福田正博 フットボール原論

■日本がラウンド32で敗れたW杯は、戦いが進むにつれて上位進出国の強さが目立っている。日本の戦いをあらためて振り返り、福田正博氏に今後の課題を挙げてもらった。

【ワールドカップ】サッカー日本代表で明らかになった課題を福田...の画像はこちら >>

【上位を目指すにはまだ圧倒的なハードルがある】

 史上初めて48カ国が参加し、全104試合で争われるワールドカップも、残すところ3位決定戦と決勝戦の2試合となった。

 今大会ベスト4に進出したのは、フランス、スペイン、イングランド、アルゼンチンの4カ国。モロッコやノルウェーの躍進があり、日本への期待も高い大会だったが、結局、W杯の優勝経験がある国が上位4枠を占めた。やはり新しい国が上位へ進出するには、圧倒的に高いハードルがあるのだろう。

 日本がW杯で優勝を狙える国になっていくには、単にサッカーの実力を高めるだけではなく、その国のサッカーを取り巻く環境を整えなければならない。あらためてそう感じさせられた大会だった。

 日本はオランダに2-2、チュニジアに4-0、スウェーデンに1-1の1勝2分けで2位となり、3大会連続でグループステージは突破となった。だが、またしても「決勝トーナメント1回戦の壁」を越えることはできなかった。ラウンド32でブラジルと対戦し、1-2で敗退。もっと試合を見たいと思わせてくれるチームだっただけに、日本の敗退は残念でならない。

【数的不利を突かれたブラジル戦】

 ブラジル戦は前半に先制点を奪ったものの、後半は防戦一方になった。試合後に戦術・戦略や選手交代などの采配面がクローズアップされたが、こうした論評は「後出しジャンケン」と同じだと思っている。

 ゲームの流れを変えようとする時、まずは選手たちで修正しなければならない。「監督からの指示待ち」では後手を踏むからだ。

そのための準備を、森保一監督はこの4年間でやってきたし、ピッチのなかの選手たちが主体になってチームを修正する力は備わっていた。

 監督が動くのは、選手たちが判断して対応しても流れが変わらない時だ。ただし、相手があっての話なので、たとえこちらが動いたとしても、相手も再び手を変えてくるわけだ。結局のところ、どこまで行っても「ピッチ」での判断に優るものはない。

 ブラジル戦でのヴィニシウス・ジュニオールや、オランダ戦でのコーディ・ガクポもそうだったが、世界屈指のアタッカーに対し、日本は2対1、もしくは3対1の数的優位をつくって止めに行ったが、裏返せばピッチのほかのところで、日本は数的不利になっていた。

 ブラジル戦前半は、右シャドーの伊東純也、右ウイングバック(WB)の堂安律、右センターバック(CB)の冨安健洋が連係しながら、ヴィニシウスを抑えた。だが、後半になるとヴィニシウスが外側にポジションを取ったことで、日本代表の守備陣が左右に開かされてしまった。

 そこを突かれたのが同点ゴールのシーンだった。

 個人的には、右CBに渡辺剛を投入し、ヴィニシウスを1対1で止められる可能性がもっとも高い冨安を右WBに移す手もあったのではないかと思った。そうすればもう少し厚みを持って守れたのではないか。

 ただ、冨安もヴィニシウスにドリブルで股抜きされるシーンがあったように、完璧に止められた保証はない。つまるところ、こうして外野が采配を振り返ったところで、それは「後出しジャンケン」にすぎないのだ。

【世界のトップを目指すうえで不足している部分】

 もちろん、選手個々はよくやっていた。堂安と中村敬斗はウイングバックとして本当に頑張っていた。彼らは単に「人を見る」守備をしていただけではない。逆サイドにボールがある時は中央のどこまで絞るか、オフサイドラインを意識したポジション取りなど、微調整の求められる動きを徹底していた。もともと攻撃に特長のある選手だけに、これは大変な仕事だったはずだ。

 ふたりに代わって後半途中からピッチに立った右WBの菅原由勢と左WBの鈴木淳之介は、持ち前の守備力で両サイドに安定感を取り戻していた。全選手が「一丸となって」という部分を体現していたし、日本にとっての最大の武器を発揮した。

 その結果が、1-2での逆転負けという現実なのだ。

 つまり、日本は「個人の力」では、攻撃にしろ、守備にしろ、まだまだ力不足だったということに尽きるのだと思う。

 三笘薫、南野拓実、遠藤航、久保建英、負傷の影響で満足な状態でなかった板倉滉も含めれば、主力として日本代表を牽引してきた選手を5人も欠きながらよく戦ったのは間違いない。だが、たとえ彼らがいたとしても、攻守両面において圧倒的な違いを生み出せるかと言えば、そうではなかっただろう。

 この4年間で日本選手たちは、一人ひとりが個の力を高めてきた。だが、それでもまだ足りない。

攻撃の選手なら自分ひとりの存在で数的優位をつくり出せる、突出した存在になることだ。ヴィニシウスはそのレベルにあるからこそ、日本は2~3人がかりで止めにいったわけだが、残念ながら日本にはまだそうした選手がいない。そこが世界トップを狙っていくうえで不足している部分だ。

【リードした時にうまく戦えるか】

 もうひとつの大きなテーマが、「リードしている時に前に出られない」という課題をどう克服していくかだ。

 1点リードし、相手が勢いよく前に出てきた時、それを押し返すには同じか、それ以上の勢いで前に出なければいけない。しかし、日本人はリスクを冒すこと、失敗することを嫌う傾向がある。それが小さい頃から染みついているせいか、リードすると守りの意識が強まって前に出られなくなってしまう。

 前回カタール大会では、スペインやドイツにリードを奪われ、前に出ざるを得ない状況になった時に同点に追いつき、追い越した。間違いなく力はついているのだ。昨年10月の親善試合のブラジル戦でも、2点リードされた状況から逆転勝ち。今大会でもオランダに2度もリードを奪われながらも、2度とも追いついた。つまり、前に出るしかない状況では、力を発揮できているのだ。

 あとは、例えば前線から積極的にボールを奪いにいくなど、リードした展開でもその力を発揮するための戦い方を確立し、メンタリティを高めていけるか。次のW杯に向けて日本が取り組む課題だ。

>>後編「サッカー日本代表次期監督はどうするべき?」につづく

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