この記事をまとめると
■1960年代に大衆車パブリカのエンジンを流用して製作されたスポーツカーがトヨタS800だった■45馬力のエンジンで軽量化と空力を武器に最高速度155km/hを達成した
■軽量・小型を原点に流麗な姿を加えた日本の誇るライトウェイトスポーツカーとなっている
大衆車のエンジンでスポーツカーを成立させたトヨタの技術力
トヨタ・スポーツ800とホンダS800は、1960年代半ばの小型スポーツカーとしてよき競合であった。国内レースにおいても、雌雄を決するような場面があった。
しかし、その成り立ちは対照的だ。
したがって、ホンダS800のエンジンは、自然吸気で70馬力を出していた。自然吸気エンジンでは、1リッター当たり100馬力というのが高性能のひとつの指標であり、50年以上も前のホンダS800のエンジンは、排気量800ccあたり70馬力に達していたのである。
これに対し、スポーツ800のエンジンは、ほぼ同じ排気量でありながら45馬力だった。ホンダS800の3分の2ほどの出力でしかない。

トヨタにエンジン技術がなかったわけではなく、大衆車として経済性を重視したパブリカのエンジンを活用してつくられたスポーツカーであったからだ。
軽量化と空力でライバルに挑んだ偉大なライトウエイトスポーツカー
では、そのエンジンで、いかにしてスポーツカーとしての醍醐味を味わわせるかにトヨタの真骨頂がある。それは軽量化と空力にあった。スポーツ800の車両重量は、わずか580kgであり、ホンダS800の755kgに比べ175kgも軽く仕上げられていた。これは、大人の体重を60kgと仮定したとして、3人分に近い重さに相当する。
また、スポーツ800の流麗な外観は、コンセプトカーとして試作されたときには航空機のキャノピーのようなガラス張りの造形であったとされるほど、空気抵抗の少ない姿を追求していた。

軽量化と空力の追求により、スポーツ800の最高速度は時速155kmであり、ホンダS800の時速160kmと比べ、時速5kmの差でしかない。直線路を走った最高速度でのこの僅差は、サーキットでのレースや、山間の屈曲路での操縦性などにおいて、十分に勝負のできる性能といえるのではないか。
クルマの究極の目標は、軽量・小型といわれる。そこに、優れた動力性能があればなおよい。スポーツ800は、軽量・小型の原点を追求し、加えて空気抵抗の少ない流麗な姿によって、日本の誇るライトウエイトスポーツカーとして欠かせない1台といえる。

さらにスポーツ800はのちに、ガスタービンエンジンを使うハイブリッド車の試作にも活用されるなど、多彩な歴史も記している。
