全日本大学駅伝で7位に入り、シード権を獲得した大東文化大。箱根駅伝予選会からわずか2週間という短い調整期間ながら、3区・上田翔大(2年)の区間2位の快走や、アンカー・松浦輝仁(3年)の攻めの走りがチームに自信をもたらした。

前回19位に終わった箱根駅伝で8位以内を目指す真名子圭監督と主将の棟方一楽(4年)が、全日本で得た収穫を語る。

【大学駅伝】「競り合いすらさせてもらえなかった」チームが全日...の画像はこちら >>

【箱根予選会の疲労は思ったほどなかった】

 全日本大学駅伝では、早稲田大が大会新記録で優勝し、今季2冠を達成した。そして、8校が次回大会のシード権を獲得した。

 そのなかでも、箱根駅伝での走りに期待が高まるチームがある。大東文化大である。

 大東大は箱根駅伝予選会を7位で通過し、全日本に臨んだ。箱根予選会を経て全日本に出場したチームは6校。予選会1位の東洋大が関東勢で最下位の15位に沈むなか、大東大は7位でシード権を獲得した。事前には、箱根駅伝の強豪校に加え、帝京大、順天堂大、日本大などが上位に入るとされ、大東大には厳しいレースになると見られていた。だが、その予想を覆し、存在感を示した。

 見せ場は8区の終盤だった。8位で襷を受けたアンカーの松浦輝仁(3年)が積極果敢に攻め、最後の直線では中央大、駒澤大と競り合った。真名子圭監督は「まつうらー!」と声を震わせて応援したという。

松浦は区間5位の走りで、チームを総合7位に導いた。レース後は、仲間たちから称賛され、真名子監督にも「よくやった」と肩を叩かれた。

「ここ2年間、悔しい思いをしてきた学生、特に今の4年生ですが、彼らを中心にシード権を獲ろうという思いがどこのチームよりも強かったですし、駅伝らしい駅伝ができたので、学生たちは楽しかったんじゃないかなと思います。シード権だけではなく、上位入賞を目指していける手応えを松浦がチームに感じさせてくれたのもよかったですね」

 真名子監督はうれしそうに振り返った。

 箱根予選会から全日本までは、わずか2週間。不安視されたのは調整期間の短さだった。予選会組は、時間をかけて調整したうえで、ハーフマラソンを全力で走っている。疲労の影響が懸念されるなか、予選会を経たチームの多くが今回、苦戦した。

「実は、予選会の疲労が思ったほどなかったんです。学生たちは『なんか力を発揮しそこねた』と言っていたんです。そのせいか、全日本に向けての練習もわりとすんなり入っていけましたし、全員ですごくいい練習ができました。ほぼ完ぺきに練習ができたので、誰を使おうか迷ったぐらいです。

最初は、若林(司・1年)を使おうと思ったのですが、箱根本番で走れるかどうかを確認したかったエヴァンス・キプロップ(3年)を起用しました」

【下級生が序盤の流れをつくった】

 全日本の出走メンバーには、箱根予選会を走った12名のうち7名が名を連ねた。1区の近江亮(1年)は、箱根予選会では個人128位だった。箱根駅伝での起用も見据えて1区をまかせた近江について、真名子監督はこう説明する。

「近江は大舞台に強い選手。1区の選手が持ち合わせているラストスパートのスピードはないんですけど、勝負強いんです。先頭と10秒以内で来てくれるだろうという安心感があったので使いました」

 近江は区間9位で、トップの青山学院大から9秒差と、期待された役割を果たした。1区でいい流れをつくり、大東大は自分たちのペースでレースを進めた。こうした走りが7位につながった。では、真名子監督が選ぶ今回のMVPは誰なのだろうか。

「3区(区間2位)の上田(翔大・2年)ですね。非常によかったです。ただ、区間賞を獲った(早大の)新妻(遼己・1年)君が上田の高校(西脇工業)の後輩なんですけど、彼に1分近くやられているのがどうかなと思いましたけどね(苦笑)。最初は補欠にしていたけど、何かあればどこの区間でも行けると思っていましたし、何もなければ3区に入れようと決めていて、本当によく走ってくれました」

 主将の棟方一楽(4年)も、上田の走りがチームにもたらした影響の大きさを強調する。

「区間2位で3区を走ってくれて、そこからいい流れをさらに加速させてくれた。その流れが4区、そして5区の自分へとつながったので、上田の走りは本当にチームとしてすごく大きかったですし、今回のシード権を引き寄せたと思います」

 棟方自身は5区をまかされた。今回の全日本では、距離の長い7区、8区に加え、2区、5区にも主力を配置する大学が目立った。5区には、鈴木琉胤(早大・2年)、三宅悠斗(中大・2年)、山本悠(順大・3年)、小河原陽琉(青学大・3年)ら、各チームの有力選手が顔を揃えた。

「自分が5区に割り当てられたのは、そういう選手たちと戦うためかなと思っていました。このコースを走るのは一昨年以来2回目なので、コースは理解していますし、最初はアップダウンがありますが、そこを越えると比較的平坦なので後半上げていけるかなと思っていました。ただ、実際には区間7位で、上のレベルの選手たちにはまだ及んでいないので、箱根までの間、しっかり練習して勝てるように準備していきたいです」

【箱根8位以内へは山の攻略がカギに】

 箱根で戦える陣容は揃っている。棟方に加え、次期エース候補の大濱逞真(3年)もいる。大濱は仙台育英高の先輩、吉居大和(中大→トヨタ自動車)を超えることを目指している。今回1区を走った近江、箱根予選会58位の藤原幹大(4年)、同45位で前回の箱根4区6位の松浦、同62位で前回の箱根3区20位の菅﨑大翔(2年)らが軸になる。さらに、全日本の当日変更でメンバーから外れた中澤真大(3年)、補員の鈴木要(2年)、今回起用が検討された若林らが控える。

 課題となる山上りでは、前回5区を走った上田が「リベンジ」を掲げるほか、近江も候補となる。

真名子監督が春先から「山のシーサーになれ」と言い続けてきた、沖縄出身の杉本拓海(1年)も名乗りを上げている。山下りにも期待できる選手がおり、11月中には候補者の適性を見極め、起用する選手を決めていくという。

 昨季の悔しさを晴らすべく、次の箱根ではシード権獲得、さらには上位進出を狙う。全日本での戦いは、その目標に向けた大きな糧になった。真名子監督はこう振り返る。

「今まで、うちは駅伝で戦う展開がなかったんです。今回、シード圏内に入ったり、圏外に出されたり、順位が目まぐるしく変わり、テレビに映る範囲で駅伝ができたのは楽しかったですし、いい経験になりました。最後に松浦が競り合いをしましたが、うちは今までその競り合いすらさせてもらえていなかったので、間違いなく自分たちは前進しているなと思います」

 棟方も、競り合いの経験が自信につながったと話す。

「こういう経験を今までできていなかった。今日、それができて結果にも結びついたことは、自信になります。チームの雰囲気もすごくよかったので、箱根に向けていい流れでいけるのかなと。箱根は8位以内を目標にしていて、そのためには、それぞれの頑張りが大事ですが、自分としては区間賞ですね(笑)。

区間賞じゃなくても3位以内でいければ、チームとして8位以内も目指せると思っています」

 今回の全日本では、帝京大、順大、日大に加え、東洋大、神奈川大、中央学院大など、箱根でシード権を争うライバルたちに先着した。それだけに、今後は他校からマークされる立場になる。そう水を向けると、真名子監督は苦笑いを浮かべた。

「いや、どうですかね。あまり追われる感じはないですけど。でも、上りと下りがハマれば、シード権争いでも9番、10番というところではなく、6番ぐらいまで狙えるチームだと思うんです。箱根が全日本のように高速レースになると怖いですが、なんとか上位にくらいついていきたいですね」

 大東大が最後に箱根のシード権を獲得したのは、2024年の第100回大会。8位以内に入れば、2009年の第85回大会(4位)以来となる。全日本でつかんだ手応えを力に変え、再び箱根の上位へ挑む。

佐藤俊●取材・文 text by Shun Sato

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