10月17日に行なわれた箱根駅伝予選会では、首位通過の東洋大以外にも、本戦で上位進出をうかがうチームの充実ぶりが際立った。経験を積み、走力を高めた大東文化大、2年ぶりに箱根路へ戻る専修大、「スピードの東海」復活を期す東海大。

予選会で確かな手応えを得た3校は、正月の箱根でシード争いを揺さぶる存在となるか。それぞれの現在地と勝算を探る。

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【大東文化大の秘密兵器候補「山のシーサー」】

「(トップ通過を)狙っていましたよ」

 開口一番、大東文化大の真名子圭監督は、そう言った。

「学生にもそのプレッシャーをかけたし、初めて作戦なしで行ったんです。どうなろうが自分らでレースの状況を読んでいけって。練習もできていたので自信はあったんです」

 大東大は前評判が高かった。前回の箱根駅伝は19位だったものの、本戦を走った選手が6人残った。今季の全日本大学駅伝の関東地区選考会は3位で通過し、そこを走った8人全員が箱根予選会にも出走した。主力が充実しており、順当に走ればトップ通過を争うだろうという声が多かった。加えて真名子監督は、前回の結果を受け、今季は取り組みを少し変えていた。

「昨年はチームビルディングがうまくできなかったので、今季はそれを4年生中心にやっていきなさいと伝えました。トレーニングは、今まではジョグを短くしてポイント練習に合わせていたんですけど、今季はジョグを増やしました。ケガしそうで危ないなと思ったらジョグを増やしているので、ポイント練習は1、2回抜いてもいい。

これでケガなく継続的に練習ができるようになり、力がついてきました」

 それが功を奏したようで、順位こそ7位だったが10名中9名が1時間02~03分台で走り、8名が100位以内に入った。チーム全体の走力が上がっていることを、結果で示した。

 エースの棟方一楽(4年)は、夏合宿終盤からチームの雰囲気が変わったという。

「夏合宿の後半、主力に故障者が出て、チームがかなりネガティブな雰囲気になったんです。その時、監督がポジティブにやっていこうと話をされて、僕もそうだなと思いました。ポジティブ思考に切り替え、その意識で引っ張ることでチームが前向きになりました」

 いい流れで予選会を迎え、順当に通過したが、7位という結果には誰も満足していない。実際、シード校10校を予選会組より上と単純に見なすと、大東大の前には計16校がいる。本戦で10位以内に入るには、そのうち少なくとも7校を上回らなければならない。だが、棟方は前向きにこう話した。

「(7校も越えていくのは)面白いですね(笑)。今回のチームは、ここ数年で一番強いと思っています。結果こそまだ出せていないんですけど、全日本(大学駅伝)、箱根で『大東、やっぱすごいわ』と思わせられるような結果を出すので、期待してもらえるとうれしいです」

 真名子監督も「勝算あり」という表情だ。

「今の駅伝は何が起こるかわからない。前回の箱根優勝校(青山学院大)が出雲(駅伝)で11位になり、(中央大に)あれだけトラックのスピードスターがいても、(早稲田大の)ルーキーに負けたりする。それに箱根の本戦の10位から20位までは、紙一重だと思うんです。その紙一重を見逃さないように、自分たちの持ち味を出せればシードを獲るチャンスは十分にあると思います」

 近年の大東大は、箱根の山が鬼門となっているが、その対策にも抜かりはない。前回5区を走った上田翔大(2年)に加え、近江亮(1年)、杉本拓海(1年)らが山の区間への起用を競うことになるという。

「杉本は面白い。うちの大学の近所の急勾配の坂を平地の走りでスーッと上がっていくんです。夏には月間1000㎞走り、沖縄育ちで山はないのに上りが強い。杉本には『山のシーサーになれ』と言っています(笑)」

 順位には満足していないものの、真名子監督の言葉からは、本戦に向けた大きな自信がうかがえた。

【箱根4区で兄弟対決の実現を目指す専修大】

 2年ぶりに箱根路へ戻ってきたのが専修大だ。予選会では、5㎞、10㎞、15㎞、18㎞の各地点で、各校上位10人の合計タイムによる暫定順位が発表される。専修大は15㎞地点までトップを維持した。

「10㎞時点では確信できず、まだ不安だったんですけど、15㎞を超えてうしろとの差が結構あったので、(予選通過は)いけるかなって思いました。

ただ、後半に伸びてこなかったので、1位通過は難しいかなと。やっぱり東洋さんは強かったですね」

 長谷川淳監督は、少し悔しそうな表情でそう言った。専修大は、前々回の箱根で総合17位。前回の予選会では13位となり、本戦出場を逃した。今季こそはという気持ちでスタートしたが、全日本大学駅伝の関東地区選考会では、7位通過の山梨学院大に0秒65秒及ばず8位に終わり、伊勢路への切符を逃した。

「全日本の結果はネガティブではなかったです。むしろ、あそこで惜しい結果だったことで、選手は戦えるんだという気持ちになりました。そこで生まれた自信が、今回の箱根の予選会で表れたんじゃないかなと思います」

 今回の予選会で、専大は全員がまとまって走る従来の集団走をあらためた。フリーの選手と準フリーのグループに分け、多段式ロケットのように、レース途中から選手を順次フリーにしていく作戦を採った。その準フリーのグループを引っ張ったのが、具志堅一斗(4年)だった。

「具志堅は箱根経験者で、うしろには予選会、本戦を経験している選手もいたので落ち着いて引っ張ってくれるかなと。力もありますので、後半(にペースを上げて)、前の選手と一緒になってくれればなという期待もあったので、具志堅にまかせました」

 その結果、専大は1時間02分台が3人、1時間03分台が6人、チーム10番手も1時間04分03秒という安定した走りで、4位通過を果たした。

 平松龍青(4年)は「うれしい」と笑みを浮かべた。

「上級生が経験を生かしつつ、向田(泰誠・2年)、サミュエル(ガユ・1年)とかが頑張ってくれて、その後輩たちの勢いに乗って、みんな走れた。結果が出てよかったです」

 平松は、青学大の平松享祐(4年)と双子で、龍青が兄にあたる。箱根本戦では、兄弟対決が見られるかもしれない。

「僕は、箱根4区を走りたいと思います。前回、享祐が4区で区間3位と快走しましたし、4区を走って享祐と同じ景色を見て終わりたいと思っています。チームとしては、シード権を獲得したい。ただ、今回の予選会、僕はチーム5番手でしたし、試合まで僕も享祐も何が起こるかわからない。でも、4区で勝負というのが僕と享祐の一番の理想形だと思っているので、成し遂げるために、ここからの2カ月間を頑張っていきたいです」

 青学大の享祐は往路の主要区間をまかされる実力を持つ。そのレベルまで龍青が力を伸ばせば、専大はより強力な布陣を敷ける。幸い、龍青は冬に調子を上げるタイプだけに、兄弟が同じ4区を走る可能性は十分にある。

 長谷川監督も「戦力が整ってきた」と自信を見せる。

「今は戦力に穴がなく、箱根を戦える下地はできていると思います。ただ、爆発的に上がってくる選手を増やさないと、シードを狙うところでは戦えないですね。そのキーになる選手が向田です。力がありますし、エース区間の候補です」

 エース区間への起用が期待される向田と、上山詩樹(4年)ら4年生が噛み合えば、専大は本戦でも上位をうかがえる存在になりそうだ。

【「スピードの東海」復活へ】

 東海大は、安定した走りで3位通過を果たした。チームは「4-4-4」のフォーメーションを組み、第1集団は永本脩(4年)、南坂柚汰(4年)、中野純平(3年)、平井璃空(3年)の4人、第2集団と第3集団も4人ずつで走った。西出仁明監督によると、タイム、順位ともにほぼ設定どおりだったという。

「各グループのタイム設定があるので、その流れで走るように話をしていました。5㎞の入りで第3グループがすごく遅く、そのペースにハマってしまうと上げたくても上げられなくなるので、ちょっと怖いなって思っていたのですが、最終的に頑張って、狙いどおりにゴールできたのでよかったと思います」

 第1集団で走った中野は「悔しいですね」と表情を曇らせた。永本、南坂ら普段から一緒に練習するメンバーとリラックスして走れたものの、チーム内2番手、全体12位という結果には不満が残った。

「攻めた走りができたと思うんですけど、チーム内トップを取れず、永本さんに負けたので90点ぐらいです。チームは、昨年に比べると力がついてきたと思います。

それは危機感が影響しているかなと思います。これまで予選会に出たことがない人が今回出たんですけど、そういう人に主力になっていこうという気持ちが芽生えて、積極的に走れるようになりました。そういう気持ちの面がすごく大きく、一番変わったところです」

 西出監督は今季、ウエイトトレーニングを積極的に取り入れ、乳酸値などのデータを活用して練習の消化率を高めるなど、「スピードの東海」の復活に向けた取り組みを進めてきた。

「ウエイトはトレーニングラボの牧野(講平)さんにいろんなことを教わって、学生はスピードが出せるようになったと実感しています。乳酸の数値を測っているのは、これまでよかれと思ってやったことが、ダメージが強すぎて故障につながり、練習ができなくなっていたからです。そこで乳酸値をコントロールすることで、無理せず継続して練習ができるようになりました。それでパフォーマンスが上がりましたね」

 こうした丁寧な積み重ねが、全日本大学駅伝の関東地区選考会2位、箱根予選会3位という結果に結びついたと言えよう。現状、東海大のチームとしての完成度は、どの程度なのだろうか。

「今回3番以内に入りたいと思っていて、しっかりと3番に入れた。今のところ自分たちがこれぐらいできたらいいなっていうレベルではやれているので、70%、80%ぐらいの完成度があると思います。箱根ではシード権を獲得して、来年の春から1500mや5000mで勝負できる、『スピードの東海』をもう1回つくりたいと思っています」

 今季の東海大は、力のある4年生を中心に、3年生も主力としてチームを支えている。さらに上級生以外にも松山唯人(2年)、松山優太(2年)、鷲野遥都(2年)が力をつけ、選手層も厚くなってきた。必要な取り組みを着実に結果へつなげてきた東海大だけに、さらなる上積みがあれば、シード権獲得も現実的な目標として見えてくる。

(了)

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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