手への期待がふくらむ。エース左腕の奥村頼人は対角をえぐるキレのあるボールと、勝負度胸が武器。神奈川大会では投球面で好不調の波があっただけに、甲子園では巻き返しが期待される。
今夏の沖縄大会で防御率0.31を記録した沖縄尚学の2年生エース・末吉良丞 photo by Ohtomo Yoshiyuki
末吉良丞(沖縄尚学2年/175センチ・89キロ/左投左打)難攻不落の2年生左腕。今夏の沖縄大会では防御率0.31を記録した。上背はないものの、厚みのある肉体が特徴。最速150キロのスピード面が取り沙汰されるが、この投手のキモは投球のうまさにある。「馬力のある宮城大弥(オリックス)」ととらえると、この投手の本質が見えてくる。今春のセンバツでは1回戦の青森山田戦で完投勝利、2回戦の横浜戦ではロングリリーフし、7イニングを粘投。それでも5失点して、7対8と惜敗した。今夏は強打線を封じ、来年のドラフト上位候補へ名乗りをあげたい。
大阪桐蔭時代の前田悠伍を彷彿とさせる聖隷クリストファーの髙部陸 photo by Kikuchi Takahiro
髙部陸(聖隷クリストファー2年/175センチ・68キロ/左投左打)今夏に見ておくべき新鋭左腕。
最速147キロの快速球は強烈なバックスピンがかかり、打者からはホップして見える球筋。カットボール、チェンジアップなど精度の高い変化球も操り、相手が右の強打者でも苦もなく片づける。高校時代の前田悠伍(ソフトバンク)クラスを目指せる逸材だ。悲運が続いていた聖隷クリストファーを春夏通じて初の甲子園出場に導いた。好調時のストレートは、高校生には攻略困難。今夏で一気に大ブレイクする可能性は十分にある。
和歌山大会決勝の星林戦で完封勝利を挙げた智辯和歌山・宮口龍斗 photo by Sankei Visual
宮口龍斗(智辯和歌山3年/185センチ・87キロ/右投右打)まだ底を見せていない大型右腕。スリークォーターの角度から投げ込む剛速球は最速152キロを計測し、シュートしながら捕手のミットにめり込む。3年春のセンバツまで救援中心に起用されてきたが、今夏の和歌山大会では先発適性もアピール。星林との決勝では、4安打完封勝利をマークした。外角へと鋭く滑るスライダーも大きな武器。今夏は計18回を投げ、防御率0.50と安定感が光った。
大学進学が濃厚ながら、近い将来にプロを目指せる器だろう。総合力が高い右腕・渡邉颯人との二枚看板は強力で、今春のセンバツでは準優勝。今夏は4年ぶりの頂点を狙う。
昨年夏の甲子園で日本一に貢献した京都国際・西村一毅 photo by Ohtomo Yoshiyuki
西村一毅(京都国際3年/177センチ・70キロ/左投左打)大舞台でこそ映える左腕。昨夏は魔球・チェンジアップを引っ提げ、甲子園のシンデレラ・ボーイに。24イニングを自責点0という快投で、優勝投手に輝いた。力感のない投球フォームで、左右の両肩を瞬時に入れ替えてリリースする。球速表示は140キロ前後でも、体感速度の速いストレートが投げられる。打者からすると、くるとわかっていても泳いでしまうチェンジアップは相変わらずやっかい。大学進学が既定路線だが、大学でも即戦力になれる実戦型だ。
最速149キロを誇る津田学園の左腕・桑山晄太朗 photo by Nikkan Sports
桑山晄太朗(津田学園3年/181センチ・81キロ/左投左打)今春に急成長して最速149キロを計測し、一躍脚光を浴びた左腕。コンパクトなテイクバックが特徴的で、独特のリズム感は打者を幻惑する。
キレのある速球とスライダーのコンビネーションを武器に、奪三振を量産するスタイルだ。今夏の三重大会準決勝・菰野戦は、昨夏の甲子園マウンドを経験している栄田人逢と左腕対決に。桑山は菰野を5安打14三振1失点に封じて、完投勝利。決勝戦でも津商を1対0と完封した。高校卒業後は大学進学を予定している。
女子バレーボール日本代表のリベロとして活躍した母を持つ仙台育英・吉川陽大 photo by Matsuhashi Ryuki
吉川陽大(仙台育英3年/175センチ・73キロ/左投左打)最速147キロをマークし、今春以降にプロスカウトから注目を集めた左腕。鋭い腕の振りでボールに力を伝え、ストレートだけでなくスライダーにもキレを生む。今夏の宮城大会では、先発に救援にフル回転。大一番になった東北との準々決勝では、10奪三振2失点の快投で接戦を制した。力みから制球を乱すシーンも見られるが、勝負どころでの集中力がある。父・正博さんは女子バレーボール日本代表の元監督で、母・博子さんは女子日本代表のリベロとして活躍した。
昨夏の甲子園で2勝を挙げた神村学園・早瀬朔 photo by Sankei Visual
早瀬朔(神村学園3年/185センチ・78キロ/右投左打)自身3回目の甲子園で真価を発揮したい右腕。
昨夏の甲子園では2年生ながら2勝を挙げ、一躍注目投手の仲間入りを果たした。四肢がスラッと伸びたシルエットは画になり、どこにいてもよく目立つ。最速150キロを計測するが、今夏の鹿児島大会終盤はストレートが走らず苦戦。スライダーでしのぐ場面が目立った。同期の千原和博ら、投手陣の仲間の奮闘もあって辿り着いた甲子園。目標とする高卒でのプロ入りをかなえるためにも、立ち直った姿を見せたい。
野手編につづく>>