山中慎介が語る井上尚弥vs中谷潤人 後編
(前編:山中慎介が分析 井上尚弥が中谷潤人との相性を「最悪」と言った理由 試合展開は「距離」がカギ>>)
5月2日、東京ドームのメインイベントで、世界スーパーバンタム級4団体統一王者の井上尚弥が中谷潤人の挑戦を受ける。井上は4月6日、自身のTikTokライブで「スーパーバンタム級は中谷戦と、もう1試合」「ラストの挑戦はフェザー級」と明かした。
その「もう1試合」の相手は誰なのか。海外メディアでは、スーパーフライ級3団体統一王者の"バム"ことジェシー・ロドリゲスが井上への挑戦に意欲を示していると報じられている。ロドリゲスは現在、井上とは2階級の差があるが、対戦の実現度はどのくらいあるのか。元WBC世界バンタム級王者・山中慎介氏に、5.2の勝敗予想と、動き始めた絶対王者の"次"を聞いた。
【勝敗の予想は「判定で井上」】
――井上尚弥vs中谷潤人、勝敗についてどう予想されますか?
「現時点で予想するなら、判定で井上だと思います」
――KOではない?
「そこは難しいのかなと。ただ、この試合にかける中谷の思いは、すさまじいものがあると感じています。ハングリー精神というか、映像や記事を見ていても、相当な覚悟で臨んでいる。もちろんそれは井上も同じですが、中谷は28歳と、年齢的にも伸びしろがありますからね」
――中谷選手はパンチを被弾しないタイプではありませんが、効かされている印象もなく、パンチをもらいながらも打ち勝つ印象があります。
「打たれ強いほうだと思います。腰が落ちたり、グラついた印象はほとんど記憶にありませんね」
――スーパーフライ級時代に、1度ダウン経験があっただけですね(2017年の工藤優雅戦)。
「昔は『一瞬効いたかな』というシーンもあったかもしれませんけど、ここ最近はないです。問題は、井上のパンチは別物だということ。打たれ強くても、井上のパンチをもらってしまったら、そうはいきません。
【井上はディフェンスも別格】
――中谷選手に勝機があるとすれば?
「左のフック気味のストレートですね。苦戦したセバスチャン・エルナンデス戦ではあまり当たらなかったですが、井上を倒すとなれば、踏み込んできたタイミングで、あのパンチをドーンとぶつける。距離が近づく一瞬でそれができるかどうかでしょうね」
――井上選手が過去にダウンしたパンチも、打ちにいったタイミングでカウンター気味に入ったパンチでした。
「井上サイドからすれば、当然そこは警戒してくるでしょう。井上は、距離が合わなければ、エルナンデスのようにガードを使いながら少し強引に詰めていく展開もあるかもしれません。井上はスーパーバンタム級に上げてから、中盤あたりから多少リスクを負いながらも倒しにいくこともありました。中谷戦でも、そうする可能性はゼロではないと思います」
――井上選手のディフェンス力についてですが、致命的なパンチをほとんどもらったことがありませんね。
「反応速度の速さがなせる業ですね。もしディフェンスに徹したら、まったくパンチを当てさせないんじゃないかと思わせる選手です。バックステップ、上体だけのスウェー、ヘッドスリップ、スリッピングアウェー。さまざまなディフェンステクニックの引き出しがあり、それが体の反応として瞬時に出てくる。井上はディフェンスも別格です」
【井上がスーパーバンタム級で「もう1試合」やるとしたら?】
――井上選手はTikTokライブで「スーパーバンタム級は中谷戦ともう1試合、その後はラストの挑戦でフェザー」と明かしました。このもう1試合の相手についてどう思われますか?
「う~ん、現状では思い当たらないんですよね。
――階級差が現状は2階級ありますが、バムがバンタム級に上げ、WBA王者のアントニオ・バルガスに挑戦するという発表がありました。
「それで1階級差にはなりますが、仮にバンタム級王者になったとして、そのあとにどうするのか。井上戦のためにスーパーバンタム級まで上げるとなると、短い期間で2階級上げることになります。その適応に要する時間を、井上が待つことはないと思いますし......」
――仮にスーパーバンタム級に上げたら、バムはフィットするでしょうか?
「ちょっときついと思いますね。そこまでサイズもないですし(身長163cm、リーチ170cm)、パワーが突出しているタイプでもない。スーパーバンタム級に合わせるのは現実的ではない気がします」
――それでも、もしバム戦が実現するなら、興行地はリヤドが最有力でしょうか。
「サウジアラビアのトゥルキ・アルシェイク殿下が動いているという話もありますからね。実現するのであれば、そういう流れでしょう」
――井上選手の最終章となりそうなフェザー級挑戦、どの選手との試合が見たいですか?
「現状では、ラファエル・エスピノサあたりですかね」
――井上選手のモチベーションとしては、強いと言われている相手と戦って、自分が強いことを証明したいということでしょうか。
「そうでしょうね。『この選手とやったら井上でもわからない』といった、すべての可能性や噂を消しておきたいという感じじゃないかと」
――いずれにしても5.2の結果が、これからのボクシング界を大きく動かしますね。
「世代交代という流れになるのか、それとも井上は無双だったという答えになるのか。すべてはこの日のリングで決まります。
【プロフィール】
■山中慎介(やまなか・しんすけ)
1982年滋賀県生まれ。元WBC世界バンタム級チャンピオンの辰吉丈一郎氏が巻いていたベルトに憧れ、南京都高校(現・京都廣学館高校)でボクシングを始める。専修大学卒業後、2006年プロデビュー。2010年に第65代日本バンタム級王座、2011年に第29代WBC世界バンタム級王座を獲得。「神の左」と称されるフィニッシュブローの左ストレートを武器に、日本歴代2位の世界王座12度の防衛を果たし、2018年に引退。現在、ボクシング解説者、アスリートタレントとして各種メディアで活躍。プロ戦績:31戦27勝(19KO)2敗2分。



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